2014 Fiscal Year Research-status Report
実践型演習における受講生の行動評価に基づくITコンピテンシ育成環境
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26330381
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
湯浦 克彦 静岡大学, 情報学研究科, 教授 (60517019)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石川 博 首都大学東京, システムデザイン学部, 教授 (60326014)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 高度IT人材 / コンピテンシ / 行動特性 / PISA CPS / ルーブリック |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、前年度に先行して調査・実験した情報系実践演習における学生の行動特性(コンピテンシ)について再評価を行った。その結果、OECDが推進する協調学習フレームワークであるPISA CPSを用いればグループ演習における学生の行動パターンが捉えやすいことや、リーダー/実務エキスパート/調整役といった学生の役割タイプによって行動パターンやその変化が異なることが示された。 そこで、評価を行う授業に先だって別の授業の中で学生のグループ活動における役割タイプを学生の相互評価によって分析し、役割タイプの分布がほぼ一定となるように学生グループを設定して再び演習を実施した。その結果、リーダーは出足不調であるが後半での伸び率が高い。問題の定義から解決への貢献度が高いが、検証・評価のポイントが低い。逆に実務エキスパートは出足好調で短期的な成果への貢献が高いが、問題の再発見と解決案の調整を繰り返すうちに活動が低調となることなどが分析された。また、この実験の過程において、コンピテンシ評価基準となる行動キーワード集(ルーブリック)およびその作成手順の第一版を開発することができた。 上記の研究成果に関しては、研究会において報告した。そのほか、コンピテンシ向上を含めたプレゼンテーションのスキル向上の学習コンテンツについても研究発表を行った。また、先の科研費研究において開発した情報系学生のための高度ITスキルとコンピテンシ関連情報の共有サイトであるITPostについて、今後本研究成果を反映されるための準備を行った。高度なスキルとコンピテンシを持つ人材の情報を約300件拡張するなどの成果を含めて査読付き論文としてまとめた。 またITコンピテンシ環境を構築するための技術基盤として、地理情報をタグとして付加した写真群より土地の被覆の経緯を分析する方法について研究し、査読付き論文をまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「コンピテンシ知識ベース構築」(おおむね順調をいくらか上回る) 高度IT人材に求められるコンピテンシの評価基準となるルーブリック(行動キーワード集)と、それを学生の行動記録から作成する手順の第一版を完成した。そして、そのルーブリックを用いて、昨年度先行して実施した調査と同じ静岡大学情報学部の演習授業(Webシステム設計演習)における学生たちのコンピテンシの育成状況を評価した。特にグループ活動における学生の役割タイプとコンピテンシの向上の関係を分析し、役割タイプごとに強化すべきコンピテンシ項目があることの事例を示すことができた。評価対象の範囲としては、当初2つの授業を計画していたものを一つに絞ることになったが、その分精度の高い分析を実施し、ITプロフェッショナルのためのコンピテンシに関して特徴的な項目を明らかにするという研究目標に関して見通しを得た。上記の研究成果に関して、情報処理学会コンピュータと教育研究会において発表することができた。これにより、コンピテンシの育成と評価に関する他大学および企業との意見交換の準備を行うことができた。 「コンピテンシ育成マネジメント環境および利用拡大戦略」(おおむね順調) 前回の科研費研究において開発した、ITスキルに関する知識や事例とともにコンピテンシ関連情報を蓄積し学生に公開するためのWebサイトであるITPostに関する情報の拡張を行い、その結果を静岡大学情報学研究に査読付き論文として掲載した。これにより、今後本研究のコンピテンシ育成に関する成果を反映されるための情報基盤を整備することができた。そのほか、課外活動としてのビジネスコンテストを開催し、そこでの社会人と交流におけるコンピテンシ向上を観察するなど、学生のコンピテンシ育成過程について考察を行っている。 以上の2点を総合して「おおむね順調」と評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
「コンピテンシ知識ベース構築およびコンピテンシ育成マネジメント環境」 H26年度の研究において開発した、ルーブリックの第一版や実験手順に従って、H26年度と同一の授業における学生のコンピテンシ向上の評価を進める。また課外活動であるビジネスコンテストにおける学生のコンピテンシ向上の評価に対する適用を検討する。このとき、H26年度に得られた役割タイプとコンピテンシの関係に基づいて、学生の役割タイプ毎に指導を強化すべきコンピテンシ項目と強化の時期を区別し、演習のなかでの行動に対する指導には反映させるとともに、その効果の評価を行う。 高度IT人材育成向けの情報共有環境であるITPostにおいて、コンピテンシ関連情報の掲載方法および参照方法を定義する。これとともに、コンピテンシ育成に関して、社会人やOBOGによるメンタリングや意見交換を行う方法について考察する。またITスキルの教育コンテンツにおいて関連するコンピテンシ項目に言及し、スキルとコンテンツを並行して育成する方法に関して考察する。 「構築・運用手順の汎用化」 上記の方法によるコンピテンシ育成法を、静岡大学情報学部の他の授業や他大学の授業、あるいは企業教育に対して適用させるための方法論の定義とマニュアルの整備に取り掛かる。特にコンピテンシ評価のためには多くの学生レポートを収集し分析する必要があるので、それらを効率的にかつ信頼性高く実施する方法について見解をまとめる。 「利用拡大戦略」 学会での発表とともに、情報系企業や産学連携教育を推進している情報処理推進機構とのコンピテンシに関する意見交換を進めて、成果の普及に努める。
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Research Products
(5 results)