2015 Fiscal Year Research-status Report
計算と実験の融合によるDNA結合タンパク質の塩基配列選択能の高度化
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26330339
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
河野 秀俊 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 量子ビーム応用研究センター, 研究主幹 (40291918)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | DNA結合タンパク質 / デザイン / B1H |
Outline of Annual Research Achievements |
遺伝情報の発現は、DNA結合蛋白質が特定の塩基配列に結合することによって制御されているが、その塩基配列特異性は蛋白質によって様々である。また、次世代シークエンサーによるChIP-seq 解析により、転写因子などDNA結合蛋白質がゲノムのどこに結合しているかを網羅的に調べることができるようになってきた。しかし、依然として蛋白質がどのようにDNAを認識しているかはよく分かっていない。そこで、本研究では、蛋白質を設計し、DNAとの結合を実験的に調べることにより、その認識メカニズムの解明に迫る。 本年度は、リンカーで結合したダイマータンパク質の結合を調べた。ダイマーにすることにより、理論上2倍の長さのDNA配列を認識する、つまり、もともとの親和性、選択性をそれぞれ、M, Nとすると、ダイマー化によってM, N はともに2乗になると期待される。 このダイマーのDNA結合を調べるために、B1Hアッセイ、ゲルシフトアッセイを行った。 ゲルシフトアッセイでは、ダイマーにすることでターゲットDNAとの結合親和性が上がった。しかし、その上がり具合は、Mの2乗にはならなかった。この理由は、ダイマーをフレキシブルなリンカーでつないだことに起因すると考えられた。つまり、DNAに結合することにより、エントロピーロスが生じ、結合によって得られたエンタルピーの利得がある程度相殺され、結果的に10倍から100倍程度の親和性の向上になったと考察される。 B1Hアッセイは、ダイマーの系ではあまり動作しなかった。モノマーでも十分な結合親和性で結合するため、ダイマーの片方が結合するだけで発現系が動いてしまうからだと推定した。実際、結合した配列を調べてみると、ひとつのターゲット配列を持つものが多かった。しかし、二つのターゲット配列を持つものも見つけることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
DNA結合タンパク質をフレキシブルなリンカーで結合した場合、結合親和性に単純な加算性は成り立たなかった。また、モノマーの親和性のみで、B1Hの系が働いてしまうため、ダイマーの結合配列を調べることがうまくいかなかった。これらの原因を探るのに時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
B1Hの系では、モノマーの親和性がある程度高いと、ダイマーのうち片方が結合することで系が動いてしまい、スクリーニングができない。そこで、モノマーのタンパク質に、結合親和性を下げる変異を入れ、スクリーニングができる条件でのB1Hアッセイを実施することを考える。
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Causes of Carryover |
他の用務が重なったため、予定していた学会参加を一部、取りやめざるを得なかった。その結果、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
生じた次年度使用額は、実験に必要な試薬等の購入として使用する。
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