2014 Fiscal Year Research-status Report
知的エージェント方式に因る伝統音楽(津軽三味線)保存用自動採譜に関する研究
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26330202
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Research Institution | Hachinohe Institute of Technology |
Principal Investigator |
小坂谷 壽一 八戸工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40405725)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 自動採譜 / マルチエージェント / 伝統音楽の保存 / スペクトル解析 / パターンマッチング / 西洋楽譜 / 三味線楽譜 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、「三味線の自動採譜装置」を開発し地域に伝わる伝統音楽を弾けば、自動的に西洋譜・三味線譜に変換し保存可能とする事である。これにより譜面に精通した専門家が師匠の演奏を手作業で譜面化する手間が省け、地域伝統音楽演奏者さえ居れば簡単に楽譜に展開可能となる為、義務教育等における邦楽授業の効率向上や今後の伝統芸能保存及び伝統音楽継承者の育成が容易となる。この目的に対し、初年度は下記を実施した。 1.津軽・南部三味線楽曲(特に速弾き曲と特異撥さばき曲)の収録と解析、2.三味線演奏者や伝承者に優しい譜面つくり(音の高低の表記、音の長短の表記、三味線特有制約事項及びその表記など演奏に関する各種条件を調査し譜面作成に反映)の検討、3.1弦あたり0~18段階に分解される音階(“つぼ”:音の高低)の周波数解析、4.入力音に混在する撥さばき(スベリ、スクイ、ハジキ、スリ、オシ指等)分解能の調査と解析、5.入力音に混在する撥さばきが複数重なった場合の優先順位(パラメータ)の検討、6.三味線特有の音階(音高・音長)に対応する周波数の調査、7.開放弦と同音他弦音との差別化調査(同音異弦音の区別)、8.高速演奏時、又は入力音源に撥さばきが混じった場合に起動するマルチエージェント方式音階判別処理内タスク構成の検討、9.マルチエージェントを構成するつぼ(三味線音階)識別素子機能の検討、10.三味線の全音階が、楽曲毎に西洋譜と三味線譜(全て弦単位の数字表記)に展開可能か検討。 本研究では、南部芸能協会会長である赤坂良蔵先生をアドバイザーに、小坂谷壽一(研究代表者)、井上春樹氏(静岡大学教授:研究協力者)及び山岡克式氏(東京工業大学准教授:研究協力者)が逐次打合せを行い、仕様調査や装置構成等を検討し素案を作成した。又、本研究は2014年10月にSISA2014国際学会(於ホーチミン市)で発表している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度研究実績の概要に記載の通り、1~10の項目が着実に実行された。また、国際学会発表の論文(SISA2014、於ベトナム・ホーチミン)1編あり、今後も同研究をテーマを中心にした論文を投稿予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策として、下記を実施する。 本装置は、エレキ三味線入力音源部と本研究部位である自動採譜処理部に分けられ、更に自動採譜処理部は3つの処理で構成される。この処理を段階的に実現すべく、各種仕様調査(H26年度実施済)―>①音源周波数解析処理―>②マルチエージェント方式音階判別処理―>③譜面出力処理の順に研究開発を行う予定である。特にマルチエージェント方式音階判別処理は、音階識別素子を用いたマルチエージェント方式のタスク機能で構成され、入力音を個々の識別素子で判別後、0~18の三味線音階“つぼ”が正確に登録した音高周波数に適合すれば、正規音階と判断し譜面化(西洋譜・三味線譜)処理を行う。しかしここで撥さばきに因る音符の誤認識や高速演奏に因る音符の欠測が発生した場合、識別素子が自律分散的に機能し、個々の優先順位(撥さばき、メロデイのトレンド)テーブルを参照して最適な音符を選択する。 従来の研究方式では、エレキ三味線入力音源情報の抽出(スペクトル解析)後、スペクトルパターンと標準的な三味線和音階(“つぼ”)周波数を比較(周波数領域におけるテンプレートマッチング)し音階信号として抽出していた。更にデジタル信号処理後、音高を特定し譜面出力処理では、音符の長さを特定する為に時系列マッチングの方法を取っていた。 この理由として、音源情報は時間軸に沿って並ぶ1次元的な情報の系列の為、楽曲の速さや個々の音の長さは演奏者によって異なる事から、それらを標準的なパターンと比較すれば、長さの異なる系列を比較する必要が生じた為である。しかし研究目的にも記載の通り、前述の速弾き演奏での音符欠測や撥さばきに因る音符誤認識が一定の条件下で多発した為、今年度では、相互の時間軸上での順序関係を崩さずに系列を局所的に伸縮しながら比較し実行するマルチエージェント方式音階判別処理を開発して、これら問題の解決を行う。
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