2014 Fiscal Year Research-status Report
直達太陽光励起による植物葉の蛍光スペクトル計測システムの開発
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26340003
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
栗山 健二 静岡大学, その他部局等, その他 (80555417)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 蛍光の遠隔計測システム / 酸素Aバンド / 蛍光画像計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
太陽光によって励起された植物から放出されるクロロフィル蛍光は、植物の光合成活動に直接結び付く情報を提供する。GOSATなど高分解FTIRを搭載した衛星観測により、地上植生からの蛍光が観測されている。地上計測では、UAVや圃場上空に設置したクレーンをプラットフォームとして用いた植物蛍光計測法が提案されている。レーザー励起蛍光 (Laser- Induced Fluorescence: LIF) 法 を用いて、可視レーザー光で励起した場合、主にクロロフィルの2つの光化学反応系 I,IIに関係したクロロフィルによる波長650 -770 nmの赤色~近赤外の蛍光が生じるとともに、690 nmと740 nmに蛍光のピークが見られる。太陽光での励起の場合、植物が赤外域において示す強い反射が問題となり、通常のスペクトル測定ではこの赤外反射とクロロフィル蛍光を分離して計測することは困難である。太陽光が大気中を透過するとき、酸素分子の吸収によって波長760 nm付近に強い吸収バンド (A-band) が生じるので、植物葉の反射スペクトルにおいてはこの波長域での反射光周囲の波長域と比較して大幅に減少する。したがって、分光器または狭帯域光学フィルターを用いて酸素Aバンドの波長域を観測すれば、蛍光強度スペクトルや蛍光分布画像を取得できる可能性がある。 光学望遠鏡、小型CCD分光器、および冷却CCDカメラと狭帯域フィルターを用いた植物蛍光の遠隔計測システム開発の一環として、実験室において行ったコールドミラーを用いた植物葉の蛍光計測実験を行った。同じシステムを利用して屋外の樹木において距離10 mで行った太陽光励起蛍光法(Solar Radiation Induced Fluorescence: SRIF) について測定する。分光器または狭帯域光学フィルターを用いて酸素Aバンドの波長域を観測すれば、蛍光強度スペクトルや蛍光分布画像を取得できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
① CCD分光器を用いたレーザー励起蛍光(LIF)法により、赤色 (690 nm) から近赤外(740 nm)波長でクロロフィルからの極めて強い蛍光を計測する。LIF法では背景光が存在しないためにほぼ純粋な蛍光スペクトルが観測される。これに対して、SRIF法では葉表面からの反射光も含まれており、蛍光と反射光を識別する方法が必要となる。実験室(暗室)において、690 nmより長波長域をカットするコールドミラーの反射光で励起して蛍光の測定を行った。 ② 通常のスペクトル測定ではこの赤外反射とクロロフィル蛍光を分離して計測することは困難である。太陽光が大気中を透過するとき、酸素分子の吸収によって波長760 nm付近に強い吸収バンド (酸素 A-band) が生じるので、植物葉の反射スペクトルにおいてはこの波長域での反射光周囲の波長域と比較して減少する。したがって、分光器または狭帯域光学フィルタを用いて酸素Aバンドの波長域を観測すれば、蛍光強度スペクトルや蛍光分布画像を取得できる可能性がある。 ③ 屋外(生育場所)での酸素Aバンドを利用した植物蛍光の分光画像計測として、数10 mの距離の植物葉の蛍光をリモートセンシング計測するシステムを用いて、静岡大学浜松キャンパスにおいて、屋外にあるツゲの直達太陽光励起によるスタンドオフ蛍光計測を行った。また、2014年7月29日~8月1日、京都大学大学院工学研究科の田圃において、 20~30mの距離にあるイネの直達太陽光励起による植物蛍光スペクトル計測を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
① 酸素Aバンドの暗線を利用したクロロフィル蛍光Fの計測は、蛍光のない基準表面と植生面の測定値の比較によって算出する方法(M. Meroni et. al: Remoto Sensing of Environment 113, 2037-2051,2009)が紹介されている。SRIFデータから得られた結果をもとに蛍光成分Fを求める。 ② 蛍光のない波長域と蛍光ピークの波長域を分光器または狭帯域光学フィルターを取りつけたCCDカメラにより観測を行い、その差分から蛍光強度スペクトルや蛍光分布画像を取得する。 ③ イネなどの圃場(京都大学農学研究科)や森林(森林総合研究所京都山城試験地)などでのスタンドオフ計測を計画する。
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Research Products
(9 results)