2014 Fiscal Year Research-status Report
複合生体信号計測に基づく人間のリラクゼーション評価と癒しサウンド生成システム構築
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26330289
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
前田 陽一郎 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 客員研究員 (40278586)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | リラクゼーション / 生体情報 / サウンド生成 / ファジィ推論 / 大規模カオス / 脳波 / 心拍 / RRI |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、大規模カオス(GCM)に基づくサウンド生成システムICASを用いた脳波によるリラクゼーションサウンド生成において、ユーザのリラックス度をさらに精度よく推定するための指標として、脳波以外の生体情報である心拍変動に着目した。ここでは心拍変動に時系列解析を行うことによって得られる複数の生理指標をファジィ推論により解析し、ユーザのリラックス度を判定することを試みた。 本提案手法では、まず脳波計により脳波から得たθ波、α波、β波情報からそれぞれのパワー含有率を計算し、このパワー含有率Gと直前に行う事前実験により被験者ごとに算出した個人差を含む係数kを用いて全脳波情報のうちθ波とα波の比率を計算するリラックス度R-脳波を算出した。さらに、マルチ生体センサにより得られた心電位からRRI(心拍間隔)情報より計測された時点と直前のRRIデータより、心拍が計測される度にRRIの標準偏差・RRI最高値-RRI最小値・RRIの平均値・隣り合うRRIの差の自乗平均平方根を算出し、これらの生理指標を入力としてリラックス度R-心拍を出力するファジィ推論ルールを構築した。 本実験では、20代の男子大学生3名に対して心拍情報・脳波情報の計測をマルチ生体信号計測装置(Polymate mini、ニホンサンテク社製、科研費購入物品)を用いて行った。初めに、事前実験としてヒーリングミュージックの聴取(リラックス)・暗算(ストレス)・何もしない(安静)の3状態で1分間の心拍と脳波を計測し、初期パラメータのキャリブレーションを行った。次にリラクゼーションサウンド生成実験においてICASでGCMの大規模カオスパラメータ(a,e)を相図上で順次変化させてサウンド生成を行い、聴取中の脳波・心電を計測した。計測時間はサウンド生成の開始から30秒後、1分間とし、実験後のアンケートとの相関より提案手法の評価を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験後に、脳波より算出したR-脳波とアンケート結果の平均相関係数は0.74であり、強い相関がみられた。これにより、脳波によるリラックス指標R-脳波の有効性が確認された。また、心電位より算出したリラックス度R-心拍では、脳波ほどの高い相関は確認できなかったが、ファジィ推論の入力に用いたRRIの各指標単独よりはファジィ推論により算出されたリラックス指標R-心拍のほうが正確にリラックス状態を把握することができたことが確認された。また、これらの実験を本申請で購入したマルチ生体信号計測装置を用いて確認することができた。これにより、本研究により提案したリラックス度の評価指標および評価手法の有効性が示されたと言える。 尚、学会における成果報告では、日本知能情報ファジィ学会主催の第30回ファジィシステムシンポジウムにおいて、「大規模カオスに基づくサウンド生成システムによる人間に与える心地良さの分析」と題して発表を行った。ここでは本研究で用いている大規模カオスによるサウンド生成システムICAS における生成サウンドの癒し効果を検証するため、1/f ゆらぎとの関連性を分析し、感性評価を行った。その結果、心地良く感じるサウンドは1/f ゆらぎに近い傾向にあり、同期性と非同期性をほどよく内包した部分秩序相では比較的1/f ゆらぎに近いゆらぎが観測でき、被験者の『快』の生成サウンドでもパラメータが部分秩序相に多く分布している傾向にあることから、1/f ゆらぎとGCM パラメータは相関が強いことが分かったことが報告された。尚、科研費の関連研究調査の目的のため中国で開催された国際会議 (WCCI2014)にも参加した。 実験における提案手法の有効性確認、マルチ生体信号計測装置による計測実験、学会における成果報告が行われたことから、本研究は当初の予定どおり概ね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度において本研究では、脳波より算出したリラックス度R-脳波とアンケートについては、相図上で秩序相・部分秩序相付近で高いリラックス度評価を得ることが確認できた。また心拍より算出した各指標は、ファジィ推論により大まかなリラックス度R-心拍を推定することができた。今後はこれらの脳波と心拍のリラックス指標を用いてより正確にリラックス度を総合判断できるシステムの構築を目指していく必要がある。 また、今回の実験においては20 代の男子大学生3名に対してしか行うことができなかったが、今後はさらに被験者の数を増やしてより正確なリラックス度の評価を行っていく必要があると考える。 さらに、脳波と心拍以外の生体計測情報(発汗、筋電など)も新たに利用してリラックス度の評価性能向上を目指していきたい。その際に、これらの複数のマルチ生体情報を総合的に有効に統合する手法についても検討していく必要があると考える。 最後に本研究の成果報告については、国内学会だけではなく、海外における国際会議(FUZZ-IEEE 2015等)にも参加して積極的に発表していく予定である。
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Causes of Carryover |
科研費に使用する生体信号計測装置の物品や国内学会および国際会議参加に係る出張旅費が想定より安かったため、次年度使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は主に旅費の申請がほとんどであるが、成果発表のため国内学会だけではなく、イスタンブールの国際会議(FUZZ-IEEE 2015)に参加する予定であり、昨年度よりは旅費を使用するものと考えられる。
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