2015 Fiscal Year Research-status Report
多変量解析の現代的諸問題に対する推測理論の新たな展開に関する研究
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26330036
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
久保川 達也 東京大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (20195499)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 線形混合モデル / 小地域推定 / ベンチマーク問題 / 高次元解析 / 統計的決定理論 / スタイン問題 / 予測分布 / 変換モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では,多変量統計推測手法が直面する諸問題に対して数理統計の立場から新たな解決策を導出し,その有効性・最適性に関する理論の展開を行い,シミュレーション実験による数値的な比較及び現実のデータ解析での有用性を示すことを目的として実施した。 (A)線形混合モデル・一般化線形混合モデルを利用した小地域推定の新展開については,収入や支出など正の値をとるデータをFay-Herriotモデルという正規線形混合モデルに当てはめる問題を考察した。Box-Cox変換はよく知られているが変換母数の最尤推定量が一意性を持たないことが知られている。これに対して双対変換を用いると変換母数の一致推定量が存在することが示されるので,これを用いて経験最良線形不偏予測量とその平均2乗誤差の漸近不偏推定量の導出を行った。 (B)小地域推定におけるベンチマーク問題については,正の値をとるデータに対して乗法モデルを対応させているときのベンチマーク問題を取り上げ,特定の損失関数を用いると制約付きベイズ推定量が自然な形のベンチマーク推定量として得られることを示した。 (C)線形混合モデルにおける変数選択問題として,共変量が観測モデルと予測モデルで異なる場合を扱い,条件付きAICの導出を行い,その良さを数値的に調べた。(D)高次元多変量推測については,ファクターモデルを利用した共分散行列の推定量を提案し,高次元での性質を明らかにした。 (E)多次元母数の推測に関する最適性理論の展開については,共分散行列のJames-Stein推定量のミニマックス性について簡単な証明方法を確立することができた。また正規分布の行列平均の縮小推定量のミニマックス性について高次元と低次元を統一する条件の導出を行った。予測分布の予測問題においても新たな理論結果の導出を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
26年度・27年度の研究はほぼ計画通りの進捗状況であるが,課題よっては考えていたようには進んでいないものがある。 高次元の平均ベクトルの推定に関しては,リッジ型の共分散行列の推定量を用いた縮小推定量についてミニマックス性を証明する計画を立てた。数値的にはミニマックス性が示唆できるものの,高次元・低次元を通してリッジ型の推定量の部分の評価が困難になっている。特に高次元の場合にはランダム行列理論を用いて評価することが常套手段として知られているが,縮小推定の枠組みでの扱いが困難な状況にある。今後も引き続いて考察し何らかの打開策を検討していく。
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Strategy for Future Research Activity |
(A)線形混合モデル・一般化線形混合モデルを利用した小地域推定の新展開については,地域の分散に異質性がある場合の変量分散モデルの更なる考察を行い,変量効果の分布の検討や変換モデルにおける逆変換関数の予測問題などを研究する。また指数型分布族に変量効果を組み入れたモデルについて条件付き平均2乗誤差の性質を議論する。 (D)高次元多変量推測については,共分散行列の線形縮小推定量に関して重み関数をノンパラメトリックに推定する方法を考察する。この方向性のもとで平均ベクトルの線形縮小推定量や分散の線形縮小推定量についてもノンパラメトリック縮小法の新たな展開を図る。また共分散行列の逆行列の非線形な縮小推定量の導出についても考察する。 (E)多次元母数の推測に関する最適性理論の展開については,平均の情報を利用した共分散行列の推定に関して高次元と低次元を統一する理論結果の導出を図る。また最近話題のspike-slab priorに対する経験ベイズ推定量のミニマックス性についても検討する。
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Causes of Carryover |
これまで使用してきたパソコンやプリンターの買い換えを考えていたが,27年度内において故障等により新たに購入する必要がなかったので,物品費に余剰が出てしまった。また,数値計算を大学院生に依頼するために謝金を計上していたが,大学院生に謝金を払うことなく研究を進めることができ,この分の余剰が生まれた。このような理由から,次年度において研究遂行上必要な項目に助成金を有効に使用することを考えた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究を遂行する上で海外研究者との研究打ち合わせが重要になり,海外研究者の招聘もしくは海外出張にかかる支出に重点的に使用する。
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Research Products
(15 results)