2014 Fiscal Year Research-status Report
南方熊楠研究データベースの構築とそれを利用した文理統合型研究
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26330383
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
岩崎 仁 京都工芸繊維大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (80135631)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
細矢 剛 独立行政法人国立科学博物館, その他部局等, その他 (60392536)
安田 忠典 関西大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (90388413)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 南方熊楠 / 文理統合型データベース / 近代日本 / 環境保護運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、南方熊楠の彩色菌類図譜等の植物標本など植物生態学資料と日記・書簡等の一次資料群をデータベース化し、これを研究者間で共有することで、人文科学・自然科学のそれぞれの専門家が、南方の著作・新聞切抜き等の二次資料群との関係性を詳しく検討するなどして、南方の自然保護活動、環境思想を再検証することを目的としている。 平成26年度は、1)研究期間全体にわたって関与する研究者の確保と研究体制の確立、2)変形菌・藻類標本の現状把握、3)新規に発見された菌類図譜のデジタルファイル化、4)日記、および関係する人物との往復書簡類等、一次資料のデジタルファイル化の現状調査、5)一次資料と新聞切抜き等の二次資料の関係性の考察と検証、6)デジタルファイル化されたデータのデータベースへの取り込みとインターネット公開の準備、を研究計画とした。 具体的には、2014年5月23日に関係研究者会議を京都工芸繊維大学にて開催した。出席者は、研究分担者である細矢剛氏(国立科学博物館/菌類系統分類学)、研究協力者の平川恵実子氏(四国大学非常勤講師)、萩原博光氏(国立科学博物館名誉研究員/変形菌学)、土永浩史氏(和歌山県田辺高校教諭)、土永知子氏(同県日高高校教諭)、亀田尭宙氏(国立情報学研究所特任研究員/情報学)、西尾浩樹氏(南方熊楠顕彰館)であった。 研究経過であるが、上記計画のうち、2)の変形菌・藻類標本についてはテキストファイル化が終わった採集日、採集場所等の基礎データの確認・照合を実施中、3)の新規に発見された菌類図譜のスキャニングと撮影によるデジタルファイル化は終了、4)では日記のデジタルファイル化の現状調査が終了し往復書簡については着手予定、5)については担当予定であった安田忠典氏(関西大学)が海外出張のため未了、6)については研究補助者の確保ができず未着手となっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画のうち、1)から4)についてはおおむね計画通りに進んでいると判断できる。特に、「3)新規に発見された菌類図譜のデジタルファイル化」については担当研究者の努力により予定より早く終了し、画像データ等の公開を検討している。しかし、「研究実績の概要」でも触れたが、「5)一次資料と新聞切抜き等の二次資料の関係性の考察と検証」については、担当する研究分担者が1年間の海外出張となり、内容的には海外でも可能というものの、一次資料へのアクセスが物理的に不可能となり、ほとんど実施できなかった。27年度は計画通り進行するものと考えている。また、「6)デジタルファイル化されたデータのデータベースへの取り込みとインターネット公開の準備」についても、データベース化・インターネット公開の技術的能力が十分な研究補助者を確保できなかったため、今年度はあまり進まなかった。27年度は早急に研究補助者を確保し、データベース化を進める予定である。 以上のことから、26年度の研究計画達成度はやや遅れていると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度は、遅れている「5)一次資料と新聞切抜き等の二次資料の関係性の考察と検証」について重点的に進めることとし、具体的には、日記のスキャニング未了部分を補完し、南方の菌類・変形菌研究協力者の往復書簡類のデジタルファイル化を進め、既存の新聞切抜き等の二次資料データとの関係性検討を行う。 植物生態学資料については、蘚苔類・地衣類などの標本について、カメラ撮影・スキャニングにより画像ファイル化を進め、菌類・変形菌類標本のデータと統合化を検討する。 データベース化については、デジタル化が終わったデータは既存データベースへの組込みを進め、現状のデータベースについて研究者間での共有を可能とする公開方法を決定する。 また、文理統合型データベースの例として1903年を取り上げ、この年の日記全文(デジタルファイル化済み)、土宜法龍等との往復書簡(デジタルファイル化したデータから順次)、彩色菌類図譜記載の英文全文(デジタルファイル化済み)、新聞切抜き・ネーチャーへの投稿などの二次資料(デジタルファイル化したデータから順次)を組み込んだデータベースの構築を試みる。南方は、1900年10月に米英留学から帰国し、翌1901年10月に和歌山から那智へ移動して本格的に植物調査を始めたが、1903年は、植物採集に没頭したとともに、頻繁にネーチャーへの投稿をおこない、「南方マンダラ」と呼ばれる図を用いて土宜法龍と書簡を通して宗教論争を展開している。この年は南方の思想や後の環境保護活動へと繋がる重要な節目と言える。
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Causes of Carryover |
研究分担者2名のうち1名が本研究開始時から1年間の海外出張となったため、この分の実質的な研究が進行せず、予算執行が無かったこと。また、収集整理したデジタルデータについてのデータベース化とインターネット公開についても予定していた研究補助者が本研究への参加が困難となり、代替の人員の確保ができなかった。これらの理由から人件費・謝金に予定していた予算の執行ができなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額542,160円は27年度の人件費・謝金に充当し、人員を増やす、あるいは勤務時間を予定より増加するなどの措置をとり、該当する研究計画部分の26年度分と27年度分を実施するものとする。
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