2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26330314
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Research Institution | Hokkaido University of Science |
Principal Investigator |
山下 政司 北海道科学大学, 保健医療学部, 教授 (40210421)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 快不快 / 自律神経 / 血液循環 / 呼吸 / 脳波 / 主観評価 / 生理的指標 |
Outline of Annual Research Achievements |
快・不快指標の探索研究 感性モデルの基盤の一つである「快-不快」軸に対応する客観的生理指標について検討を行った。「快」といっても癒しの「快」と爽快な「快」については、Russelの円環モデル上では「快×覚醒」及び「快×睡眠」となるため、「覚醒」と「睡眠」の影響を受け、自律神経活動状況は全く異なることから「快」を表現する生理学的特徴は見出し難い。 本研究では、血液循環、呼吸及び脳波信号を基に様々な解析を通して「快・不快」各々の特徴について調査した。実際には、「覚醒・睡眠」の影響を受けない「快」である「喜び」も導入して検討を行った。具体的には、「子猫」「子犬」等の癒し動画、「ドミノ倒し」「スポーツハイライト」等の爽快動画、「乳児」を用いた嬉しさ動画、「動物の死骸」の不快動画、「校内風景」を用いた対照動画など各5分間の動画を用いて健常男性に視聴実験を行い、生体計測及び主観評価結果を解析評価した。計測パラメータは、一回拍出量、連続血圧、心電図、脳波、呼吸波等を用いた。なお、被験者は前安静時と後安静時には対照動画を視聴し、その間に各感情に応じた数種類の動画をランダムに視聴する。このような実験を各感情喚起動画の種類を変えて複数回行った。 自律神経・血液循環応答や脳波解析を通して検討した結果、「爽快」動画に対応した心拍数、脈圧、脈波振幅が対照動画に対して変化(p<0.05)し、呼吸周波数は上昇傾向(p<0.1)を示した。さらに、「嬉しさ」動画で呼吸周波数が対照動画に対して上昇(P<0.05)した。呼吸周波数と呼吸振幅を用いた正準判別分析により有用な結果が得られたが、緊張など他の感情動画を導入した場合には判別が難しい可能性が考えられた。なお、「爽快」「嬉しさ」「癒し」に共通する生理指標は見いだされないが、心拍数と脈圧を用いた解析では「快」に共通の変化が得られる可能性が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
従来まで判別が難しかった血液循環系の生理的変化に対して、「爽快」に対する多くの生理的変化を見出しており、快感情と最も結びつきの強い「嬉しさ」に対する生理的変化も見出された。「癒し」に対しては、過去の研究から血管緊張性に関するパラメータで変化を見出しており、快感情に対応する生理的変化の糸口が見出されている。全ての快感情に共通する生理的指標を見出すには至っていないが、呼吸周波数・呼吸振幅および心拍数と脈圧の関係からその可能性を見出しており、さらに解析を進める必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の方策としては、呼吸周波数・呼吸振幅および心拍数と脈圧の関係から快感情に共通する生理的指標を見出すべくさらなる解析を行う。さらには、随伴情動による生理応答の特徴抽出を試みるべく以下の研究を進める。様々な感情の感性3軸モデル上の分布から、利用価値のある随伴情動関係として、「快-興奮」、「興奮-緊張」、「興奮-不快」があり、それぞれの随伴情動を表す刺激を用意し、被験者に対して視聴実験を行ってその生理応答の特徴について、生理メカニズムやシステム論的観点を基に検討して考察する。特に「快―興奮」や「興奮―緊張」では、血液循環動態のシステム論的応答がその強度や随伴状況に応じて変わる可能性がこれまでの研究により予測されるので、詳細な検討を行なう。それらの情報の中から、感性3軸モデルに基づいて感性の適合度を高めるのに役立つ生理的特徴は何かを検討して整理する。
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Causes of Carryover |
理由は論文投稿を延期したため論文投稿料および論文掲載料が必要なくなったことに加え、次年度に英国で開催される国際会議参加のために旅費・登録料等が必要になったことが上げられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
使用計画としては、新たな論文投稿と当年度の成果発表への海外出張旅費として使用する予定である。
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