2015 Fiscal Year Research-status Report
テキストコミュニケーションツールにおける学習意欲のデザインに関する研究
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26330405
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Research Institution | Tokyo International University |
Principal Investigator |
斐品 正照 東京国際大学, 商学部, 准教授 (30305354)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浅羽 修丈 北九州市立大学, 基盤教育センター, 准教授 (50458105)
三池 克明 佐久大学信州短期大学部, 介護福祉学科, 助教 (70316785)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ソーシャルメディア / テキストコミュニケーション / 学習意欲 / 学習者分析 / 教育工学 / 質的分析手法 / グラウンデッドセオリーアプローチ / SCAT |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、受講生と担当教員による授業における対面コミュニケーションを補完するために、授業の終了時と開始時にICTツールを用いて実施されるシャトル型テキストコミュニケーションに注目し、どのようなコミュニケーションが受講生の学習意欲を向上させたり、知識・技能の習得を促進させることができるのかを明らかにすることを目指す。しかしながら、このような効果的なコミュニケーションに関する知見は、通常は個々の教員の経験に埋もれており、特に教員にとっても無意識・潜在的であるものはそもそも共有できない。そこで本研究では、ツール上に蓄積されている多くのデータを質的・量的の両手法で多角的に分析する。 平成26年度(1年目)は、本研究で独自に開発していたツールを、研究組織を構成するメンバーが所属するそれぞれの大学の授業で使用できるように環境を整備した。また、そのツールを用いた授業も順次開始して、そのデータを収集し始めた。平成27年度(2年目)は、これまでに得られたデータを質的・量的の両手法で多角的に分析して、そこから明らかになった知見を体系的に整理することを目指した。 まずは、ツール上に蓄積された量的なデータ(メッセージの文字数、SD法による印象値等)を統計的に分析し、全体的な傾向を明らかにし始めたものの、質的なデータ(メッセージにおける話題、キーワード等)との関連も分析しなければ、コミュニケーションの事実・実態を踏まえた知見が得られないと判断したため、次に質的なデータの分析に着手した。しかしながら、教育工学等の先行研究で提案されている質的なデータの分析手法は、本研究で対象とする質的なデータにはそのままでは適用できないことが判明した。そこで、本研究用の分析手法の開発を目指して、その分析手順とそのための分析シートの検討を重ねた。平成27年度の末の時点になってようやく、それらはある程度の完成度に至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年度(2年目)は、交付申請書に記載した研究実施計画の各項目に着手したものの、教育工学等の分野で提案されている質的なデータの分析手法は、本研究で対象とする質的なデータにはそのままでは適用できないことが判明した。 そこで、本研究を構成する組織のメンバーはもちろんのこと、研究協力者(主に東北大学の三石准教授ら)からも多大な協力を得て各種検討を重ねた。さらには、学会の研究会での発表と質疑応答およびセッション後における他の研究者との議論や情報交換も経ながら、本研究用の分析手法の開発を目指して、その分析手順とそのための分析シートの検討を重ねた。 教育工学等の分野で提案されている質的なデータの分析手法としてのSCATや、社会学や看護学において質的分析手法の代表格であるGTA(グラウンデッドセオリーアプローチ)に注目して、それらをベースにした本研究用の分析手法へと改良・拡張する事を検討し始めたものの、それは容易なことではなかった。なぜならば、量的研究手法に比べて質的研究手法自体がまだ発展途上にあり、例えば同じGTAに分類される手法でも、研究者や研究目的によって異なる多くのバリエーションがあり、それらの違いを参考にしながら本研究用の分析手法へと改良・拡張する作業は複雑さを極めた。 それでも、多くの方々の専門的視点からの助言と情報提供、各種検討のためにその回数を重ねて物理的な時間を費やした結果、平成27年度の末の時点になってようやく、分析手順とそのための分析シートはある程度の完成度に至ったという認識である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度(3年目)は、平成27年度(2年目)に開発した本研究用の分析手法(分析手順とそのための分析シート)を用いながら、これまでに得られたデータを質的・量的の両手法で多角的に分析して、そこから得られた知見を体系的に整理することを目指す。 なお、平成27年度(2年目)に開発した本研究用の分析手法(分析手順とそのための分析シート)は、他の同様の質的なデータを分析する研究者や教育関係者にとっても、有効なものであることが期待されるので、学会等における発表・情報交換会、Web サイトや資料・冊子の印刷・配布等によって広く社会・国民に公開することも目指したい。 また、交付申請書に当初記載した平成28年度(3年目)の研究実施計画の項目でもある、体系的に整理した知見の妥当性や効果の検証を行うための実証実験についても、質的・量的の両手法による多角的な分析自体の進捗とその結果によっては、その一部を検証するための実証実験を計画して試みる予定である。
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Causes of Carryover |
当初は「データから知見を体系的に整理」のために、分析の補助要員としてアルバイトの費用を想定していた。しかし、本研究用の分析手法(分析手順とそのための分析シート)の開発に時間がかかってしまったことも重なり、補助要員を必要とせず、研究組織を構成するメンバーだけで作業を実施したため、人件費を支出することがなかった。また、「研究組織による研究打ち合わせ」や「学会・研究会等における成果発表」、および「高度な専門的助言等を得るための研究出張」のために想定していた旅費についても、一部は当初予定していた出張が日程等の関係で実施できなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度(3年目)の研究実施計画では主に、平成27年度(2年目)に開発した本研究の対象とする質的なデータに適用できる分析手法(分析手順とそのための分析シート)を用いながら、これまでに得られたデータを質的・量的の両手法で多角的に分析して、そこから得られた知見を体系的に整理することを目指すので、「研究組織による研究打ち合わせ」や「学会・研究会等における成果発表」、および「高度な専門的助言等を得るための研究出張」が必要となる。そのための支出に次年度使用額を充填させる予定である。
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