2014 Fiscal Year Research-status Report
銀ナノ粒子のメダカ発生毒性および自然免疫機能阻害に関する糖鎖科学研究
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26340030
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
柏田 祥策 東洋大学, 生命科学部, 教授 (20370265)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮西 伸光 東洋大学, 食環境科学部, 准教授 (80372720)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 銀ナノ粒子 / 糖鎖 / 免疫 / メダカ |
Outline of Annual Research Achievements |
大量生産品(HPV)であるナノマテリアルの生態毒性は国際的な懸案事項のひとつである。とくに高い抗菌作用をもつことから保健衛生用品として国際市場の約半数を占める銀ナノ粒子は,環境生態リスクが最も高い物質の一つとされている。 そこで本研究では,銀ナノ粒子の中で使用量が多いとされる銀ナノコロイド(silver nanocolloids: SNCs)のメダカ受精卵および孵化仔魚に対する銀ナノ粒子の発生および自然免疫に対する影響研究を行った。マイクロアレイ解析およびqRT-PCR解析から,SNCs曝露により糖鎖関連遺伝子であるβ4GalT2は発現亢進され,α-1,3-ManT, GlcAT-SおよびGlcNAc-6-Sは発現抑制されることを確認した。GlcAT-Pにおいて曝露開始4日目では発現抑制,6日目および7日目では発現亢進が見られた。これらの糖鎖関連遺伝子は,細胞膜表面の異物受容体(免疫受容体)あるいは粘膜形成(生体防御機能)などに関わっているのため,免疫システムとの関連性について検討を続ける予定である。 さらに,免疫応答関連因子であるNFκBおよびTNFαの発現に与えるSNCの曝露影響について受精卵および孵化仔魚を対象に検討した。その結果,SNC曝露の開始時期に依存したメダカ免疫応答の攪乱を確認した。胚発生初期(ステージ11および21)からSNC曝露を開始した場合,免疫応答が亢進され,胚発生後期(ステージ30および孵化仔魚)から曝露を開始した場合は抑制される傾向にあった。この結果は,SNC曝露が免疫応答のみならず免疫機能や免疫機構全体に影響を与えている可能性を強く示唆している。また,SNC曝露が正常な免疫応答を阻害することで,病原性細菌,ウイルスなどの病原体に対する耐性を低下させる可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の計画は,「形態形成および臓器機能発達に係る糖鎖関連遺伝子の発現への影響を中心に評価するとともに,成長段階と毒性ウィンドウを詳細に評価する。」ことであったが,これについては既に完了している。さらに平成27年度の計画にも既に着手している。このまま順調に進むことが十分予測される。
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Strategy for Future Research Activity |
この研究で最も時間が掛かるのが,毒性カスケード評価および生命表データ解析である。そこで新規に大学に導入された糖鎖解析専用のMALDI-TOF-MSを用いて,遺伝子発現解析を補完する糖鎖分析を行い,より精度の高い,生命表データの作成と生態リスク評価を試みる。
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Research Products
(12 results)