2015 Fiscal Year Research-status Report
放射線及びアルデヒド化合物が誘発する致死DNA損傷の解析
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26340023
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
中野 敏彰 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (10526122)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 損傷 / 修復 / 生物影響 / ^ |
Outline of Annual Research Achievements |
放射線が誘発する致死損傷の細胞内動態解析 常酸素・低酸素腫瘍ともに,X線の照射線量(0-60 Gy)に比例してDPC量は増加した。DPC生成の線量依存直線の勾配からDPC生成効率を比較したところ,低酸素腫瘍におけるDPC生成効率は常酸素腫瘍に比べ3.8倍高かった。この傾向は,これまでに得られている酸素の影響と一致した。X線照射(40 Gy)した腫瘍におけるDPCの除去(修復)動態を,DyLight 550標識により調べた。照射した腫瘍では,常酸素・低酸素ともにDPCは時間とともに二相的に減少した。DPCの時間依存的な減少は,二重指数関数モデルでよく近似され,そのパラメータ解析から,速やかに除去されるDPC(半減期1.3h)の割合が約40%,ゆっくり除去されるDPC(半減期170h)の割合が約60%と推定された。 蛍光測定により得られたDPC量は相対値であることから,蛍光データをDyLight 550標識した標準タンパク質の蛍光で校正し,DPCの絶対量に変換した。その結果,常酸素および低酸素腫瘍におけるDPC生成量は,それぞれ0.7-1.7 DPC/10の7乗 bp/Gyおよび2.7-6.4 DPC/10の7乗 bp/Gyと見積もられた。常酸素腫瘍におけるDPC生成量は,これまでに報告されている培養細胞における放射線誘発塩基損傷およびDNA一本鎖切断の量と同程度であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、放射線照射(低酸素条件)及び変異原物質(アルデヒド)が誘発する致死損傷(DSB、 DPC、 ICL)の細胞致死に対する寄与を見積もることを目的とする。平成26年度の研究により、アルデヒドによる細胞致死には、DNA損傷に依存する機構と依存しない機構があり、さらに、DNA損傷に依存する細胞致死には、ICLが関わっていることが示された。また、平成27年度の研究により、放射線による細胞致死にはDNA損傷に依存しており、さらに、常酸素条件および低酸素条件下では生じるDNA損傷が異なり、常酸素条件ではDSBが致死にとって主要なDNA損傷となるが、低酸素条件下ではDSBに加えDPCも主要なDNA損傷であることが示された。これらのことからおおむね順調であると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
H27年度の研究により放射線照射でDPCが生じることは明らかになったが、どのようなタンパクが結合しているのか明らかにしていない。そこで、ウェスタンブロッテイング解析により、結合したタンパク質の特定を行う。
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