2014 Fiscal Year Research-status Report
リスクシミュレータによるプロジェクトマネジメント教育方法の研究
Project/Area Number |
26330408
|
Research Institution | Tokyo University of Technology |
Principal Investigator |
中村 太一 東京工科大学, コンピュータサイエンス学部, 教授 (60386761)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高嶋 章雄 湘北短期大学, 情報メディア学科, 講師 (80421999)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | システムダイナミックスモデル / リスク / プロジェクトマネジメント / ロールプレイ演習 / シミュレーション / 教育効果評価 / ルーブリック |
Outline of Annual Research Achievements |
プロジェクトマネージャーに必須である意思決定スキルの修得を目的に,学習者がソフトウェア開発プロジェクトの状態を観察し,問題を発見あるいは将来顕在化する問題を予測し,その原因を探り,問題解決の対策を立案し、実施し,実施した対策が,時間を経てプロジェクトの状態を変化させていることを知覚し,必要に応じ問題を解決する対策を繰り返すマネジメントサイクルを疑似体験するシミュレーションベースのロールプレイ演習(以下,RP 演習)システムを開発する.研究課題は,(1)様々なリスク要因とその緩和策との動的な因果関係を表すシステムダイナミックス(SD)モデルの構築、(2)プロジェクトが創出する価値とリスク要因・緩和策の関係の定式化、(3)学習者が問題を知覚し、対策を立案するために必要な情報の表示方法,、ルーブリックを含めた教育効果評価方法の妥当性を検証すること、である. 平成26年度は, 【課題1】見積り誤り,要員の要求抽出・設計スキル不足,テストケース設定スキル不足などのリスク要因の時間経過に伴う依存関係の動的変化,リスク緩和策および緩和策の副作用の依存関係を表すシステムダイナミックスモデルを構築し,【課題2】プロジェクトの生産性は,リスク要因と解決策との依存関係を表すモデルのシミュレーションで算出した実際にプロジェクトが生み出す価値と計画された価値の比をEVとして進捗を表す指標とし,【課題3】プロジェクトの進捗が分るプロジェクトパフォーマンスベースライン,ガントチャート,タスクネットワーク図,進捗管理簿を表示する機能を実装した. 上記3つの課題の解決方法を実装したシミュレーションベースのRP 演習をコンピュータサイエンス学部3年生の講義に用いた.RP演習の模範の行動を予め定義し,この行動を基にルーブリックを開発して学生が獲得できたスキルを定量的に評価して,提案方法の有効性を示した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プロジェクトには様々なリスク要因があり,それらが複雑な依存関係を形成し,それらがプロジェクトの進行と共に依存関係が変わり,更にプロジェクトの問題を解決するリスク緩和策を実施すると,その副作用がプロジェクトに表れる.この幾つもの要因が複雑に関係し,時間と共に変化する様子を表すことができるシステムダイナミックスモデルを生成するツール(STELLA)を導入したことで,リスク要因がプロジェクトの生産性に与える影響をシミュレーション結果として確認することができ,リスク要因の大きさを表すパラメータの設定値を現実世界で起こりうる状況を表現できるように繰り返し変更することができたこと,作成したプロジェクトリスク要因と対策の依存関係のモデルをソフトウェアのプログラムに容易に展開することができるようになったことが主な成功要因である.また,既にコンピュータサイエンス学部3年生のプロジェクトマネジメントの講義に適用してきた,オンライングループワーク演習システムとソフトウェアエージェントシステムを基に,今回開発したリスクシミュレーションシステムを連携させたことで,講義に適用可能な品質までシステムの完成度を高めることができた.
|
Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は,シミュレーションベースのロールプレイ演習をコンピュータサイエンス学部3年生の講義に適用するため、シナリオベースのロールプレイ演習に加え,シミュレーションベースのロールプレイ演習で使うプロジェクト計画を立案するグループワーク演習を組み込んだカリキュラムを設計した.カリキュラムは,ソフトウェアシステム開発プロジェクトの要求定義から試験までとおした,マネジメントプロセスを疑似体験するロールプレイ演習を提供することとした.シミュレーションベースのロールプレイ演習用に,要求定義,設計,および試験の3つの工程のカバーストーリを開発した.そのロールプレイ演習による教育効果を評価するために,学習者に期待する行動を定義したルーブリックスを開発した.これらを以て,講義に適用可能なシミュレーションベースのロールプレイ演習は実用レベルに達したと考える. 今後は,(1) 要求定義,設計,試験工程のリスク要因の影響の大きさを変えたカバーストーリを2つ以上作成する.(2) カバーストーリーごとにシステムダイナミックスモデルに与えるプロジェクトリスクを設計する.(3) 社会人によるロールプレイ演習を行い、カバーストーリごとに模範の行動パタンを作成する.同時にルーブリックを開発する.(4) 学部3年生プロジェクトマネジメントの講義に適用し,学習者のスキル評価をい,教育効果を定量的に示す. 【対外発表】 IEEE-TALE2015, 工学教育研究会,ProMAC2015, IEEE-EDUCON2016, プロジェクトマネジメント学会にて発表する.
|
Causes of Carryover |
リスク要因の因果関係をモデル化するシステムダイナミックスモデルを組み込んだシミュレーションベースのロールプレイ演習システムを導入したプロジェクトマネジメントの講義を優先したため,IEEE EDUCON2014の投稿を見送った.ProMAC2014への投稿を予定していたが,ICL2014と開催期間が重複したため,取り止めた.プロジェクトマネジメント学会への投稿は,データの分析の結果の考察が十分でないので取り止めた.以上により,旅費は予定より実績が下回った. シミュレーションベースのロールプレイ演習をプロジェクトマネジメントの講義に適用することを優先したため,社会人による試行実験を実施しなかったので、謝金は使わなかった.
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成26年度の講義で収集したロールプレイ演習ログデータ,要求定義工程のロールプレイ演習実験のログデータの分析をすすめ, ProMAC2015, TALE2015, EDUCON2016, 教育工学研究会APSEC2015にて発表する旅費・参加費100万円を見込む.分析のためのコンピュータ環境を更改する費用30万円を見込む. 社会人と学生によるロールプレイ演習実験の謝金として40万円を見込む.
|