2014 Fiscal Year Research-status Report
錐相補性問題と半無限計画問題のアルゴリズム開発および交通計画への応用
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26330022
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
林 俊介 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (20444482)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 交通計画 / 最適化 / 情報基礎 / 均衡問題 / 国際情報交換(台湾) |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度に得られた成果として,まず『複数のボトルネックをもつ出発時刻選択問題』に対する数理モデル化と均衡解析が挙げられる.出発時刻選択問題とは交通計画における均衡問題の一つであり,各ユーザーが渋滞を避けるために出発時刻を選択することによって起こる均衡状態をモデル化したものである.このような問題において,交通ネットワーク上のボトルネックが1つしか存在しない場合は,これまで相補性問題や変分不等式問題を用いた数理モデル化がなされてきた.しかしながら,ボトルネックが複数存在するような問題に対しては,解析の複雑さゆえ,これまであまり研究がなされてこなかった.本研究で得られた成果は,国際会議 The 21st International Symposium on Transportation and Traffic Theory (ISTTT21)にフルペーパーとして投稿し,採録されるに至った.本国際会議は2015年8月に行われる予定だが,その後,論文誌に掲載されることが決まっている. また,平成26年度に得られた成果の2つめとして,日本オペレーションズリサーチ学会の機関誌における特集記事が挙げられる.本記事は,研究代表者が過去に作成した2次錐相補性問題ソルバーであるReSNAの用法・理論的背景などを書いたものであり,新しい研究成果というわけではないが,錐相補性問題の理論的背景を知らなくても容易に実装できるよう,専門外の方々にも分かりやすく書いたものである.実際,上記の出発時刻選択問題の計算機実装においても,ReSNAを用いた求解がなされている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず交通計画学に関する研究に関しては,上記の通り,新しい交通モデルの提案・解析を行う等,十分な進展が有ったといえる.また,錐相補性問題のアルゴリズム開発に関しては,ReSNAの特集記事のみならず,理論的な収束性をP0(関数の単調性よりも弱い性質)の仮定の下で証明し,それをプレプリントとしてoptimization online (Mathematical Optimization Societyが管理している最適化のアーカイブ集)にアップロードした.
一方,半無限計画問題に関するアルゴリズム開発は,現在αBB法の拡張研究に取り組んではいるが,まだ論文としてまとめずには至っていない.こちらに関しては,本年度中に論文としてまとめる予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
交通計画に関する応用研究としては,昨年度は一つ大きな進展が有ったが,これに留まらず,新たな未解決問題に対してもチャレンジして行きたい.たとえば,交通ネットワークとして単純な直列構造を持つものだけでなく,より複雑なグラフ構造をもつようなものに対しても,出発時刻選択問題のモデル拡張が考えられる.本研究では,交通がFIFO(First-In-First-Out)であることが想定されているので,一般的なグラフ構造を持つネットワークへの拡張は多くの困難が予想されるが,グラフが木構造をもつなど,より限定的な仮定をおくことにより,モデルの拡張ができるのではないかと期待できる. また,出発時刻選択問題では時刻を離散化したモデル化がなされているが,この時刻を本来の連続なものとして扱うモデルも考えられる.このとき,各ユーザーは半無限計画問題(双対形)を解くことにより時刻選択をするので,これまで培ってきた半無限計画問題のアルゴリズムおよび理論解析の手法が活用できることが期待できる.半無限計画問題に関する研究はこれまでと同様,国立成功大学(台湾)のSoon-Yi Wu教授と共同研究をすすめて行く予定である. 以上ように,より一般的かつ現実的な交通計画問題のモデル化と,それを解くためのアルゴリズム開発に関して,今後とも従事していきたい.
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Research Products
(9 results)