2015 Fiscal Year Research-status Report
対話中の不快感情を無自覚的に軽減するメディアインタフェースに関する研究開発
Project/Area Number |
26330240
|
Research Institution | Advanced Telecommunications Research Institute International |
Principal Investigator |
港 隆史 株式会社国際電気通信基礎技術研究所, その他部局等, 研究員 (50359858)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | ヒューマンロボットインタラクション / インタフェース / コミュニケーション / コミュニケーションメディア / 感情喚起 / 好意的感情 |
Outline of Annual Research Achievements |
ユーザーと情報メディアとの身体的相互作用が感情変化を引き起こす要因を調べるために,抱擁行為から好意感情が引き起こされるか,さらにメディアとの接触の仕方が生起される感情に影響するかどうかについて考察した.これまでに,大学生を対象として,人型の対話メディアを抱擁しながら異性と対話した場合に,対話後に対話相手への好意が高まるかどうかを調べた研究はあったが,抱擁により好意感情が生起されたかについては十分に検証できていなかった.そこで,このときの実験結果をさらに解析した.メディアを力を入れずに抱擁して対話する条件と,力を入れて強く抱擁して対話する条件を比較した結果を解析したところ,対話相手に好意を示す行動のフリをユーザーに行わせた際に後者の方が素早く(躊躇いが少なく)行動が現れることがわかった.アンケート結果では,後者の方が対話中の緊張感が高かったにもかかわらず,躊躇いが少なかったということは,力を入れた抱擁の方がより対話相手への好意を引き起こしており,それによってフリ行動が素直に現れたものと考えられる.恋愛感情状態をはかるアンケート結果では,両条件で有意な差は見られなかったため,無自覚的なレベルで相手へのポジティブな心的状態の変化があったものと考えられる.メディアとの相互作用によりポジティブな感情が生起されること,さらにメディアとの接触の仕方によって生起される感情の強さが変わる可能性があるということが示された.また,このメディアは抱擁するというインタフェースであり,ユーザーは,抱擁して使用することが対話相手を抱擁するという意味を持っていることを理解していると考えられるが,アンケート結果からは,メディアを抱擁していても対話相手を身近に感じておらず(相手を抱擁している感覚がない),自身の身体的変化が対人行動であるという認識度合いは低かったものと考えられる.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ユーザーと情報メディアとの身体的相互作用の物理的・社会的特性について,実験結果の分析により,身体的変化の社会的意味の効果や接触相互作用の効果について部分的に明らかにしてきた.それらのさらなる調査に加えて,さらに身体的相互作用の心理的特性や状況依存性についても調査する計画であったが,そのための実験の考案に時間を要し,実験によりそれらを明らかにするまでに至らなかった.
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでに引き続き,ユーザーと情報メディアとの身体的相互作用が感情変化を引き起こす効果の状況依存性,相互作用における動きの必要性,メディアの擬人化の必要性など,インタフェース設計のための指針を得るための調査を行う.インタフェースの効果としては,不快感情の低減に限らず,ポジティブな感情喚起の効果についても視野に入れて調査を行う.それら調査に基づき,身体的変化を誘発し無自覚的に不快感情を軽減したりポジティブな感情を喚起したりすることが可能なインタフェースを有する対話メディアを試作する.使い易さやコストの面から単純な構造で効果のあるデザインを目指す.
|
Causes of Carryover |
謝金を要する被験者実験が年度内に予定通り実施できなかったため.
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の被験者実験の謝金として使用する計画である.
|