2014 Fiscal Year Research-status Report
階層構造とアクセス方式を同時に改善するメモリシステムの研究
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26330075
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
佐藤 寿倫 福岡大学, 工学部, 教授 (00322298)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 計算機アーキテクチャ / 新世代メモリ / 低電力メモリ / 高信頼メモリ |
Outline of Annual Research Achievements |
コンピュータに要求される性能は依然として上昇しているが,幸いなことに,それに応えることが可能なプロセッサ性能向上も達成されている.しかしシステム全体を眺めると,十分な性能を提供できているとは言い難い.メモリが足枷となっている.加えて,メモリはエネルギー消費量が大きい点でも問題である.すなわちメモリこそが,マイクロチップからスーパーコンピュータまでのあらゆるコンピュータを運用する際に解決すべき課題を提示している.このような問題意識から,先端記憶デバイスを利用する記憶階層の再構築に関する研究を実施する. 申請時には”新世代デバイスへの置き換えによる階層や容量の最適化だけでは大幅な性能改善は不可能”と思われていたが,新たなデバイスの登場等があり,課題を解決できる兆しが得られている.3階層のキャッシュメモリを持つプロセッサで評価したところ,3次キャッシュのみで,あるいは2次キャッシュと3次キャッシュで新デバイスを採用すると,それぞれ約10%のエネルギー利用効率改善を達成できることが確認出来ている.エネルギー利用効率の評価にはエネルギー遅延積(Energy-Delay-Product)を採用している.従来のデバイスでは電力消費量に改善を見ることは出来なかったので,優位な進展と言える. この成果は,2015年電子情報通信学会総合大会で発表済みである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本提案の目的は,新世代メモリを採用して高性能で低電力なメモリを実現することである.メモリの階層構造とアクセス方式とを同時に改善することにより,この目的を達成する.研究期間内には方式検討とその評価に注力し,計算機シミュレーションにより提案方式が目的を達成できることを実証する.初年度の目標はシミュレーション環境の構築と初期評価であった. 分担者の院生の役割は情報収集,シミュレーションの実施,そして実験結果の整理であった.所属機関で提供されるディジタルライブラリを利用し,最先端の研究成果が報告される国際会議の会議録を対象として情報収集と文献調査を実施した.申請時には公知でなかった新デバイスについての知見を得られるなど,概ね順調に進展している. 代表者の役割はシミュレーション環境のブラッシュアップと課題を解決できる方式の考案であった.ここで研究の進展にやや遅れが認められる.申請時に予想していなかった校務が増大したため本課題のエフォートを40%から30%に下げざるを得なかった.このため,計画では代表者が担当する予定だったシミュレーション環境の構築を院生に任せざるを得ず,その立ち上げに時間を要した.漸くシミュレーションを開始出来るようになった段階であり,計画していた「大量」のシミュレーションは実施出来ていない.また,メモリの階層構造とアクセス方式を同時に改善することを評価可能なシミュレーション環境までには未だ至っておらず,階層構造の評価のみが出来る状況である.しかしながら現状の環境でも上述した成果が得られており,著しく遅れているとは言えない.
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Strategy for Future Research Activity |
上述したように,研究の進展にはやや遅れが認められる.加えて,申請時に分担者として加わることを予定していた学生が大学院入試に失敗し,研究体制が代表者1名となっている.更に遅れの原因である校務は2015年度に一層増しており,本課題のエフォートを30%から20%に下げざるを得ない. 研究リソース不足を解消するため,研究分担者を1名追加する.分担をお願いする請園智玲はこれまで,キャッシュなどのメモリシステムに関するプロセッサ・アーキテクチャに関する研究,組み込み向け仮想化をハードウエアで実現する研究,そして不揮発性メモリを備えるメモリ階層をハイパフォーマンス・コンピューティング環境で扱うためのプログラム最適化ツールに関する研究に取り組み,本課題と極めて近い研究分野で活躍しており分担者として適任である.これまでの研究経験を生かして,主に実験を担当する. 研究体制を立て直し,遅れているシミュレーション環境の構築を速やかに終え,計画していた「方式の考案と実装→シミュレーション実験→考察と方式の改良」を繰り返す.院生が担当することになっていた情報収集と文献調査については,代表者と新分担者とで継続する.
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Causes of Carryover |
代表者の校務が増し本課題のエフォートが40%から30%へ小さくなったため,計画していた情報収集のための旅費が大きく減ったため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究の進捗を計画通りに戻せば,自然と成果発表のために旅費が支出できる.
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