2015 Fiscal Year Research-status Report
大規模取引ネットワークにおける深層学習を用いた取引推薦手法に関する研究
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26330344
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
森 純一郎 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (30508924)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 取引ネットワーク / ネットワーク分析 / 機械学習 / 深層学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、大規模な企業間の取引ネットワークの分析に基づき、ネットワークにおける企業間の新たな提携・連携先の発見支援、および頑健で持続可能なサプライチェーンの構築支援を目的とする。そのために、機械学習手法である深層学習を用いて、企業間の取引に関わる大規模な異種のビッグデータから取引構造の潜在的な特徴量の抽出を行い、取引構造を汎用的にモデル化する手法の研究を行う。その上で実際に取引先の推薦サービスを提供するシステム構築を行う。これにより、大規模データを活用して企業の取引予測に有用な潜在的な特徴量を設計するための知見を明らかにする。さらに、災害時のような状況下においても回復性があり持続可能であるレジリアントな企業間の取引ネットワークをデータに基づいて構築するための知見を明らかにする。
平成27年度は主に、「潜在的特徴量を用いた取引関係予測の学習器の設計と実装」について研究を進めた。具体的には、平成26年度の研究に行った、深層学習を用いた取引構造をモデル化するための潜在的特徴量の抽出に基づいて、企業間の取引関係を予測するための学習器の設計と実装を行った。そのために、取引ネットワークにおいて、取引が存在する関係を正例、存在しない関係を負例として、複数の学習データセットを作成する。学習データセットに対して、線形関数や非線形なカーネル関数など複数の学習器の検討を行い、取引構造の潜在的特徴量を用いた取引関係予測手法とその精度について知見を得た。
また、「取引ネットワーク全体の回復性や持続可能性を定量化し、それらを最適的する取引先推薦手法の設計と実装」についての研究にも着手を開始した。特に、大規模災害のような緊急時においても取引ネットワーク全体がレジリアントであるために持つべき回復性や持続可能性等の性質について、サプライチェーンの専門家と議論し、それらの性質を定量化した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は主に、「潜在的特徴量を用いた取引関係予測の学習器の設計と実装」について研究を進める計画であった。具体的には、平成26年度の研究に行った、深層学習を用いた取引構造をモデル化するための潜在的特徴量の抽出に基づいて、企業間の取引関係を予測するための学習器の設計と実装を行った。具体的には、取引ネットワークにおいて、取引が存在する関係を正例、存在しない関係を負例として、複数の学習データセットを作成した上で、学習データセットに対して、線形関数や非線形なカーネル関数など複数の学習器の検討を行い、取引構造の潜在的特徴量を用いた取引関係予測手法とその精度について知見を獲得し、当初の計画通りおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は「潜在的特徴量を用いた取引関係予測の学習器の設計と実装」について研究を進めた上で、企業間の取引ネットワーク全体のレジリアンスを考慮した、企業間の新たな提携・連携等の取引先を推薦する技術の実現のために、「取引ネットワーク全体の回復性や持続可能性を定量化し、それらを最適化する取引先推薦手法の設計と実装」について研究を進める。最終的には研究開発した手法を応用した取引先推薦システムを構築し、実証実験により手法およびシステムの評価・改善を行う。
具体的には、平成27年度に研究開発を進めた「潜在的特徴量を用いた取引関係予測の学習器の設計と実装」について、取引関係予測に基づいて取引先推薦を行う際に、ネットワーク全体のレジリアンスに関する指標を最適化するような定式化を行う。これにより、ネットワーク全体の最適性を考慮しながら、企業間の個々の取引先を推薦する手法の設計と実装を進める。さらに、「企業間の取引構造モデルに基づく取引先推薦システムの設計・実装と評価」に関する研究として、取引先推薦手法に基づき、取引先推薦サービスを提供するウェブシステム構築し、中小企業や支援機関に利用してもらうことで、手法およびシステムの評価および改善を行う。
以上の各研究項目の実施にあたっては、これまでの研究において協力関係を築いている経済産業省、中小企業庁、全国イノベーション推進機関ネットワーク等の関連機関と密に連携を行う。また、サプライチェーンについては東京大学・坂田一郎教授、東京工業大学・梶川裕矢准教授、機械学習については東京大学・鹿島久嗣准教授と研究連携を行い、効率的な研究の実施を行う。
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Causes of Carryover |
当初謝金による作業を想定していたデータ収集、前処理について、効率的な処理方法を新たに導入することで、同謝金の必要がなくなったため。また、国際学会への論文投稿予定を延期したことで、旅費の一部が必要なくなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究開発した手法を応用した取引先推薦システムを構築し、手法およびシステムの評価・改善を行うための実証実験にかかる謝金に使用する予定。
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Research Products
(2 results)