2015 Fiscal Year Research-status Report
集合論的画像モデルの構築と画像復元・再構成問題への応用
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26330204
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Research Institution | Chiba Institute of Technology |
Principal Investigator |
中静 真 千葉工業大学, 工学部, 教授 (10251787)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 画像処理 / マセマティカルモフォロジー / 雑音除去 / 画像復元 / 最適化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は,集合論的な画像モデルの構築と,その画像復元・再構成問題への応用を提案することを目的としている.平成27年度の研究成果を大きく二つに分けると,一つは集合演算から得られる画像の特徴量を,画像の先見情報として用いる正則化法を提案したこと,および,集合演算に基づく画像のフィルタリング法を,非線形な活性化関数のネットワークと捉え,ニューラルネットワークで用いられている確率的勾配降下法により最適化したことである. 前者では,集合演算を,最大値関数を用いて定義することで,集合演算から得られる画像特徴を凸関数として定義し,凸最適化の手法を用いて画像復元ができることを示した.提案した画像特徴および最適化法により,画像をおおまかな骨格とテクスチャ等を含む詳細部に分解し,それぞれに異なるペナルティを課すことで,テクスチャとエッジの保存に優れた平滑化と雑音除去が達成できることを示した. 後者では,今までの集合論的な画像処理の枠組みの中で用いられてきた画像処理手法を,大量の事例をもとに最適化することに成功した.さらに,最適化が可能になったことから,従来手法をより複雑な構造を持つネットワークへと拡張し,画像処理に対する性能を向上させることができた.具体的に,インパルス性雑音除去,画像補間,インペインティングへ提案法を応用し,集合演算のみで,反復演算を必要とする変分的なアプローチに匹敵する画像処理が達成できることを示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
集合演算から得られる画像特徴を利用する正則化法では,平成26年度まで,勾配降下に基づく最小化アルゴリズムにより復元問題における最適化を実現していた.平成27年度は,集合演算を最大値関数の和で表現し,最大値関数の近接写像を最適化に導入した.これにより,パラメータに依存せず安定した解を導出することができるようになり,他手法との比較実験で大きな前進があった.さらに,最小化アルゴリズムの改善により,最小化の対象となる目的関数を拡張することができた.この拡張を利用して,画像の成分分離などの応用を実現した. 集合演算に基づくフィルタリング手法では,確率的勾配法の導入により,大量の画像事例からフィルタを学習することが可能となった.これにより,従来は経験的に知られていた性質を,機械学習の結果として示すことができた.また,学習されたフィルタを用いることで,従来法よりも高精度な画像復元を実現した.
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Strategy for Future Research Activity |
現在,本研究課題で推進している研究テーマを大別すると,一つはフィルタリングに基づくアプローチであり,もう一つは変分法的なアプローチである.前者では,集合演算によるモフォロジカルフィルタに基づき,そのネットワークの拡張,さらにニューラルネットワークの学習の知見に基づいたフィルタの学習に関して研究を進めてきた.今後,モフォロジカルフィルタを,近年,発達の著しいディープラーニングで利用されている活性化関数を利用して拡張,画像処理フィルタとして新しい知見を得るとともに,新しいネットワークの構造を導出する. 後者では,集合論的な演算に基づく画像特徴を画像の先見情報として利用し,画像復元へ適用した.今後,画像特徴の改善と,多種の画像復元問題へ適用し,その有効性を確認する必要がある.また,今後,フィルタリングに基づくアプローチと変分法的なアプローチを融合させ,変分法的なアプローチで利用される正則化関数を,フィルタリングに基づくアプローチで得られた学習法を利用して,画像データベースから学習することを検討する.課題として,学習のための目的関数の設定,学習法,最適化法の検討が挙げられる.
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Causes of Carryover |
当初,研究を遂行する上で,計算量が膨大なアルゴリズムを利用することを検討していた.そのため,高速な計算を実現できる計算機の購入を検討していた.平成27年度初めの研究成果から,計算時間を大幅に短縮するアルゴリズムを導出することができたため,平成27年度は,アルゴリズムの改良に主眼を置き,既存の計算機によるシミュレーションを中心とした研究を遂行した.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度の研究は,理論面からアルゴリズムの検討を行った.平成28年度は,研究のまとめとして,大量の画像データベースを利用して,実験結果を求める必要があるため,繰り越した予算により実験用の画像処理計算サーバーを購入する予定である.
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