2015 Fiscal Year Research-status Report
fMRI・機械学習・形態測定学を融合した言語学習脳の構造的・機能的変化予測モデル
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26330246
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
赤間 啓之 東京工業大学, 社会理工学研究科, 准教授 (60242301)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
粟津 俊二 実践女子大学, 人間社会学部, 准教授 (00342684)
高野 裕治 同志社大学, 付置研究所, 准教授 (00424317) [Withdrawn]
染谷 芳明 慶應義塾大学, 付置研究所, 助教 (20392714)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 脳機能的磁気共鳴画像法 / 機械学習 / 脳の可塑性 / 複雑ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
Hiroyuki Akama, Maki Miyake, Jaeyoung Jung, Brian Murphy, 2015. Using Graph Components Derived from an Associative Concept Dictionary to Predict fMRI Neural Activation Patterns that Represent the Meaning of Nouns, PLoS ONE, DOI: 10.1371/journal.pone.0125725. PLoS ONE
複雑ネットワーク上の2つの点の間の距離指標として、測地的情報と共起的情報を融合したMiF(Markov inverse F-measure; マルコフ逆F尺度)という計算法を新たに提案し、それを連想概念辞書から抽出した意味ネットワークに適用したところ、言語コーパスとしてきわめて小さなデータサイズにもかかわらず、MiF距離行列を用いると、Mitchell(2008)によるfMRIデータの機械学習モデルを改良でき、単語に関する連想タスクを行う脳の反応を有意な精度で予測することができることが判明した。我々は、脳の意味処理をめぐるfMRIデータに対し、非常に小さい単語連想辞書EATの意味ネットワークから計算したマルコフ逆F尺度(MiF)値行列を適用すると、脳の反応が、小さなコーパスサイズでも従来の方法より高い78%の精度で推定できることがわかった。さらに、単語連想辞書の意味ネットワーク、すなわち単語と単語の間の概念の関連関係を表すネットワーク(グラフ)を、単語の意味処理を行う脳神経内の同時賦活ネットワーク(グラフ)に投影させる手法を提案し、異なるネットワーク(グラフ)間の関連性を解析する糸口を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題にあっては、 言語習得の過程において、教育と言う形での「介入」の効果をいかに計測するかが重要な課題である。人間の脳活動とその神経基盤を解明するにあたり、そうした熟達過程における能力獲得と脳の可塑性(plasticity)が本研究の当初からの目標であった。そのため、「経験と学習が様々な認知分野でもたらす脳変化(発達・成長)を捉える事が重要となる。しかし、VBM(Voxel-Based Morphometry)という、ニューロン生成による関与部位の容積・密度の差の測定は、有意傾向にとどまり、またその面で貢献を期待された分担者の高野裕治氏も科研応募資格のない職に転出された。 新しく研究分担者として染谷芳明氏が追加されたのち、複雑ネットワークの脳画像解析への応用である安静時機能連結:(RSFC)が、本課題の中心テーマである「介入による脳の可塑性をとらえる形態測定学」においても予想を超えた拡がりと発展性を見せた。それをふまえて、言語活動とその神経基盤を共有している低次の知覚・運動系まで射程に取り入れ、介入前後のfMRIデータから脳内の多岐に亘るネットワーク構造を解析する方向に2015年度は重点を置き、実験参加者ごとに介入以前以降の2セッションでfMRI実験をおこない、機能的変容をネットワークモデルのレベルで解析を行った。RSFCのデータ解釈の必要上、言語学習脳の高次機能だけに限定することなく、言語活動とその神経基盤を共有し(乗り入れ)ている低次の知覚・運動系まで射程に取り入れ、言語学習による変容をそれらの神経基盤の中に位置づけられるよう、より発展的に研究を展開することができた。より広い視野で、感覚・運動・言語の刺激に応じて、介入以前以後のネットワーク変容を解析する最適な手法の開発を進めるに至った。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は本研究課題の最終年度であるが、2015年度に取得した実験データの解析を進め、夏頃、国際学術論文として投稿する予定である。個人ごとに介入以前以降の同期賦活パターンの変化にタイプが見られることから、実験参加者全体のグループ解析に加え、実験参加者特性も反映させたよりミクロな分析も行いたい。 その場合、RSFCのデータ解析の方法論をさらに発展させ、情報処理のレベルに応じた最適な低周波数帯の選出や、RSFCの機械学習によるモデリングなどの先端的なテーマを意識した研究の推進を行うことを考えている。
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Causes of Carryover |
旅費の執行がなかったが、一方で、fMRI実験の執行に調整が必要となり、引き続き重点的に行うことになって、その利用料、fMRI実験参加者の謝金にかかる費用が、次年度まで使用予定に入るため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本研究課題の計画の根幹を為す、fMRI実験を次年度も行い、一方で、成果をまとめて国際学術論文に投稿するための費用も執行する。
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