2014 Fiscal Year Research-status Report
高次な触感設計を目指した快・不快の物理モデルの構築
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26330309
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
秋山 庸子 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50452470)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 触感 / 快・不快 / 官能評価 / 物理量 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,触感の快・不快情動を引き起こす物理量の閾値や極大値などの定量的な条件を明らかにし,快・不快を引き起こす物理現象を定式化・定量化することで,「心地よさ」をもたらす材料を設計することを目的としている。このことにより,機能性が飽和に達しつつある現代のものづくりにおいて,製品に高次の付加価値を与えるための汎用的な手法が構築されると考えられる。 まず触感の快・不快を引き起こす物理現象の実例として,化粧水の快・不快の一つであるしっとり感とべたつきを取り上げた。化粧水のべたつきとしっとり感に関しては、これまでの我々の研究により、べたつきは皮膚表面でのサンプルの付着力に関連し、しっとり感は皮膚に対するサンプルの接触角に関係することが分かっているが,後者は界面化学的特性であり,触における物理現象として比較したときに、本質的な快・不快の違いが明確ではない。そこで,指が感じる快・不快の物理現象の違いを明らかにするため,しっとり感に対応する物理現象を検討した。皮膚に対するサンプルの接触角は,皮膚表面での摩擦係数に対応すると考えられるため,摩擦係数の測定を行った。その結果,摩擦係数最大値は「しっとり」と負の相関を示した。このことは,最大摩擦係数が小さいほど,塗布時の「しっとり」の官能値が増加することを示し,指を塗布対象に対して平行に動かしたときの指先に負荷される抵抗力が小さいほど,「しっとり」感を感じる傾向にあるといえる。結果として,べたつきは皮膚を模擬した基板上での付着力積分値,しっとりは皮膚を模擬した基板上での摩擦力最大値により,それぞれ異なる物理現象として解釈できる可能性が示された。このことは化粧水の触感の快・不快を制御する因子を解明するうえで重要な情報であるといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
特定の材料についての触感の快・不快情動を引き起こす本質的な物理現象は定量的に明らかになりつつあるが,触感の物理現象の解釈の汎用化は予想以上に難しい検討課題であり,明確な結果を得るに至っていない。これまでの各論的な検討結果に加えて、幅広い種類のモデル材料を用いた実験を行い,これらの情報を総合して検討を進め,汎用化への道筋を得る必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
汎用的な触感の快・不快の解釈をめざし,様々な触対象の快・不快の共通点や相違点を統計学的な手法も利用して検討する。また今年度に得られた課題については,快・不快を決定づける定量的な物理条件を明らかにするため,官能値と物理量との関係をさらに定量的な検討として掘り下げる。すべての触対象を網羅した触感の快・不快モデルの汎用化が困難な場合は,いくつかの系統の材料に分けたある程度各論的な快・不快のモデルの構築を行う。またデータ解析や実験のための研究人員が不足しているため,H27年度は研究補助のアルバイトを雇用する。
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Causes of Carryover |
雇用予定であった研究補助アルバイトの適切な人員が見つからなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究補助アルバイトとして適切な人材が見つかったため,4月1日より雇用する。
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Research Products
(5 results)