2015 Fiscal Year Research-status Report
レーダを用いた北極域ツンドラ湖の環境変動に関する研究
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26340014
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
若林 裕之 日本大学, 工学部, 教授 (30434070)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 合成開口レーダ / 北極域 / 環境計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
アラスカ北部バロー周辺のサーモカルスト湖(ツンドラ湖)を対象として、過去20年以上にわたり蓄積されているSARデータ(JERS-1, ERS-1/2, ENVISAT, ALOS)の調査および収集を行った。また、前年度に整備を開始したSARデータ解析設備に大量のデータを保存する装置と研究協力者が効率良く解析するための高速PCを追加した。 宇宙航空研究開発機構(JAXA)およびヨーロッパ宇宙機関(ESA)が保有しているSARアーカイブデータの調査を実施した。2000年代のENVISATデータについては、2003年から2010年までのSARデータを入手することができた。しかし、解析に使用できる連続データがない期間もあったため、その期間については他のSARデータで補充する必要がある。補充するCバンドSARデータとしてはERSが考えられ、ENVISATと同一時期に取得されたERSデータを調査した。また、LバンドのSARデータについては、1990年代のJERS-1データについて引き続き調査を実施している。 本研究では、長期間のCバンドSARデータとしてERSとENVISATデータを使用する。ERS-1/2はVV偏波でデータ取得を行っており、ENVISATはHH偏波またはVV偏波が選択できるが、ENVISATアーカイブデータで観測頻度が高いものはHH偏波であった。長期間のデータを扱うためには偏波の違いによる後方散乱係数の違いを把握しなければならないため、同一日に取得したERSデータとENVISAT のHH偏波データの比較を行った結果、低入射角においては後方散乱係数の偏波依存性が小さいことがわかった。10月から次年度5月までの連続した後方散乱係数時系列データが得られた場合、変化傾向から統計的にGrounded iceとFloating iceの面積比を算出可能であることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度に引き続きSARデータ収集および解析を行うために必要なシステムの構築として、本研究で整備するSARデータ解析システムに、過去20年以上にわたる大量のアーカイブデータを蓄積するために、大容量データストレージシステムを追加整備した。さらに、研究協力者がデータ解析を効率良く行うために、高速計算可能なPCを追加導入した。また、SARデータの詳細解析を行うために必要なソフトウェア(後方散乱係数変換および幾何補正処理)の整備を行った。以上で、本研究にてデータ収集および解析を行うためのSARデータ解析システム構築についてはほぼ終了した。 本研究に使用するアーカイブSARデータについては、JAXAおよびESAのデータベースを調査し、JERS-1、ERS-1/2、ENVISAT、PALSARデータの要求および入手を行っている。データ入手については、JERS-1およびERS-1/2の入手に時間はかかっているものの、ほぼ計画通りと考えている。 研究成果については、2015年度に国内および国外の学会にて発表済(合計5件)であり、全体としての研究達成度についてはおおむね順調と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2014および2015年度に実施したSARデータ収集および解析結果を踏まえ、データ収集未了または不十分な期間のSARデータを収集し解析を実施する。現在までの研究結果から、湖の凍結状態の把握には高い周波数帯のデータ(LバンドSARデータよりもCバンドSARデータ)の方が優れていることが判明したため、対象の衛星データとしては、ESAのERS-1/2を優先して収集し、データが見つからない期間については、RADARSATやTerraSAR-X等の有償SARデータ購入も検討する。また、2014年度以降については、Sentinel-1やALOS-2も使用可能であるため対象期間を延長を検討する。以上で入手したデータについて、前年度同様に各年のツンドラ湖の後方散乱係数時系列変化について解析を実施する。さらに、過去20年間以上の解析結果から、凍結・融解開始時期、冬期間の湖氷成長速度および凍結最終時期のFloating iceとGrounded iceの割合に関して考察を実施し、北極域の陸地における環境変化抽出を行う。 LバンドとCバンドのSARデータの解析結果から、湖の凍結状況のモニタリングにはCバンド以上の周波数を使用したSARデータが好ましいことが判明したため、今後はCバンドおよびXバンドの周波数を使用したSARデータを優先的に収集し解析を実施する。予想以上にデータが取得されていない期間があったため、そのデータ収集未了期間について、有償衛星データ等の購入も含めてデータ解析を実施する。
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Causes of Carryover |
前年度に構築が遅れていたSARデータ解析システムについては、大容量ストレージシステムの追加と並列解析が可能なPCを追加導入することによって、2015年度までに構築をほぼ終了することができた。また、研究成果発表については、5件の国内および海外発表を実施することができた。データ収集の段階で不足が判明している期間については有償データの使用を検討していたが、解析に含めるSARデータの周波数や偏波等の検討が遅れてたため、次年度に繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
長期間の無償SARアーカイブデータ(過去20年間)を入手後に、必要な期間の有償SARデータの購入を実施する。2015年度の研究発表時に同様な研究を実施しているヨーロッパやアメリカの研究者が判明したので、2016年度はそれらの研究者と情報交換を行うことによって、研究の進捗を加速させる。そのためにIEEE等の学会に参加し、情報交換および成果発表を行う予定である。 以上の研究を実施する2016年度の予算としては、有償衛星データおよびOA消耗品を購入、研究打ち合わせ、研究成果発表および情報入手のために出席する学会等にかかる旅費および学会参加費を計上する予定である。
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