2015 Fiscal Year Research-status Report
複数観測情報の統合に基づく人物行動計測とグループ行動の理解
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26330186
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
小林 貴訓 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (20466692)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 人物行動計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では,ヒューマンロボットインタラクションなどへの応用を想定し,レーザ測域センサと全方位カメラを取付けたポールを観測領域中にいくつか置くだけで,複数人の実時間追跡を行い,人物の移動軌跡の計測や,行動パターンの学習や識別を行う手法を開発する. 本年度は,岡山県の大原美術館のご厚意により,実際の美術館で人物行動の計測を行う機会が得られた.そこで,これまでに開発した人物追跡手法を適用し,データの記録と解析に取り組んだ.大原美術館の1室にセンサを取り付けたポールを設置し,2015年8月28日に訪れた来場者のデータを記録した.記録したデータの解析においては,まず,前年度までに開発した人物追跡手法を適用したところ,実際の美術館のように比較的混雑した環境では複数の人物が近接し,さらに,人物相互遮蔽も頻繁に発生するため,これまでの手法では,安定した追跡が継続できない場合が多いことが分かった.そこで,これまでの手法を改良し,人物相互の遮蔽によって発生する観測不能領域をシステム内で明示的に把握し,観測不能領域の不確定性を考慮した追跡手法を開発した.また,複数人物が近接する状況においても,人物の物理的な身体の大きさを考慮することで,追跡が混同しないよう手法を改良した.その結果,美術館の実データに対しても,安定した人物の動線計測が可能となった. また,人物が移動した動線データだけでは,人物の滞留などの時間的解析が難しいため,カーネル密度推定を用いて,計測対象領域における滞留時間分布の視覚化を行った.その結果,来場者の絵画鑑賞行動をAnt型,Fish型,Butterfly型,Grasshopper型の4つの種類に分類できることが分かった. これらの取り組みによって,実際の美術館で絵画鑑賞をする人物行動の高度な解析が可能となった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度までに,人物の肩の高さにレーザ測域センサを取付けたセンサポールを試作し,観測領域中の複数の人物を実時間追跡する手法を開発した.今年度は,システムを実際の美術館に設置し,一般の来場者を対象に提案手法を適用して有効性を評価することができた.その結果,これまでの実験では分からなかった課題も明らかとなったが,手法の改善に取り組むことで,実際の環境でも動作する安定したシステムを開発することができた.特に,レーザ測域センサを用いた追跡システムにおいて,遮蔽領域を明確に把握して対処する手法はこれまで報告されておらず,この取り組みの意義は非常に大きいと考えている.また,安定した追跡が可能となったことから,さらに細かな人物行動の理解に向けた取り組みも行うことができた.特に,人物が立ち止った場合など,追跡による動線計測だけでは把握が難しい,時間的なユーザの振る舞いを解析できるようになったことは大きな成果であると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの取り組みにおいて,実際の環境での安定した人物追跡が可能となった.また,美術館の来場者の絵画鑑賞行動をAnt型,Fish型,Butterfly型,Grasshopper型などのようなパターンに分類できた.そこで,最終年度においては,このような行動パターン分類の自動化を行う予定である.特に,ヒューマンロボットインタラクションへの応用に際しては,人物が退室したあとに行動パターンが判明しても,その情報を活用しにくい.そこで,観測対象領域に入ってきた人物がどのような行動パターンであるかを,できるだけ早期に判別できる手法の開発に取り組みたいと考えている.また,動線データと滞留データの解析に加え,これまでに開発したグループ識別手法を適用して,グループを検出し,グループ行動の解析を行い,研究目標の達成を図る予定である.
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Causes of Carryover |
本年度は,岡山県の大原美術館のご厚意により,実際の美術館で人物行動の計測を行う機会が得られた.当初,観測領域の拡大のため,本年度の物品費として,レーザ測域センサを複数購入する予定であったが,観測領域の拡大よりも,得られたデータの解析技術の確立が研究の進展において重要であると判断したため,本年度は該当物品の購入をせず,得られたデータの解析手法の確立を中心に研究した.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度は,研究員を雇用して追跡技術,解析技術を完成させ,データの解析をさらに進める.また,必要に応じてレーザ測域センサなどの設備を増強し,ポータビリティを考慮した実験装置の完成を目指す.得られた成果は学会等で報告する.
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