2016 Fiscal Year Research-status Report
情報モラル育成を目的とした学校教育用SNSの開発とその実践的検証に関する研究
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26330399
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
豊田 充崇 和歌山大学, 教育学部, 教授 (60346327)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 情報モラル / SNS / ネットワークコミュニケーション |
Outline of Annual Research Achievements |
「学校教育現場のトラブル事例を再現したソーシャルスキルトレーニング用情報モラル指導用教材サイトの開発と検証」というタイトルで研究進めてきたが、数多くの教育現場にて収集したトラブル事例は、予想通りにSNSにおけるネットワークコミュニケーション上のトラブルが多発している実態が明らかになってきた。 そういった教育現場のトラブルを再現し、予防的な心がけを目指した教材や自己の認識を改めるための教材の開発、単発・投げ込み形式の授業で使用できる教材やワークショップ手法の開発については予定通りに進行してきたといえる。これらは、研究用サイトで教育現場にフィードバックして、校内研修はもとより実際の授業実践でも使用されているため、研究開発と同時に教育現場での実際の指導にも貢献してきたといえる。また、当初はネット上のトラブルへの対応を念頭にした研究であったが、実際の教育現場からはSNS依存症への対応についても要請が強く、いわゆる「スマホ依存」への内容も付加したり、更には保護者によるSNSトラブルに対する教材も盛り込んだのが特徴的であり、特に保護者向けの啓発教材は他の情報モラル指導用教材を提供しているサイトには無い特色になっている。 ※情報モラル指導用教材提供サイト http://www.wakayama-u.ac.jp/~toyoda/mrl/(豊田研究室) 但し、当研究の最終目標は、これまでのような画面で各種教材を提示したり、紙面で読むタイプの情報モラル授業ではなく、実際にショートメッセージをモバイル端末上で仮想的にやりとりをして、ネットワークコミュニケーションの特性を学ぶことのできるサイトであり、そのための試行バージョンを開発してきた。最終的には、短時間の授業において、SNSにおけるコミュニケーションの特性を体験的に学べるシステムを構築することを目指している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
教育現場としては、児童生徒のSNS利用に関しては完全な禁止や制限という措置を講じるという意向ではなくて、「適切な使い方の指導」をおこなう方向にシフトしてきている。しかしながら、当研究の最終目標としてきたような、実際に授業中に仮想的なSNSを体験しつつ、ネットワークコミュニケーションをおこなうといったニーズにまでは至っていない。まだスマホやSNSを利用したことのない児童・生徒においては、学校が率先してSNSを仮想体験させることに抵抗を感じる場合も多い。一方で、紙面や画面提示でSNS及びその機能や特性の解説をおこなうことに限界があるのも事実である。 そこでまずは、当研究成果によって、ワーク形式で実施する紙面上で仮想的に実施するネットワークコミュニケーション形式の交流手法を開発・実施してきた。これは現状の教育現場としては受け入れやすい状況にある。これらの成果は、先に記述した「研究実績の概要」にサイトのURL等を示しているために確認していただきたい。 但し、当研究の最終目標としては仮想体験のできるSNSをウェブサイト上に再現し、そこでの実際のメッセージのやりとりを介して、ネットワークコミュニケーションへの理解をより深く促すことにある。これについては、その試行版によって、教育現場における情報モラル指導において先導的な立場にある先生方の意見を取り入れながら、仕様を固めてきた経緯がある。この仮想体験SNSサイトの完成に至っていないため、「やや遅れている」との判断をおこなった次第である。 これまでの調査や教育現場のニーズによって、どういった指導内容・手法が必要かが明確になってきたために、(1)一般的な公立学校向けの主として紙面を用いたワーク形式の指導方法と、(2)情報化先進校向け(例えばタブレット端末ひとり一台体制の学校)の仮想SNSの完成を急ぎたい。
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Strategy for Future Research Activity |
目まぐるしく進行する児童生徒のスマートフォン利用について、当研究の開始時と状況が刻々と変化している。実態調査や啓発的な教材・ワーク手法の開発等は充分に研究成果を蓄積してきたために、最終段階である仮想体験可能なSNSサイトの最終公開版の開発と実践的検証へシフトする予定である。 現在、2種のネットワークコミュニケーション指導のための仮想SNSサイトを構築してきたが、1つは日記機能を主軸に据えてチャット機能を付加したタイプで、もう1つは完全な短文投稿形式のものである。前者はFacebookに代表される形式、後者はTwitterに近い形式であり、教育現場向けに匿名性や操作の簡便化を図っている。しかしながら、現状、前者の形式の利用率は低く、LINEに代表されるように「閉じられたネットワーク空間(知り合い同士がグループをつくる)におけるショートメッセージによる交流」が小・中学生の主流となっている。そのため、プロトタイプの後者である短文投稿形式のものへの最終的な改良・統合を進め、小学校4年から中学生を利用対象とした短時間の授業で体験可能なシステムに仕上げた上での一般公開としたいと考えている。操作に戸惑うこと無く、顔の見えないコミュニケーションにおいて、如何に相手に率直に思いを伝えることができるのか、誤解なく伝えるためにはどういった配慮が必要かなどを学べるように、直感的なインターフェイスで整えたい。 また、これまで開発してきた紙面上での仮想的なネットワークコミュニケーションとの比較における効果の検証も行ないたい。現状の情報モラル教育では、実際にネットワークに接続したりタブレットを用いることはほとんどない。しかしながら、スマートフォンを利用していない児童生徒やSNSを利用したことのない場合もあるため、体験しながら、実感を伴った理解を促せるという点でのアドバンテージを発揮させたいと考えている。
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Causes of Carryover |
平成28年4月に、本学に教職大学院が新規開設され、それに伴い、学内異動によって所属変更となった。この新規組織の立ち上げ・運用に副専攻長として携わることでエフェートが食い込み、当科研で想定した研究の進捗に遅延が生じた。また、本年度12月末に新学習指導要領の指針が文部科学省から示され、当科研の研究分野である「情報モラル」に関する記述も更新されたため、延長して、新しい指針への対応を図りたい。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の理由によって、科研研究へのエフォートが確保できず、研究の最終目的である「授業用仮想SNSの開発」が遅れ、その開発費の支出ができなかった。よって、次年度の費用の使用計画は、この仮想SNSの開発費の支出が大部分となる。その他、実践検証用の学校での消耗品やその学校への旅費等の支出を計画している。
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Remarks |
上記(1)のサイトで、科研の成果に関して公開可能な紙面教材や提示用教材を公開しています。登録者(教育関係諸機関)の申請に対してパスワードを発行しておりこれまで数百人の先生方に利用頂いています。
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Research Products
(1 results)