Outline of Annual Research Achievements |
すべての個体の測定時点が揃っているバランス型の経時測定データの例としてPotthoff and Roy(1964)によって提示された歯科矯正データを考える. ここで, 女性をコントロール群として, 男性の効果, つまり, 男性の女性からの差分である性差に関心があるとしよう. このとき, 女性の成長曲線の特定には大きな関心はなく, 男性の成長曲線との差およびその有意性, あるいはその信頼区間には関心がある. このような状況は生存時間解析において広く利用されているコックスの比例ハザードモデルでも想定されており, ベースラインの生存曲線を特定することなく, 共変量の効果の統計的推測が行われている. 本概要では, Satoh and Tonda (2016)によって提案されたバランス型の経時測定データにおいてベースラインの成長曲線を特定することなく, 共変量の効果を推定する方法を紹介する. 今, 個体数をn=11+16=27, 測定時点数をp=4, Yをn×p観測値行列, ベースラインを少女のグループだけ(r=1)とし, U=1_nを成分が1の長さnのn×r行列, 測定時点ごとのベースラインのパラメータを1×pパラメータ行列Λ, 表1の2列目のデータ(k=1)で作るn×k行列をA, とすれば, ベースラインを持つ成長曲線モデルは, Y=UΛ+AΘX+Εとかける. ここで, 行列Xは性差に対して直線を仮定したデザインとする. 未知パラメータ行列はΛ, Θおよび測定時点間の共分散行列Σである. Σについては簡単のため既知とするが, 未知であっても推定方法が提案できる. ベースラインについては大きな関心がないため, Satoh and Tonda (2016)はΛを推定することなく性差に関するΘを推定する方法を開発した。
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