2014 Fiscal Year Research-status Report
リアルタイム制御システムのための適応的ログ収集エージェントの研究
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26330074
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Research Institution | Aichi Institute of Technology |
Principal Investigator |
中條 直也 愛知工業大学, 情報科学部, 教授 (30394498)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水野 忠則 愛知工業大学, 情報科学部, 教授 (80252162)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | リアルタイム / システム / 制御 / ソフトウェア / ログ / 障害診断 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究では,FTAに基づいて作成した正常時動作モデルからの逸脱の検出によるリアルタイムでの異常検出を行った.異常検出時は,異常と論理的な関係を持つ内部変数などについて適応的にログ情報を収集する.このためのログ収集エージェントはリアルタイム時間制約を守り本来の制御システムに影響を及ぼさないことを確認した. 実験評価用システムとして,実車の1/10サイズのROBOCARを使用したリアルタイム制御システムを開発した.このROBOCARは車載ECUで使用されるマイクロプロセッサを搭載する.制御OSとして今後の自動車業界での採用増加が見込まれるAUTOSAR OSを実装した.その上に自動走行の制御タスクを実装した. このシステムには制御タスクとは別にログタスクを開発して,ROBOCARのセンサーやアクチュエータの信号をリアルタイムで書き出せるようにした.FTAに基づいて障害診断を行うためのリアルタイムにデータ収集を行うタスクを実装した. このシステムの評価実験として,故障注入を行ってFTAの解析結果に基づく障害関連の適応的なログデータ収集をリアルタイムで行えることを確認した.収集すべきデータはソフトウェアの複数のモジュールにまたがっており,横断的にログ収集を行えている.実験では制御タスクの周期に対して十分小さいオーバーヘッドで故障に関連したログデータを収集することができた.これによって制御タスクに影響することなく故障を含むログデータを計測できることを確かめた. また,計測データによる正常モデルを統計的に作成する手法について検討を行った.しかしながら,車載リアルタイム制御に使われる信号データでは信号毎に特性が異なり,単純な離散確率分布のあてはめでは不十分なことが判明した.信号をいくつかのカテゴリーに分類しモデルの作成方法を用意することが必要であることが分かった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
評価用の実験システムが開発できている.これは車載制御で実際に使用されているマイクロプロセッサを搭載し,次世代の車載制御用OSであるAUTOSARを実装している.その上に試験的な自動走行を動作させることができた.実車の1/10のサイズであるが,本格的な車載制御システムの評価として幅広く利用でき,今後の研究計画における実験評価に利用できるシステムである.この実験システムを使用することで,実車では安全上の制約のため難しい自動ブレーキのようなシステムを評価することができる.また内部の制御データを必要に応じて無線LAN経由で外部のモバイル端末に取り出して記録することが可能であり,長時間のログデータ記録ができる. また,本年度の研究では,FTAに基づいて障害診断を行うためのリアルタイムにデータ収集を行うタスクを開発できた.実験で故障注入を行って障害発生時に関連ログデータのリアルタイム計測ができるかどうか確認した.これによって制御タスクに影響することなく故障を含むログデータを計測できることを確かめた. 一方,計測データから正常モデルを統計的に作成する手法に関して,車載制御信号では単純な離散確率分布を仮定することが難しいデータがあることが分かった.実際の車載データを計測して,信号カテゴリーごとに適切なモデル作成をする必要が重要であることが分かった.これについては実際の車載システムを計測してデータを収集する必要がある.
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Strategy for Future Research Activity |
大規模なソフトウエアモジュール間の制御データの不具合によって引き起こされるハザードを診断するSTAMP/STPAの考え方を取り入れられないか検討する.ログデータのリアルタイム計測の対象として,STAMP/STPAの4つのガイドワードをもとにしてハザードに至る制御データをリストアップする.これらの事象をリアルタイムで監視することを検討し,FTAに基づく手法に比べ利点があるか比較する. また,FTAに基づく適応的なログ収集の手法を改良する.複数の異常が同時に発生する場合,関連データ量が増加しログ収集タスクの時間増大が懸念される.その際の優先順位を検討し,リアルタイム制御における制御サイクルの周期内で実行するためのログ収集アルゴリズムを改良する.複数の制御サイクルに分けてデータ収集を行えるような方法も検討する.また,論理信号や接続されたバス上のデータの書き換えなどの異常を想定して,異常検知とそれに基づく適応型のログ収集のシミュレーション実験を実施する.これらを通して,優先順位の決定やログ収集アルゴリズムを評価・改良する.収集エージェントの処理負荷が過大となることが判明し計画どおりにいかない場合には,補助的なハードウェア付加による処理の高速化などを検討する予定である. 前年度の結果から,計測データから正常モデルを統計的に作成するためには,実際の車載システムの計測データが必要であることが分かった.このため,実車に搭載できるデータ計測装置を導入し実際の車輛データを計測する.対象として複数ECUの連携によって機能が実現されるクルーズコントロールシステムを検討する.関連した先行車輛との距離データや,車間距離維持のための加速,減速についてのデータを計測する.これらの計測した制御データについて統計モデルの作成を行うことを検討する.
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Causes of Carryover |
計画していた国際会議への参加を取りやめたためである.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度の国際会議への旅費として使用する計画である.
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