2015 Fiscal Year Research-status Report
学校図書館職員の技能要件と資格教育のギャップに関する実践的研究
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26330368
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
小田 光宏 青山学院大学, 教育人間科学部, 教授 (00185604)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 学校図書館 / 司書教諭 / 学校司書 / コンピテンス / 図書館情報学教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
3年間の研究プロセスである,(1)資格教育の内容に関するテキストブックの分析,(2)資格教育を担当する大学教員を対象にした聴取(インタビュー)調査と分析,(3)司書教諭を対象にした聴取調査と分析,(4)学校司書を対象にした聴取調査と分析,(5)分析結果の統合的考察のうち,平成27年度は,(3)と(4)に取り組んだ。 まず,平成26年度に,沖縄県,大阪府,佐賀県において実施した学校図書館関係職員に対する予備調査を踏まえて,平成27年度に実施予定のインタビュー調査の計画を再検討し,その一部を修正した。具体的には,学校図書館の実情から,当初予定していたグループインタビューの制約が大きいと判断し,個別インタビューの手法を適用することとした。 つぎに,平成26年度の成果として作成した「知識・技術の一覧表」に基づいて,司書教諭用と学校司書用に分けて,「知識・技術を学習する必要」と「知識・技術の活用」に関する二つの設問からなる質問紙(事前記入シート)を作成した。この質問紙は,聴取調査に先がけて対象者に送付して回答を求めるためのものであり,実査当日は,その結果に基づいて,効率よく聴取が行えるよう意図して整えた。 聴取調査の対象者選定は,計画の一部を修正したことに基づき,過去10年間程度を視野に入れ,学校図書館における活動実績を,複数の専門誌の記事として執筆した者,または,複数の研究会等で口頭発表を行なった者を,候補者としたリストアップした。その中から,勤務先の学校図書館の校種・設立母体を考慮しながら,司書教諭職8名,学校司書職8名,計16名を対象として選び,聴取調査への協力を得た。16名に対する聴取は,平成28年1月から3月にかけて,ひとり2時間程度をかけて実施した。 なお,平成26年度に得られた成果の中間報告を,平成27年度西日本図書館学会春季研究発表会において,口頭発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度には,研究開始から1年が経過した時点で得られた知見をもとに,当初の計画を再検討し,予定していた聴取調査の方法を一部修正することを含めて,学校図書館の実情に沿った研究を遂行したとみなすことができる。 具体的には,平成27年度に予定していた,「司書教諭を対象にした聴取調査と分析」と「学校司書を対象にした聴取調査と分析」に関して,聴取調査を十分に行うことができた。また,聴取の対象者が学校関係者であることから,実査日の設定が平成27年度末に近い平成28年1月から3月となったが,それぞれの聴取調査終了後に,その結果をとりまとめる作業を開始し,基礎的な分析データを整理するに至り,平成28年度の研究遂行に向けた準備を整えることができた。 以上の状況を踏まえて,「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては,平成27年度までの研究実績が,おおむね順調に進展していることから,当初設定した計画を予定通り遂行することを基本にすえて活動を行う。すなわち,平成27年度に実施した学校図書館職員(司書教諭及び学校司書)を対象にした聴取調査の結果に対する分析を進める。また,学校図書館の環境整備,ならびに,学校図書館職の技能養成の進展といった要因を加味しながら,聴取調査のデータを分析した結果を,統合的に考察することに傾注する。 分析結果の統合的な考察に関しては,連携研究者との研究チーム内で議論することを基本にしながらも,学校図書館に関して研究活動を行なっている他の研究者から,分析結果に対する専門的知見を求めることも構想している。 また,分析及び考察の結果得られた知見の公表に関しては,いくつかの視点ごとに行うことを計画している。本報告時点では,平成28年度西日本図書館学会春季研究発表会における口頭発表,ならびに,国際学校図書館協会(International Association of School Librarianship)年次大会(2016年東京大会)におけるポスター発表を予定している。
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Causes of Carryover |
研究遂行上,最終的に16名の学校図書館職員(司書教諭,学校司書)を聴取の対象者としたが,聴取の実施地は,関東7名,東海2名,関西2名,中国2名,北海道2名,九州1名となり,遠隔地の対象者への実査は,想定していたよりも少なかった。また,調査旅程(出張)において,1回に複数の対象者への実査が可能となったことから,旅程数も想定していたよりも少なくなった。さらに,実査時期が平成28年1月から3月に集中したため,本務との関係で,連携協力者全員が常に聴取調査に立ち会ううことにならなかった。こうした事由から,旅費の使用額が,予定額よりも下回った。 また,実査が平成27年度末となったことから,聴取の成果の概要をデータ化して分析することを優先させ,聴取記録そのものの作成(文字おこし)に関しては,平成28年度に移行することとした。これにより,記録作成の謝金を使用せず,次年度使用額が生じている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は,次の作業に充当することを予定している。 まず,平成28年度に実施予定の分析作業の精緻化と,成果の発表に伴う経費に充当する予定である。分析作業の精緻化に関しては,学校図書館に関する研究を行なっている他の研究グループと協同して,研究会・シンポジウムを開催することを構想しており,その経費の一部に充当する。一方,成果発表に関しては,当初から予定していた発表機会に加えて,積極的に成果を公開するよう務める予定であり,そのための経費に充てる。 つぎに,分析作業の過程で,成果に対するフォローアップの調査を行う必要が生じた可能性があるため,その調査費用にも充当し,いっそう質の高い研究成果が得られることを目指す。また,平成27年度に実施した学校図書館職員への聴取調査の記録作成に関しては,平成28年度に使用を見込んでいる。
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Research Products
(1 results)