2015 Fiscal Year Research-status Report
拡散場環境で複雑に絡み合う一次元反応拡散系:長距離抑制効果の出現と視覚情報処理
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26330276
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
野村 厚志 山口大学, 教育学部, 教授 (40264973)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡田 耕一 山口大学, 大学教育機構, 講師 (50452636)
水上 嘉樹 山口大学, 理工学研究科, 准教授 (60322252)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 反応拡散アルゴリズム / ノイズ / 画像符号化 / 画像蓄積 / FitzHugh-Nagumo / 時間差・時間遅れ / 抑制性因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、視覚情報処理機能の数理モデルを構築し、様々な視覚の機能や現象をその数理モデルを用いて説明することを最終的な目標としている。これまで我々は、生物の非線形反応の数理モデルの一つであるFitzHugh-Nagumo方程式を用いて、いくつかの視覚機能を実現してきた。FitzHugh-Nagumo方程式は活性化因子と抑制性因子の2つの状態を表す変数の時間変化を記述するが、視覚機能の実現においては、特に、抑制性因子の広がり方が活性化因子のそれよりも大きいことが重要であると考えてきた。本研究課題は、その抑制性因子の広がり方が何によるものか明らかにしようとするものである。 今年度は、2次元の離散的に結合されたFitzHugh-Nagumo方程式で記述された系について、活性化因子と抑制性因子の微分方程式において時間差のある場合を考えた。そのような系に対して、画像の濃淡分布に故意に正規分布を持つノイズを加えたものを初期条件として与えることを試みた。微分方程式の時間発展を数値計算することにより、興味深いことに、画像の濃淡に応じてパルス密度が変化するような結果を活性化因子の状態分布において得た。すなわち、濃淡画像を2値画像に変換(符号化)したこととなる。さらに興味深いことに、得られた2値画像を同じ系に対して初期条件として与え、再度時間発展を計算することにより、抑制性因子の分布が、元の濃淡画像に似通ったものとなることを見出した。すなわち、2値画像から濃淡画像を復元(復号化)したことになる。 以上より、本年度は2次元の離散的に結合されたFitzHugh-Nagumo方程式によって、濃淡画像の符号化・復号化が可能となることを見出した。なお、既に明らかにされているように、符号化されたパルス分布はしばらくすると不変となり、すなわち、画像の蓄積が行われたと考えることもできる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初は、拡散場上で1次元のFitzHugh-Nagumo型の反応拡散系がランダムに配置・結合された場合に、どのような振る舞いを示すか、明らかにすることを計画していた。しかしながら、偶然に、ランダムノイズを画像に加えることで、画像の符号化・復号化・蓄積が可能になることを見出した。そのため、予期していなかった画像の符号化・復号化の研究に注力したため、当初の計画は遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の方針として、まず単純化された場合として、2次元の離散結合系において、隣り合うFitzHugh-Nagumo型の非線形素子をランダムに結合した系を考え、この系の振る舞いを詳しく調べることを試みたい。その後、当初計画していた複雑に絡み合った1次元のFitzHugh-Nagumo型反応拡散系について、系の振る舞いを調べていきたい。
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