2014 Fiscal Year Research-status Report
アミノ酸配列相同性が著しく高いにも拘らず立体構造の異なるタンパク質の構造構築原理
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26330335
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
菊地 武司 立命館大学, 生命科学部, 教授 (90195206)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 配列相同タンパク質 / フォールディング機構 / 配列解析 / 平均距離統計 / Go モデル / 分子動力学 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度においては、当初の計画を実行した。すなわちヒト血清アルブミン結合GAドメインである2FSL(GAタンパク質、3alpha束構造)と連鎖球菌細胞表面タンパク質G由来のIgG結合GBドメイン1PGA(GBタンパク質、4alpha+beta 構造)のアミノ酸配列のBLAST検索を行った。その結果、BLAST検索のみでは2つの構造を完全には識別できないことが分かった。そこで、相同タンパク質の中でも98%の配列相同性示しながら立体構造が異なる2LHGと2LHC(GAタンパク質、3alpha束構造)および2LHDと2LHE(GBタンパク質、4beta+alpha 構造)を選び、アミノ酸間平均距離統計解析に基づいて、アミノ酸配列上のフォールディング部位の情報抽出を試みた。本手法はF値解析法というもので、タンパク質の構造がランダムな状態においてある残基に注目し、その残基が他の残基とコンタクトをどの程度とるか調べ、タンパク質立体構造形成の初期過程において構造を形成する部位の予測を行う。またBLAST検索の結果得られた配列に対し、それぞれの構造を示す配列群に分け、マルティプルアラインメントを作成し、保存疎水残基を特定した。保存疎水残基のうちF値解析によって得られた構造形成部位に相当するものは構造形成過程において重要であると考えられるが、2つの構造においてその特徴に大きな違いがあることがわかった。すなわち3alpha束構造の場合は、3つのへリックスを結合させる疎水パッキングを形成する残基が重要と思われるのに対し、4beta+alpha 構造の場合は中央のへリックスの周りの比較的局所的な疎水パッキングが構造形成に重要であることが示唆された。この結果は予備的なGoモデルシミュレーションでも示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度における研究の目的は、以下のとおりであった。 (1)タンパク質立体構造データバンク(Protein Data Bank, PDB)の配列データを用い、BLASTによる相同配列検索を行い、マルティプルアラインメントを作成する。同じ立体構造をとっていることに留意しながら、保存疎水残基を特定する。 (2)平均距離統計に基づいてランダム構造の残基間のコンタクト頻度を計算し、特に初期構造形成残基を推定する。さらに、保存疎水残基の位置との比較を行う。 (3)保存疎水残基のうち、特に初期構造形成に寄与しそうな残基を、3alpha束構造、4beta+alpha 構造それぞれにおいて特定し、構造形成機構の推定を諮る。 実際に平成26年度に行ったことは、2FSL(GAタンパク質、3alpha束構造)と1PGA(GBタンパク質、4alpha+beta 構造)のBLASTによる配列検索であり、これは上記(1)に対応する。次に相同タンパク質の中でも98%の配列相同性示しながら立体構造が異なる2LHGと2LHC(GAタンパク質、3alpha束構造)および2LHDと2LHE(GBタンパク質、4alpha+beta 構造)を選び、アミノ酸間平均距離統計解析に基づくアミノ酸配列上のフォールディング部位の情報抽出を試みた。これは上記(2)に対応する。さらにBLAST検索の結果得られた配列に対し、それぞれの構造を示す配列群に分け、マルティプルアラインメントを作成し、保存疎水残基を特定した。これは上記(1)に相当する。さらに構造形成として、3alpha束構造の場合は、3つのへリックスを結合させる疎水パッキングを形成する残基が重要と思われるのに対し、4alpha+beta 構造の場合は中央のへリックスの周りの比較的局所的な疎水パッキングが構造形成に重要であることを推定した。これは上記(3)に相当する。また予備的なGoモデルシミュレーションも行い上記推論を補強した。この部分は平成28年度における計画に含まれるもので研究が順調であることを意味している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度では平成26年度の成果を踏まえ、研究を第二段階へ進める。すなわちGoモデルシミュレーションや他のシミュレーションを始め、GAタンパク質とGBタンパク質の構造形成機構の予測を試みる。研究においては独自のGoモデル法(Calpha Goモデル)を提案しているが、この方法をそれぞれの構造を持つタンパク質について適用し、これまでに得られている知見を反映するかどうかさらに確認する。また同じ立体構造を持ち、アミノ酸配列が少し異なるタンパク質についてGoモデル計算を適用し、得られている構造形成機構が普遍的に成り立っているかどうか、注意深く観察する。さらに分子動力学(MD)シミュレーションを応用して検証を行う。MDによる検証は困難であることが予想されることから、本研究では、得られた知見をMDに取り込むことを検討する。すなわち、3alpha束構造と4beta+alpha 構造それぞれの構造において重要と思われる残基間のコンタクトについて、それぞれ新たなポテンシャルを加え、立体構造形成にどのように影響するかを綿密に調べる。さらに溶媒効果も検討する。そして、実際得られている残基間相互作用が立体構造形成に決定的かどうかを検証する。もしこのことが確認されれば、少なくとも本研究で取り上げたGAタンパク質・GBタンパク質関連タンパク質の構造形成機構が解明されたことになると思われる。
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Research Products
(2 results)