聴覚記憶における聴覚運動連関の役割に関する比較認知研究

2014 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 26330176
• Research Institution: Musashino University
• Principal Investigator: 泉 明宏 武蔵野大学, 人間科学部, 准教授 (20346068)
• Project Period (FY): 2014-04-01 – 2018-03-31
• Keywords: 聴覚 / 記憶

Outline of Annual Research Achievements

ヒトと比べてサルの聴覚記憶は非常に脆弱である。このことから、言語の成立に関連して、ヒトの聴覚記憶が進化的に特殊化したことが考えられる。ヒトの音声知覚には調音動作の表象が関与しているが、このような聴覚―運動連関は聴覚記憶においても重要な役割を果たしていると考えられる。本研究では、聴覚記憶における運動表象の役割について明らかにし、その進化的基盤について理解を深めたい。
平成２６年度は、音系列の記憶課題（音系列再認課題）をおこなうための装置・実験プログラム・刺激の準備をおこなった。課題においては、見本刺激として様々な構成音より成る５音系列をヘッドホンから提示し、被験者にはそれを提示順を含めて記憶することを要求した。遅延時間１秒の後に提示される比較刺激が見本刺激と異なる場合に反応することが正反応であった。
構成音は一般的に知られた楽器の音と（順行再生音）、それらを時間的に逆転して再生したものであった（逆行再生音）。順行再生音については、被験者は象徴的表象として記憶することが容易であるが、逆行再生音については困難であると考えた。予備実験の結果、構成音の種類（順行・逆行）に関わらず、最初の構成音の記憶成績が良い傾向がみられ（初頭効果）、リハーサルの効果が示唆された。
構成音の種類の効果がみられなかったことは、用いた逆行再生音が象徴的表象として記憶可能であったからかもしれない。特定の象徴と結びつかない、人工的な音の使用を検討したい。今後、音系列再認課題と同時に妨害課題をおこない、リハーサルを妨げることが記憶成績に与える影響について検討する必要がある。また、遅延時間の効果、刺激セットの大きさの効果について検討することを通して、記憶方略について明らかにする予定である。

Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

初年度である平成２６年度は、装置の準備や・実験プログラムおよび刺激の作成をおこなった。装置の準備については完了したが、本実験で用いる刺激セットやパラメーターについて未定の部分があり、さらなる予備実験が必要である。

Strategy for Future Research Activity

予備実験を通して、刺激呈示に関するパラメーターを決定した後、データの収集をおこなう。音系列再認課題における構成音の種類の効果をみるために、ヒトの発声や人工音を用いて実験をおこなう。また、刺激の感情的側面が記憶に与える影響について検討するため、課題遂行中に心拍変動等の生理指標を計測するための装置を用意する。

Causes of Carryover

実験補助者への謝金を計上していたが、準備状況により想定よりも実験が進捗しなかったために不要であった。

Expenditure Plan for Carryover Budget

生理指標（心拍変動）計測のための消耗品が必要となったため、物品費が増加する見込みである。