2014 Fiscal Year Research-status Report
ノウハウモデルを用いた知識の共有と活用・発見・創造にもとづく研究活動支援システム
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26330415
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Research Institution | Tokyo National College of Technology |
Principal Investigator |
北越 大輔 東京工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (50378238)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ナレッジマネジメント / ベイジアンネット / ヒューマンエージェントインタラクション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,高等教育機関における研究室所属学生を対象に,研究室が所有する研究ノウハウ間の関連性を表すノウハウモデル,および,学生が研究進捗に応じて所望する情報間の関連性や,過去の問い合わせの傾向等を表現した利用者モデルの2種類を用いて,各学生の研究進捗へ寄与する効果的な情報を提示するシステムの実現を目指す.当該システムの導入によって,研究ノウハウの効率的な蓄積と共有・活用が可能となるため,各学生が研究関連情報を入手するための負担が軽減され,研究に専念できる環境が構築できる上,システムが教員に代わり事務的,基礎的な助言を実施するため,教員が各学生の研究指導に集中できる.また,利用者の関心事に対する“様々な関連情報”を提示可能なため,教員,学生による知識発見,知識創造の活性化が期待できる. 今年度はシステム構築に向けた準備として,ノウハウモデルの構成要素となるノウハウデータの収集,およびノウハウのそれぞれへ付与するタグの吟味とタグ付けの設定について検討した.その後,ノウハウモデルの試作版を構築し,モデルの妥当性について評価した.また,利用者モデルが有すべきノード設定について検討するとともに,人工データを生成して利用者モデルを構築し,得られたモデルの特徴について考察した.評価・考察の結果,ノウハウモデルは研究ノウハウ間の関係性をある程度表現可能であることが確認された一方,利用者に提示可能なノウハウを絞り込むため,タグに加えた新たなメタ情報が必要であることが明らかになった.また,利用者モデルについては,利用者のシステム利用傾向を表現可能であること,および,ノウハウモデルから提示されるノウハウ情報から適切なものを抽出するための情報を提供可能とするため,より適切なノード設計が必要であることが確認された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度,想定していた主な目標としては,(1) ノウハウの収集,(2) ノウハウモデルの構築と特性評価,(3) 利用者モデル構築のためのデータ収集,の3つであった.それぞれの達成状況について,順を追って記載する.(1) ノウハウの収集について,今年度は申請者の所属する研究室の,過去3年間のメール送受信データよりノウハウを抽出し,それぞれにタグ付けを実施した結果,約130個のノウハウを獲得した.一方,メール内には類似した内容のノウハウが複数存在し,それらの取り扱い(一つのノウハウとして保存するか,それぞれを別のものとして扱うか),および,ノウハウに付与する適切なタグの数や種類についての議論が不十分であった.また,過去のデータのみならず,現在進行中の研究活動からのノウハウ抽出が十分に実施できなかった.(2) ノウハウモデルの構築について,現在保有している(1)で収集したノウハウ間の関係性については,ある程度表現可能であることが確認できた.しかしながら,現在のタグ設定の下では,利用者の要求に対してノウハウモデルが提示するノウハウは数が多く,利用者が注目すべきノウハウを利用者自らが絞り込む必要があることが分かった.(3) 利用者モデル構築用データ収集について,現在本研究では利用者モデルとして確率モデルの一つであるベイジアンネットを採用している.今年度実施した人工データを用いたモデル構築の結果,人工データの特徴はベイジアンネットの結合構造として表現可能であり,当該構造を用いた確率推論によって,利用者のノウハウ選択傾向を予測できることが示された.ただし,実際のモデル構築用データを収集するためには,(1),および(2)で述べた各項目における課題を解決する必要がある.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度終了時点で,人工データではあるものの利用者モデルの構築は完了しており,ノウハウの妥当性についても,ノウハウモデルのみを用いた試作版システムによる提示ノウハウの評価は完了している.しかしながら,利用者モデルから得られる情報とノウハウモデルによって提示されるノウハウ情報とを組み合わせ,利用者の現在の状況に対して適切なノウハウを絞り込むための処理部分については,未だ検討中の段階である.現状を踏まえ,次年度取り組むべき主な内容として,以下の4点が挙げられる:(1) ノウハウモデルを構成する各ノウハウに付与するメタ情報の検討,(2) ノウハウモデルによるノウハウ提示機構の改良,(3) ノウハウモデルを活用した利用者のシステム利用状況データの収集,(4) (3)で得られたデータを用いた利用者モデルの構築と,その妥当性評価.各点について,以下に簡単に説明する. (1) 現在構築しているノウハウモデルは,ノウハウ間の関係性を表現可能ではあるものの,当該モデルから出力される提示ノウハウの数が多く,利用者が個々のノウハウに注目しづらい.提示ノウハウを各利用者,および利用者の状況に応じて絞り込むことができるよう,タグの改良,もしくは,さらなるメタパラメータの追加を検討する. (2) (1)で検討したタグ,ないしは追加したメタパラメータを用い,より利用者の要求に沿ったノウハウ提示が可能となるよう,提示機構を改良する. (3) 改良されたノウハウモデルを用いて一定期間,実験協力者にシステムを利用してもらい,履歴情報(利用者モデル構築用データ)を収集・蓄積する. (4) (3)で得られたデータをもとに利用者モデルを構築し,構築されたモデルの妥当性を評価することに加え,当該モデルから抽出できる情報と,ノウハウモデルとを組み合わせたノウハウ絞り込みの方法について検討する.
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