2014 Fiscal Year Research-status Report
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26340033
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
佐治 光 独立行政法人国立環境研究所, 生物・生態系環境研究センター, 上級主席研究員 (00178683)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | グリコール酸オキシダーゼ / オゾン / 光呼吸 / 遺伝子 / 酸化的ストレス / シロイヌナズナ |
Outline of Annual Research Achievements |
植物のオゾン耐性機構に関する情報を得るため、シロイヌナズナT-DNAタグ系統から単離したオゾン感受性系統に対し、種々の遺伝的・生理学的解析を行った。 その結果、通常の条件下では突然変異体(「gox1&2」と命名)と野生型植物との間で生育や形態に差はなかったが、0.35 mmol photons m-2 s-1の光強度下でのオゾン処理により、変異体でのみ顕著な障害(クロロシス)が現れた。T-DNAは、3番染色体上の、2つのグリコール酸オキシダーゼ(GOX)(ペルオキシソームで光呼吸に関与する酵素)遺伝子が隣接して存在する部位に挿入されていた。変異体の葉におけるこれらの遺伝子の発現とGOX活性は、それぞれ検出限界以下及び野生型の約60%にまで低下していた。GOX遺伝子族ノックアウトラインの葉のGOX活性とオゾン感受性の間には負の相関が観察された。変異体の光合成電子伝達系は強光下で幾分阻害され、オゾン存在下でさらに悪化した。変異体は、二酸化硫黄や長期間の強光に対しても感受性を示したが、気孔の大きさ、密度、開度等は野生型と同様であった。 本変異体とこれまでに明らかにされた種々のオゾン感受性系統を高濃度の二酸化炭素とオゾンで同時に処理したところ、本変異体を含むいくつかの系統において、オゾンによる障害が軽減されることがわかった。 以上の結果から、GOXがオゾンやその他の光酸素ストレス防御に関与することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載の「研究の目的」を達成するために、平成26年度に行う予定だった研究実施計画の内容をほぼ実施し、興味深い結果を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度に得られた結果を基にして、変異体のオゾン感受性と光呼吸の関係をさらに調べるとともに、他の光呼吸系欠損株のオゾン感じ性を調べることにより、オゾン感受性形質と光呼吸の全体的フローとの関係を明らかにする。 変異体及び野生型植物をオゾン処理し、細胞内の過酸化水素濃度等のレドックス状態や各種シグナルの活性(マーカー遺伝子の発現等)について、オゾン処理後継時的に測定し、変異体と野生型植物の間で比較する。 本変異体とサリチル酸、エチレン等のストレスシグナルの変異体を交配して二重変異体を作成し、それらの植物のオゾン感受性を調べ、オゾン障害における光呼吸とこれらのシグナルとの関係についてさらに知見を得る。オゾン感受性との関係を明らかにする。 また、オゾン感受性の異なるシロイヌナズナの野生系統群について、対象とする酵素や光呼吸活性を測定し、それらの値とオゾン感受性との相関を調べることにより、対象とする酵素や光呼吸活性の、オゾン感受性への寄与度を明らかにする。
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Causes of Carryover |
平成26年度に予定していた実施計画の一部(突然変異体の光呼吸系の性状調査等)が遂行できなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記未実施計画を遂行するための消耗品費等に使用する。
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