2015 Fiscal Year Research-status Report
グラフ構造を高度に利用した高性能グラフアルゴリズム設計
Project/Area Number |
26330017
|
Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
宮野 英次 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 教授 (10284548)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | グラフ最適化問題 / グラフ構造 / 多項式時間アルゴリズム / 計算困難性 / 近似アルゴリズム / 近似困難性 / 直径限定部分グラフ探索問題 / 次数制約グラフ有向化問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,NP困難問題なグラフ最適化問題を対象として,以下の手法により高性能アルゴリズム設計法を構築することである.(I) グラフが持つ特徴や構造をパラメータで表現することにより部分集合の包含関係による階層を考える.パラメータの値により多項式時間で最適解を求めることができるグラフ部分集合とNP困難となるグラフ部分集合を分類する.(II) NP困難となるグラフ部分集合に対しては,最適解に対する近似精度を理論的に保証できるアルゴリズムを開発する.グラフ構造パラメータの値とその近似精度により,グラフ部分集合の分類を行う.今年度の主な研究成果は以下である. 1.次数制約の下での無向グラフの有向化問題は,各頂点の出次数がある上界値または下界値Wを満たすように各無向辺に向き付けを与える問題である.本研究課題では,出次数の値がある指定された値W以上または以下となる頂点の数を最大化または最小化する問題について検討を行った.Wをある値としたときに,本問題が有名なグラフ最大化問題である頂点被覆問題VC,独立頂点集合問題ISと等価な問題であること,すなわち,VCやISの一般化問題になっていることを示した.また,木,平面,外平面などのグラフ部分集合に入力を限定した場合の多項式時間アルゴリズムを設計した.さらには,本問題のNP困難性,近似精度を理論的に保証できるアルゴリズム,近似精度の下界を示した.国外論文誌で研究成果の公表を行った. 2.無向グラフが与えられたとき,直径がd以下であるような部分グラフ探索問題に対して,近似精度の意味で最適な近似アルゴリズムを設計した.また,入力グラフに含まれる誘導閉路の長さが限定されている場合には,多項式時間アルゴリズムが設計できることを示した.国際会議,国内学会において研究成果の公表を行った.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の実施計画は以下であった.(1) 参考研究や類似研究の結果の調査,グラフ構造を表現するパラメータの調査,アルゴリズム設計法と近似精度証明の数学的手法の調査,現実世界に表れる離散最適化問題の抽出を行う.(2) (1)で得られた離散最適化問題をグラフ最適化問題として定式化する.(3) パラメータ値に従って,部分集合の包含関係による階層を定義し,多項式時間計算可能なグラフ部分集合とNP困難なグラフ部分集合の分類を行う.(4) NP困難なグラフ部分集合に対する近似アルゴリズム設計と近似可能性の限界証明を行う.本年度の目標は,初年度にグラフ最適化問題として定式化ができている問題について,従来研究の結果の調査,アルゴリズム設計の検討を行うこと,また,国内研究会や学会総合大会などで随時公表を行うことで,他研究機関の研究者からのフィードバックを得ながら手法の再検討や計画の修正を行っていくことであった. 本年度は,次数を制約としたグラフ有向化問題,直径限定部分グラフ探索問題に関しては,国際会議や国外論文誌で研究成果の公表を行うことができた.それ以外にも,誘導閉路探索問題に対する計算複雑さ,弦グラフおよびスプリットグラフなどの部分グラフクラスにおける支配閉路問題の計算複雑さ,最小ブロック転送問題に対する近似アルゴリズム,次数限定グラフに対する距離dの独立頂点集合問題の計算困難性・近似可能性・近似不可能性などの検討も行うことが出来ている.これまでに得られた研究成果については,国内学会,国内研究会で随時公表を行い,他研究機関の研究者からのフィードバックを得ながら再検討を行うこともできた.このように,当初の計画はおおむね順調に進展している.
|
Strategy for Future Research Activity |
これまで順調に進んできており,これまでと同様の手法と手順で研究目標の達成を目指す.多項式時間で計算可能なグラフ部分集合とNP困難なグラフ部分集合の分類は,徐々に正確さを高めていくしかないと思われる.また,近似精度によるグラフ集合の分類についても近似アルゴリズムの改良と近似限界の証明方法の改良を繰り返しながら進めていくことになる.今後も,米国における国際会議STOC,FOCS,SODA,欧州における国際会議ICALPやESA,アジア地域における国際会議ISAAC等を中心に結果と手法の調査を行う.また,arXive.org プレプリントサーバー,CiteSeerデータベース,DBLPデータベースScienceDirect が提供するオンライン電子ジャーナルを利用する. 直径限定部分グラフ探索問題については,近似アルゴリズムの速度を含めて検討を行い,多項式時間アルゴリズムが設計可能な部分グラフ集合の構造を明らかにする.支配閉路問題については,弦グラフおよびスプリットグラフについては困難性が分かっているが,それ以外のグラフクラスについての検討を行う.現時点では,次数正則なグラフ,木幅パラメータが定数となるグラフに対する計算複雑さとアルゴリズム設計の両面について検討を行うことを予定している. 最終年度も情報処理学会アルゴリズム研究会,電子情報通信学会コンピュテーション研究会,LAシンポジウムなどの国内各種研究会に参加することにより,本研究課題の目標を達成するための有益な情報を得る予定である.できるだけ早い時期に得るように研究を進め,国際会議での発表を実現する.また,研究成果をまとめた論文は,計算機科学に関する国際ジャーナル誌へ投稿し,広く研究者の目にとまるように計画している.
|
Causes of Carryover |
平成27年度使用予定額の18.5万円程度を次年度に繰り越すことになった.理由は,平成27年度末に国際会議に参加して研究成果の公表を行うことを予定していたが,会議に参加できなくなったためである.平成28年度に繰り越して,平成28年6月開催の国際会議において研究成果の公表を行う予定である.
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は,繰り越し分と含めて148.5万円程度の研究費の費用を予定している.その内訳は,設備備品費として15.5万円,消耗品費として5万円,国内旅費として25万円,外国旅費として80万円,人件費・謝金として8万円,その他として15万円である.設備備品費によりノートPCを購入予定である.PC用の消耗品の購入も計画している.国内旅費により北陸,関西,九州で開催される計算に関する研究会,学会への参加を予定している.国際会議での研究成果の公表を計画しているため外国旅費が必要となる.大学院生による研究補助,専門知識の提供のために80時間分の謝金,研究成果を国際論文誌に投稿するための論文投稿費用が必要となる.
|
Research Products
(18 results)