2015 Fiscal Year Research-status Report
既存のWebサイト・アプリのアンチ・ユビキタス化と教育利用の探究
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26330400
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Research Institution | Mukogawa Women's University |
Principal Investigator |
天野 憲樹 武庫川女子大学, 生活環境学部, 教授 (30313703)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | アンチ・ユビキタス / Web / 学習コンテンツ / LMS / eラーニング |
Outline of Annual Research Achievements |
申請時の研究計画と昨年度の研究成果を踏まえて研究を行った.以下は本年度の研究実績である. 1.教育に有用なWebサイト・アプリの調査:著名なMOOC(大規模オンライン講義)のWebサイトを始め,国内外のWebサイト・アプリの調査を行った.この調査の過程で,教育に有用なWebサイトの多くがクリックジャッキングなどのセキュリティ攻撃に対応していることも確認した. 2.アンチ・ユビキタス化を機能させる仕組みの再考:本研究のアンチ・ユビキタス化を機能させるため,当初はWebサイト・アプリのURLを隠蔽するつもりであった.しかし,これはWebのセキュリティに関する問題から困難であることが昨年度の研究より判明した.具体的には,クリックジャッキング攻撃に対応したWebサイトが問題になるため,アンチ・ユビキタス化対象のWebサイトを制限することも検討したが,それは多くの有用なWebサイトを利用不可にすることが今年度の調査(上記1)からも明らかになった.それゆえ,URLの隠蔽という仕組みに代え,指導教員などによる学習履歴の評価という運用を前提とすることに改めた.これは大きな方針転換であるが,本研究のアンチ・ユビキタス化は指定の時間と場所以外で学習できなくさせることが最終ゴールではないため,この方針転換は妥当な方策である. 3.プラットフォームの再設計とプロトタイプの実装:上記2での運用を念頭に,アンチ・ユビキタス化のためのプラットフォームを再設計し,プロトタイプの実装を行った.再設計したプラットフォームは本研究の成果の現実的な普及・展開を視野に入れたものでもあり,昨年度のようにWebサーバを必要とせず,ローカルの環境だけで動作が完結する仕様になっている.また,プロトタイプの実装においてもデータベースに代えWebストレージを利用するなどWebに関する最新技術を利用した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の主たる研究内容は当初昨年度設計したアンチ・ユビキタス化のためのプラットフォームを改善することであった.具体的には,クリックジャッキング攻撃に対応したWebサイトへの対応である.これはアンチ・ユビキタス化を機能させるための仕組みであるURLの隠蔽に起因する問題であり,かつWebのセキュリティに関する問題であったため,根本的な解決が難しかった.アンチ・ユビキタス化対象のWebサイトを制限することも検討したが,それは今年度の研究からも適切ではないことが分かった.システマティックな解決方法を最大限模索したものの,Webのセキュリティに関する問題である点が大きく,最終的には,機能的な仕組みではなく,非機能的な運用によりこの問題を回避する判断を下した.当初の計画から遅れることになったのは,これに多くの時間を要したためである. アンチ・ユビキタス化を機能させる仕組みにおいて,大きな方針転換を行った以外にも特筆すべき進展があった.今回の方針転換を念頭にアンチ・ユビキタス化のためのプラットフォームを再設計する過程において,本研究の成果の普及・展開という視点からも設計を見直した.その結果,Webサーバを必要とせず,ローカルの環境だけで動作が完結する仕様とした.これはWebサイト・アプリのアンチ・ユビキタス化とそれにもとづくアンチ・ユビキタス・ラーニングの実践に関するハードルが大きく下がったことを意味する.また,このプラットフォームのプロトタイプ実装においても,データベースに代えWebストレージを利用するなど,Webに関する最新技術を取り入れつつ,必要なソフトウェアを極力減らし,アンチ・ユビキタス化の本質とは無関係なソフトウェアの管理をなくすことに腐心した.以上のプラットフォームとそのプロトタイプ実装は今年度における大きな研究成果である.
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Strategy for Future Research Activity |
申請時の研究計画と本年度の研究により得られた知見にもとづいて研究を進める.
1.プロトタイプシステムの改善:本年度においてアンチ・ユビキタス化のためのプラットフォームを再設計し,プロトタイプシステムを作成したが,その実装は十分なものではない.とりわけGoogle ChromeとFirefoxの特定バージョンでしか動作が確認できていない状況であり,パフォーマンスにおいても改善の余地がある.このような実装上の不備は本研究の成果を普及・展開するうえで大きな障害となる.以上から,プロトタイプシステムを改善し,その完成度を高めることに注力する. 2.アンチ・ユビキタス化による学習の実質化の調査:本研究によりアンチ・ユビキタス化されたWeb サイト・アプリによる学習(アンチ・ユビキタス・ラーニング)について被験者よる評価実験を行う.具体的には,研究代表者の研究室に所属する学生,担当講義の受講生および同僚教員等に協力を依頼し,本研究で実装したプロトタイプシステムを用いて学習した場合としなかった場合で,学生の学習時間と最終成績にどの程度差が生じるか調査することを検討している.また,この評価実験で得られた知見をもとに,必要に応じてプロトタイプシステムのユーザインタフェースなどを改善する. 3.研究成果の発表:今年度はWebのセキュリティに関する問題に正面から取り組み,結果的に研究上の大きな方針転換を余儀なくされたため,研究成果の発表をするには至らなかった.次年度は最終年度として国内外の学会において本研究の成果を発表する.
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Causes of Carryover |
「現在までの達成度」に詳述したように,本年度において研究上の方針転換があり,研究成果の発表に至らなかったため,当初予定していた国内外の学会発表に要する経費が残ることとなった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は最終年度として,これまでの研究の成果発表を国内外の学会にて数回行うことを予定しており,そのための旅費等に今年度の繰越金を充てる.
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