2014 Fiscal Year Research-status Report
アカデミックセカンドランゲージ学習のためのオブジェクトマッシュアップに関する研究
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26330395
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
長谷川 忍 北陸先端科学技術大学院大学, 大学院教育イニシアティブセンター, 准教授 (30345665)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 知的学習支援システム / 第二外国語学習 / 学習ストラテジ / 学習タクティクス / オブジェクトマッシュアップ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,(1)高等教育機関で学ぶ留学生に要求される母国語以外の講義・研究指導に対応する能力である「アカデミックセカンドランゲージスキル」を学習する過程をモデル化し,(2)学習者が効果的にアカデミックセカンドランゲージスキルを向上させるための能動的な方策である学習ストラテジを体系化すると共に,(3)それぞれの留学生の言語能力や学習習慣,学習状況等の特徴に応じてアカデミックセカンドランゲージスキルの向上に役立つ学習環境を提供できるシステムを開発することである. 平成26年度は,アカデミックセカンドランゲージスキルの対象として,リアルタイム性が高く,自分のペースで学習することが難しい「聴解力」に注目し,学習ストラテジを運用する際に行っている手法やプロセスである学習タクティクスについての関連研究を調査し,(a)学習の計画やモニタリング・評価などといった学習を統制するプロセスを対象とした「メタ認知ストラテジ」,(b)個々の学習課題に直接関与する「認知ストラテジ」,(c)学習者の相互コミュニケーションに関与する「社会的ストラテジ」,の3つの学習ストラテジとの対応関係を整理した. また,学習ストラテジモデルで記述された学習タクティクスの構成要素に対応する支援機能の様々な部品に当たるものを学習支援オブジェクト群と呼び,Webサービスとして実装するとともに,支援システムのフレームワークにMicrosoft ASP.NET MVCを採用し,それぞれのオブジェクトの入出力および制御形式を共通化することにより,学習者がオブジェクトを組み合わせるオブジェクトマッシュアップの機能を実現することで自身の希望に応じた学習支援環境を実現できるプロトタイプシステムを設計・開発した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の研究実施計画として,(1)学習タクティクスに基づく学習戦略のモデル化及び体系化,(2)学習支援オブジェクトの設計,を挙げていた.前者については,これまでに,「聴解力」を対象とした10種類の学習ストラテジモデルを構築し,さらに追加を検討中である.後者については,(1)の成果に基づいて,16個の支援機能の構成要素をシステム上の学習支援オブジェクト群として設計・開発を行った.さらに,Web上で公開されている学習リソースと開発した学習支援オブジェクト群をユーザーインターフェース上で組み合せることで支援機能を構成するオブジェクトマッシュアップ機能を実現した. プロトタイプシステムでは,学習者はいくつかのオブジェクトを選択し,自分なりの学習環境を構成することができる.さらに,聴解トレーニングを行いながら,システムが提示した学習ストラテジモデルを参照して,オブジェクトを選択・消去することによって,学習環境を再構成する.これを繰り返すことで,学習者が自分にあった学習環境を見つけ,適切なストラテジに従って学習できるようになることが期待される. 現在までに,6名の大学院生を対象として1週間に渡るプロトタイプの試用を行っており,本システムを利用することで,学習者が意識する学習ストラテジが増加する傾向にあることや,IELTSの聴解力テストの成績が向上する傾向にあることなど,まだ被験者数は少ないものの,提案システムの効果が期待できる状況となっており,概ね順調に進展していると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は,平成26年度のプロトタイプおよび予備実験の成果に基づいて,コミュニティ学習プラットフォームとフィードバックエージェントの実装を行う.コミュニティ学習プラットフォームとは,社会的ストラテジを実現するために学習者同士のコミュニケーションを促進するための基盤となる.社会的ストラテジはアカデミックセカンドランゲージスキルの向上を促進する重要なストラテジの一つとかんがえられるため,プロトタイプシステムで開発した主体的学習環境と統合した形で提供することを目指す. 一方,主体的学習の促進という観点からは,自分自身の学習過程に対して適応的なフィードバックを提供することが望ましい.そこで本研究においては,学習者が自身の第二外国語学習において活用するタクティクスを学習ストラテジモデルと対応付けて蓄積・分析することで,他の学習者との比較や新たなオブジェクトマッシュアップの活用を推薦するフィードバックエージェントを開発する. 平成28年度は,開発したプロトタイプシステムを研究代表者の所属機関で主に非英語圏学生の英語学習環境として継続的に運用することにより,提案機能による学習過程の変化について分析を行う.特に,同一の学習ストラテジに対して,学習者の能力や状況に応じて異なる学習タクティクスが適用できたかどうか,学習中に意識すべき学習ストラテジが学習環境に埋め込まれていることによる効果があるかとうか,メタ認知的な負荷を軽減することによる学習校ががあるかどうかについて重点的に評価したい.
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Causes of Carryover |
プロトタイプシステムの開発およびデモサーバとしてノートパソコンを活用した結果,当初の想定と比較して初年度の物品費を抑えることができたため,次年度使用額が生じることとなった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本研究を実現する上での重要なポイントの一つは,様々な学習状況を想定したオブジェクトを開発することである.そこで,当初の予定は基本的に変更せず,26年度に生じた次年度使用額を活用し,開発したオブジェクトのテストを行うための人件費・謝金として利用することを予定している.
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