2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26340013
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
中村 和樹 日本大学, 工学部, 准教授 (60435500)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
舘山 一孝 北見工業大学, 工学部, 准教授 (30374789)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | オホーツク海 / サロマ湖 / 一年氷 / 氷厚 / 誘電率 / マイクロ波 |
Outline of Annual Research Achievements |
衛星等のマイクロ波センサを用いた海氷の厚さ情報の抽出には、海氷の誘電率を正確に計測する必要があるが、サンプリングの際にブライン(鹹水)の脱落を完全には避けられず、高い精度で誘電率を算出するための障害となり得る。近年、可搬性に優れたネットワークアナライザが利用できることから、本研究では、現場観測において、海氷の誘電率を短時間で効率的に直接計測可能なシステム構築を目標としている。 この目標の実現のため、現場観測を北海道東部に位置する冬季に結氷したサロマ湖で実施した。現場観測は、2015年2月25日から3月6日にかけて実施し、衛星マイクロ波センサであるSAR観測(ALOS-2およびPi-SAR2)と同期して、海氷の誘電率を直接計測だけでなく、SARにより観測される後方散乱を議論する上で必要な現場観測データを取得した。今年度の現場観測は、非常に大きな低気圧が2度通過したこともあり、数多くのデータ取得にはならなかったが、サロマ湖において1 kmメッシュとする21箇所の測定点を設けて、各測定点において、GPS受信機による位置計測、積雪深、氷厚、海氷については海氷表面の粗度(ラフネス)および塩分と、一部測定点では気温および水温、水深を計測した。さらに、サロマ湖東岸に設定した6箇所の測定点では、海氷の上の積雪について積雪断面観測(雪質、密度、粒径、温度、含水率)を実施すると共に、積雪および氷表面の誘電率を直接計測した。 直接計測した氷表面の誘電率と氷表面の塩分の関係を導出した結果、塩分の増加に伴い誘電率が上昇する傾向が見られ、2014年2月下旬に実施した結果とほぼ同様な傾向を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の観測予定は、SARと関連する測定点を50点以上、誘電率の直接計測を実施する測定点を20点程度を設定する方針であったが、今年度の現場観測では、非常に大きな低気圧がオホーツク沿岸を2度通過したこともあり、吹雪による観測実施における安全確保の困難から、観測を実施できない日が数日続き、数多くの測定点を設けたデータ取得には至らなかった。 しかし、氷の誘電率を直接計測する上で、最低限必要な氷厚の変化に伴う現場観測データの取得(GPSによる測定点の位置計測、氷表面のラフネスおよび塩分、氷厚、積雪断面観測)を実施し、2014年2月下旬に実施した氷の誘電率を直接計測した結果と、ほぼ同様な傾向を確認することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
はじめに、数多くの測定実績のある水の誘電率と標準反射体であるアルミ板を用いて、誘電率計測システム改良のための基礎実験を学内で実施する。この実験では、計測誤差を評価しながら短時間で計測するための手法および計測システムの最適化を図るため、試行錯誤的に取り組む。構築したシステムを用いた再度の実験を通して、システムの改良へフィードバックすることにより、計測にかかる時間を短縮すると共に精度向上を図る。 つぎに、衛星マイクロ波センサデータから海氷の厚さを逆推定する際に、マイクロ波放射伝達方程式を基礎とする物理モデルへ入力する誘電率について、現場観測で取得した海氷の誘電率の値と、これまでの塩分濃度から誘電率を算出する半経験的物理モデルによる結果との違いを比較する。さらに、最終的に求められる海氷の厚さは、現場観測による海氷の厚さにより評価する。 今後2箇年の研究では、自然状態の海氷の基礎物理量(温度・塩分・ラフネス)とマイクロ波特性を計測することに焦点を絞り、基礎実験、現場観測、誘電率の計算結果と直接計測の比較解析を通して、海氷の誘電率とマイクロ波との関係を体系化することにより、これまで経験的な手法に依存していた衛星マイクロ波センサデータからの海氷の厚さ推定について不確実性を解消することを目指す。
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Research Products
(4 results)
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[Presentation] 2014年のサロマ湖氷の観測2014
Author(s)
中村和樹, 舘山一孝, 若林裕之
Organizer
雪氷研究大会(2014・八戸), 日本雪氷学会
Place of Presentation
八戸工業大学(青森県八戸市)
Year and Date
2014-09-21 – 2014-09-21
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