2014 Fiscal Year Research-status Report
陰影アニメーションによる立体提示の実用化に向けた動的なプロジェクタカメラ系の較正
Project/Area Number |
26330222
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
天野 敏之 和歌山大学, システム工学部, 准教授 (60324472)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 空間拡張現実感 / プロジェクタカメラ系 / 幾何学較正 / 国際情報交換 |
Outline of Annual Research Achievements |
プロジェクタカメラ系を実用化するためには,コストの低減,扱いやすさと制御の頑強性の改善が重要である.本研究課題では,Shading Illusion技術を実用化するために,プロジェクタカメラ系の幾何学校正と光学校正を動的に実現する方法を明らかにすることを研究の目的としている.平成26年度には,「A1.高速撮影を用いた動的な幾何学補正手法の確立」と「A2.アーチファクトを利用した動的な幾何学較正の実現」の実施を予定していた. A1では,DLPプロジェクタのミラーフリップシーケンスと同期した,高フレームレートカメラから構築されるシステムを構築して検討した.しかし,ミラーフリップパターンを安定して検出することは困難であることからA1の方法は断念し,同時に取り組んだA2に注力した.アーチファクトは,プロジェクタカメラ系でフィードバックを行う際に,あらかじめ較正で求めた投影画像Pと撮影画像Cの幾何学的な画像の対応関係(P2Cマップ)と実際の対応関係にずれがある場合に発生する模様であり,A2ではこの模様から動的に幾何学較正を行う方法の確立を試みた. A2の検討の結果,P2Cマップとのズレによって発生する縞模様状のアーチファクトの周期はズレの大きさに関係する,また,縞模様ははずれの方向に伝搬することがわかった.この性質に着目し,まず,投影画像と撮影画像で縞模様の画像特徴のマッチングにより較正を行うことを試みた.様々な検討の結果,Pの複数の画素と一つのCの画素間での対応関係を逐次最小二乗法を利用することで連続的にも求めることができることを発見し,シミュレーションによって連続的にP2Cマップのズレ検出ができることを確認した. 現在,研究協力者であるヨハネス・ケプラー大のProf. Oliver Bimberとこのアイデアについて情報交換を行っており,さらなる詳細な検討を行っている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,研究代表者が提案しているShading Illusionの実用化を目指し,「S1.制御対象の移動に対して動的にプロジェクタカメラ系の幾何学較正を行う方法を明らかにする」ことと,「S2.環境照明や制御対象の位置変化に対して動的に光学較正を行う方法を明らかにする」ことを研究の目標としており,平成26年度はこのうちS1について取り組んできた. 研究実績の概要で述べたように,計画に従って手法の検討を実施した. 最終的に見出したP2Cマップの動的な校正方法は,当初想定していた方法とは異なるが,逐次処理により連続的にP2Cマップのズレを検出することができる手法である.この方法は,ピクセルマップによる制約を持たない画期的な方法であり,プロジェクタカメラ系の新たな手法として大きな成果が得られた. また,平成28年度には実用化に協力してくれる企業・団体を探すことを計画として述べていたが,既に1社と商品化もしくはサービス化を目指して共同研究・開発を開始している.以上の状況から,概ね良好に進展していると評価する.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は研究計画に従って研究を進める. 平成27年度はS2で示すように,環境照明や制御対象の位置変化に対して動的に光学較正を行う方法を明らかにする.具体的には,DLPプロジェクタの投影シーケンスに着目して環境照明に影響されない反射率推定手法を検討する.具体的には,DLPプロジェクタは時分割で高速にR,G,Bの三原色を切り替えてカラー画像を提示していることに着目し,連続して取得した画像からベイズの定理を用いてプロジェクタから光が投影されていない状態を逐次処理によって連続的に推定する方法を検討する.これにより,環境照明の変動に処理結果が影響されないShading Illusionを実現する.また,平成26年度に確立した動的な幾何学較正手法と合わせて,プロジェクタとカメラの幾何学的な関係や環境照明の変化に動的に対応できるプロジェクタカメラ系の実現を目指す. また,平成28年度は計画に従って,プロジェクタカメラ系からの距離によって印刷媒体に照射される投影光の光束密度の変化に対応する手法の確立する.その後,P2Cマップの補正量から形状復元を行い,ユーザインタラクションを実現を試みる.さらに,既に着手している企業との共同研究・開発によりShading Illusionの商品化もしくはサービス化について何らかの成果を得たい.
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Causes of Carryover |
平成26年度にはDLP開発キット(テキサス・インスツルメン ト LUXBEAM ライトエンジン)を購入する予定であったが,生産終了のためこの製品の購入が困難になった.これにともなって,DLP開発用 PCも購入を見送った.その対応策として,研究室で保有していた民生品のDLPプロジェクタを分解し代用する代替措置を講じたため,次年度使用額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
民生品のDLPプロジェクタを用いたため,開発キットのように任意のパターンを生成するなどの操作はできなかったが実際のDLPプロジェクタでの可能性を探ることはでき,平成26年度の研究実施には大きな影響をもたらさなかった. しかし,平成27年度に実施を予定している動的に光学較正を行う方法の検討において,手法の実証実験を行うためには任意のミラーフリップパターンを設定できるDLPプロジェクタが必要である.そのため,今後の研究では,この差額で計画書に掲げたDLP開発キットに変わる実験環境を整備する予定である.
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