2015 Fiscal Year Annual Research Report
共生窒素固定系の環境適応システムの解明と環境傾度対応型ダイズ栽培技術への応用
Project/Area Number |
26310313
|
Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
佐伯 雄一 宮崎大学, 農学部, 教授 (50295200)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鮫島 玲子 静岡大学, 農学部, 准教授 (00377722)
城 惣吉 島根大学, 生物資源科学部, 助教 (20721898)
|
Project Period (FY) |
2014-07-18 – 2018-03-31
|
Keywords | ダイズ根粒菌 / 群集構造 / 湛水 / 脱窒 / 塩類集積 / 環境傾度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、湛水や塩類集積など様々な土壌環境傾度による根粒菌の群集構造形成のメカニズムを明らかにすることを目的にしている。ダイズは強い塩耐性を持たないが、根粒菌はダイズに比べ塩耐性を示すことが分かっている。また根粒菌を接種することでダイズの耐塩性が上昇することも知られており、根粒菌の種によって塩分に対する感受性は異なっている。根粒菌の中でも、Sinorhizobium frediiは、塩類化しやすい乾燥地で優占していることが報告されている。本年度の研究では、塩類集積土壌における根粒菌生態を検証するための研究を行った。はじめに、NaCl濃度とpHを変化させた平板培地上におけるBradyrhizobium japonicum USDA6, USDA123, USDA110, B. elkanii USDA76, S. fredii USDA205 株のコロニーサイズを経時的に測定し、根粒菌の塩耐性を評価した。次に、B. japonicum USDA6, USDA110, B. elkanii USDA31, S. fredii USDA205の4菌株をダイズに混合接種し、塩ストレス環境下における感染根粒菌の群集構造を16S-23S rRNA ITS領域のPCR-RFLP 法を用いて解析した。根粒菌株の塩耐性試験において、菌株の耐性は、微酸性条件でB. elkanii >S. fredii > B. japonicum、塩基性条件でS. fredii >B. elkanii >B. japonicumとなった。ポット栽培試験において、塩ストレスフリーのポットでは、USDA110が優占し、塩ストレス条件では、USDA31 が優占した。本栽培条件では、S. fredii USDA205 の感染は認められなかった。これらの結果から、USDA205は高塩濃度・塩基性環境下において、高い塩耐性を示すが、宿主ダイズへの感染課程において優位になることはないと考察された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
土壌の塩類集積条件におけるダイズ根粒菌群集構造の変化を解析した。代表的なダイズ根粒菌の塩耐性能の評価、根粒菌株を混和したマイクロコズム土壌の調製から、塩類集積条件による長期培養およびDGGEとRFLP解析による群集構造解析まで行った。塩類集積マイクロコズム土壌における根粒菌群集構造解析は本年度から取り組んだテーマであるが、塩類集積環境における根粒菌生態の一定の特性を捉えることが出来た。また、ダイズの塩耐性能と感染根粒菌群集構造の評価も行い、こちらも塩類集積に伴う群集構造の変化を検出することができた。今後の研究を展開する上で極めて重要な結果が得られた。研究2年目の進捗状況として、おおむね順調に進展しているものと評価している。
|
Strategy for Future Research Activity |
土壌の湛水と塩類集積の環境ストレスに対するダイズ根粒菌の生態的特性を明らかにするために、環境傾度における根粒菌群集構造の変化をDGGEやリアルタイムPCRで評価するとともに、研究室レベルで得られた知見と栽培現場における現象を解析し、ダイズの生産性向上に資するため、ダイズ生産現場における土壌管理と感染根粒菌群集構造の評価も合わせて実施していく。
|
Causes of Carryover |
論文掲載費として確保していた予算が、2015年度内の支払いにならなかったため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年度5月に論文掲載費として支出した。
|
Research Products
(5 results)