2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26340010
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
奥田 知明 慶應義塾大学, 理工学部, 講師 (30348809)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 環境分析 / 大気汚染防止・浄化 / 環境質定量化・予測 / エアロゾル / 帯電状態 |
Outline of Annual Research Achievements |
大気エアロゾルは、呼吸によって生体内に入り込み健康に悪影響を及ぼすことが知られている。エアロゾルの帯電状態については、それが粒子の生体沈着に関わるため重要であるにも関わらず、ほとんど研究が進んでいない。そこで本研究では、実環境大気中エアロゾルの帯電状態を解明することを目的として、その計測手法の開発および年間を通じたフィールド調査を行った。平成26年度は、表面電位センサ法とファラデーケージ法を並行して利用した実験において、下記に示す重要な成果が得られた。
ローボリュームエアサンプラーを用いてPM2.5をPTFEフィルター上に採取した。フィルターに捕集されたPM2.5試料は、まずファラデーケージを用いた帯電量の測定に供された。次いで、表面電位計を用いて、フィルターに捕集されたPM2.5粒子の表面電位の測定を行った。その結果、通気ブランクフィルターの帯電量はほぼ0 nC付近の値を示し、未使用フィルターの値とほぼ変わらなかった。一方で、PM2.5が捕集されたフィルターの帯電量は、明らかに通気ブランクの値とは異なり、-2.0 nC付近の値となった。従って本実験系においては、単にフィルターに通気を行うだけではフィルターは帯電せず、また、フィルターに捕集された環境大気中PM2.5の帯電量は、明確に負の値を持つことがわかった。
さらに、同一のPM2.5試料について、ファラデーケージを用いた帯電量と、表面電位センサを用いた表面電位の関係性を調べた。その結果、測定対象とした48試料のうち42試料 (87.5%) については、帯電量と表面電位の極性が一致した。また、36試料 (75.0%) については、どちらの方法で測定しても極性が負であった。従って、エアロゾルの帯電状態が、フィルターに捕集された際にも変化しないと仮定するならば、実環境大気中PM2.5は主に負に帯電していると言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、実環境大気中エアロゾルの帯電状態を解明することである。現在までのところ、吸引式ファラデーケージ法については予定していたよりも進捗が遅れている一方で、表面電位センサ法とファラデーケージ法を並行して利用した実験においては、当初の計画よりも進展している。また、Kelvin Probe Force Microscopyと走査型電子顕微鏡を組み合わせた方法についても進捗状況が良好であることから、現在までの達成度は、おおむね順調に進展している、と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで研究を進める中で、実環境大気中エアロゾルを全てフィルターで捕集してしまうと、プラス・マイナス両方に荷電したエアロゾル粒子同士が凝集し、電荷が中和されてしまう課題が明らかとなってきた。そこで今後は、一定の電圧を印加した電極板間にエアロゾル粒子を導入し、荷電粒子の電気移動度により3つの異なる配管に分岐させることで、プラス・ゼロ・マイナスという3つの荷電状態に分別して実験を行ってゆく。分岐した流路下流において、エレクトロメータで帯電量を計測するほか、粒子カウンターを用いて粒子数を計測することにより、エアロゾルの帯電状態をリアルタイムで測定する方法の開発を目指す。
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Causes of Carryover |
小額の未使用分が生じたため
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度予算と合算し研究費として使用する
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Research Products
(3 results)