2015 Fiscal Year Research-status Report
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26330190
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
山本 正信 新潟大学, 自然科学系, フェロー (00242397)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 個人認証 / 歩行動作 / 身体サイズ / Kinect / 夜間 / セキュリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
歩行動作測定用センサ・マイクロソフトKinectをv.1からv.2へ変更した.Kinect v.1は三角測量により距離を測定しているのに対し,v.2では投射した光の往復時間から距離を測定している.したがって,死角(測定できない範囲)の削減が期待できる.また,センサの解像度がSDからHDへ拡大したため,測定レンジの拡大も期待できる.結果的には,身体の測定レンジが多少拡大した.また,身体の正面を測定している限りでは,死角の大小の影響は少ない.Kinect v.2はセンサの解像度が大きくなったため,データの入出力により大きなバス帯域を必要とする.そのため,高性能なビデオカードを搭載しているとバス帯域が競合し動作しなくなる.そこで,ビデオカードを外しDirectXはマザーボードのGPUでサポートした. これまで,身体サイズは身体を静止させて記録していた.Kinect v.2の導入に伴いSDKのバージョンが2.0にアップし,身体サイズを歩行動作と同時に秒間30回記録することが可能になった.新たに30名の歩行動作を身体サイズと共に測定し個人認証を行った.身体サイズは本来一定のはずであるが,実際には測定値は時間と共に変化する.身体サイズベクトルの時間平均値を特徴ベクトルとし,ユークリッド距離に基づく最近棒決定法,ベクトル要素間距離に基づく多数決法,及び身体サイズベクトル群に基づく相互部分空間法により個人識別を行った.合わせて歩行動作の高次固有空間への射影に基づく個人識別も行った.このとき,衣服や携帯物の識別結果への影響について調査した. さらに,Kinectよりも広範囲に測定できるように,多視点遠赤外線カメラによる身体等の対象物の測定も試みた.Kinectは視点が固定されているため測定視野が狭い.そこで,赤外線カメラをパン回転させ測定視野の拡大を試みた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Kinectをより解像度の高いv.2へ移行した.v.2が必要とするバンド帯域が広いため移行作業に手間取った.移行に伴い再度歩行動作からの個人認証を行った.その結果,v.1では30名で85%以上の識別率であったのに対し,v.2では60%程度に留まった.Kinectの機種以外にも,被験者,服装なども異なるので,識別率低下の原因を特定することはできない.歩行動作と身体サイズを同時に撮れるのはv.2であるので,識別実験は新しいデータで進めることにした. 撮影実験に先立ち,バッグなどの携帯物の影響を調べた.手に提げたバッグを手先あるいは足として認識することもあり,全身のスケルトン形状は非常に不安定であった.したがって,バッグ等を携帯している場合は対象外とした. 服装は夏服と冬服に限り,同一被験者に着替えてもらい二通り測定した. 身体サイズからの識別では,識別手法として,ユークリッド距離に基づく最近棒決定法(ユークリッド法),ベクトル要素間距離に基づく多数決法及び相互部分空間法を試みた.まず,夏服(半袖)の場合,30人の被験者に対し,識別率はユークリッド法(80%),相互部分空間法(67%),多数決法(47%)の順に低下した.一方,冬服(長袖)の場合は,識別率は,ユークリッド法(75%),相互部分空間法(56%),多数決法(41%)の順に低下した.冬服よりも夏服の方が識別率は高くなっているが,15人程度の被験者に対しては逆転している場合もある. Kinectの視野の狭さを脱却するために遠赤外線カメラの利用を検討した.まず,2台の遠赤外線カメラを同期させ,ステレオ画像の対応付けが可能であることを確認した.ただし,現行のカメラは解像度が低く身体形状が十分に得られないため,解像度の高いカメラが得られるまで可視光カメラで検討することにした.
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Strategy for Future Research Activity |
Kinect v.2への移行に手間取ったために,昨年度予定していた認証法の組み合わせによる識別率の向上を今年度目指す.組み合わせの方法として順位和の利用を想定している.認証法としては,歩行動作には高次固有空間法,身体サイズにはユークリッド法と相互部分空間法を予定している.多数決法はユークリッド法と類似であるため独立性が低いとして採用しない.未知の人物データの照合では,既知の人物データに対し認証法により類似度が計算される.この類似度の大きさの順に識別候補が順位付けされる.認証法ごとに付けられた順位を候補ごとに足し合わせ,順位和の小さな順に順位を付け直し,1位の候補を認証結果とするのである. 現在,測定した被験者数は30名である.当初,100名程度まで増やす予定であったが,人を対象とする研究は倫理審査を受けることになった.Kinectはゲームのセンサであるので,身体への影響はないと考えられるが,倫理審査では不合格になった.したがって,これ以上の被験者増は考えられないので,研究の方向を若干変更することにする. 一つは,数人から十数人規模の集団内の個人識別と,集団外からの不審者の検出可能性を現行の被験者データで検証する.家庭や少人数の事業所などで需要があると思われる.もう一つは,Kinectからの脱却である.Kinectのような赤外線レーザーを照射するアクティブなセンサより,遠赤外線を受けるパッシブなセンサの方がより安全性が高いと考えられる.そこで,遠赤外線カメラを複数配置し身体を3次元的に測定することにする.既製品であるKinectでは,バッグを携帯した身体の測定が不安定であった.多視点遠赤外線カメラにより衣服や携帯物の多様さに応じた歩行者の測定が可能となる.ただし,現行の遠赤外線カメラは解像度が低いため,当面,可視光カメラで身体の動作やサイズの測定などの基本的アルゴリズムの開発を進める.
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Causes of Carryover |
Kinectは歩行動作の測定には有用ではあるが,本研究の目標には必ずしも十分に添えないことが明らかになってきた.そこで,遠赤外線カメラの使用を検討している.遠赤外線ステレオカメラの基線長を人間の瞳孔間距離よりも長くしたとき,ステレオカメラはハイパーステレオカメラと呼ばれる.予備実験として,ハイパーステレオ画像対から両眼立体視が可能な条件を見出した.この研究成果を論文として投稿したところ,実験の不備により不採録となった.そのため,前年度に見込んでいた論文掲載料を次年度に繰り越すことにした.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
論文の不採録理由で指摘された実験の不備について,既に再実験を行い再度投稿中である.論文の採録・掲載が決まれば掲載料として支出予定である.
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Research Products
(3 results)