2017 Fiscal Year Research-status Report
錐相補性問題と半無限計画問題のアルゴリズム開発および交通計画への応用
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26330022
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
林 俊介 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (20444482)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 交通計画 / 最適化 / 情報基礎 / 均衡問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度に得られた結果として,(1) ツリー構造をもつ動的利用者配分問題に対する均衡状態の解析,および(2) 線形半無限計画問題に対する切除平面法の高速化の2点が挙げられる. (1)は,OsawaらのFalse bottleneck 検出法を多起点一終点のツリー構造をもつ道路ネットワークに対して拡張したものである.実際,本研究では,各居住地からの出発率と各ボトルネックへの到着率の関係を表すためにツリー構造を特徴づける行列を新たに構築し,ツリー型ネットワークにおける的利用者配分問題に対して,いくつかのボトルネックがFalse bottleneckとなるための条件を,理論と実験の両側面より検証した.具体的には,False bottleneck の検出に必要な正規化需要について,ツリー型にも適用できるよう自然な形での再定義を行い,それを用いることで,ツリー型におけるFalse bottleneckの検出を行うための十分条件を導出するに至った. (2)は,線形半無限計画問題に対する切除平面法において,厳密に解くことが前提となっている部分問題を非厳密に解くことにより,全体の高速化を達成したものである.既存の切除平面法では,部分問題の厳密最適解の情報を用いなければ,部分問題に新たに加える制約を選択することができなかったが,本研究におけるアプローチでは,部分問題に対してbeta-近似解なるものを定義し,ある種のエラーバウンド性の仮定の下で,厳密最適解の代わりにbeta-近似解の情報のみを用いても,理論的に正しく追加制約の選択ができることを示した.また,いくつかの例題において,既存の切除平面法よりも早く求解が可能であることを実験的にも示した. なお,これらの結果は,本年度中には英語に翻訳し,国際的なジャーナルに投稿することを目指している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は,モデル解析とアルゴリズム構築という2点で一定の進捗が得られた.前者においては,既存結果のツリー型ネットワークへの拡張が主たる進捗内容であるが,既存のコリドー型ネットワークの単純な拡張であるところもいくつかあった反面,それら既存モデルには無い(もしくはそれらでは説明できない)現象も確認できた.これらの結果は,実験的に示しただけでなく,数学的な証明という形で示したものもある.いくつかの数値実験では,コリドー型との違いについてより明確に確認ができた.また,後者のアルゴリズム構築という点においても,特に既存の切除平面法に対して高速化できたという点で望ましい進捗が得られたといえる.実際,理論的にも部分問題の近似解に対するエラーバウンド性を用いたという点で優れたアイディアを導入したと言えるが,数学的な収束証明が不十分なところもあるので,そこはより一層洗練された成果が望まれるところである.
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は,本課題の最終年度であるため,集大成となるような研究をしていきたい.まず目指して行きたい課題が「交通計画に現れる無限次元最適化問題の厳密解法」である.これまで,この手の問題は,無限次元変数を「有限緩和」することにより近似的に解くことが一般的であった.しかし,近似最適解の情報より,厳密最適解が区分線形関数となることが非常に多いことが経験的に分かっていた.そこで,最適解が区分線形であることを事前に仮定することにより,解くべき問題が,折れ線の位置と値のみを変数とした有限次元の最適化問題として記述可能であることが期待できる.よって,最適解の特殊性を活かした画期的な厳密解法が構築できるのではないかと期待しているところである.また,理論解析として,均衡解の一意性の解析(特に交通計画問題が一般的に有する構造と均衡解の一意性に対する包括的な議論)が長らく課題となっていたが,こちらについてもより明確な結論を得たいと考えている.
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Research Products
(4 results)