2014 Fiscal Year Research-status Report
農薬分解産物ニトロフェノールの副腎・生殖毒性と乳癌活性化機構に関する研究
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26340037
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
渡辺 元 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (90158626)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ニトロフェノール / 性分化 / 子宮 / 卵巣 / 性中枢 / 肝 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.哺乳動物の生殖機能に対する影響 ヒトでは胎児期に起こる中枢の性分化が、ラットでは出生前後に見られることを利用し、出生直後24時間以内のの雌ラットに単回投与実験を行った。ディーゼル排気ガス中に存在し、エストロジェン作用を示すことが明らかになっているパラニトロフェノール(PNP)を10mg/kg皮下投与し、その影響を生殖器および中枢において解析した。 その結果、PNP投与群で膣開口が遅れる傾向が認められた。また、性成熟前の30日齢で子宮重量が対照群より少ない傾向が見られたが、性成熟後は差が見られなかった。卵巣におけるステロイド合成酵素のmRNA発現量が7日齢で減少していたが、14日齢ではむしろ増加していた。PNP投与により初期には卵巣のエストロジェン生成が低下していると推察された。脳の弓状核におけるkiss1は増加し、背内側核におけるGnIHの遺伝子発現は増加していた。 ディーゼル排ガス中に含まれるニトロフェノールの1つであるPNPは、卵巣に対しては抑制的に作用し、性中枢に対しては促進的に作用していることが示唆された。 2.鳥類の肝機能及び副腎機能に対する影響 鳥類は哺乳類にくらべ化学物質に対して敏感であり、また、鳥類は生態系の食物連鎖の上位に位置することが多く、環境の化学物質汚染の指標生物となることが期待される。ウズラを用いてPNPを長期経口投与したところ、肝に部分的に壊死とリンパ球の浸潤があり、肝臓のcytochrome P450 (CYP1A4, 1A5, 1B1)とheme oxygenase (HO-1)、aryl hydrocarbon receptor 1 (AhR1)の遺伝子発現を調べたところ、いずれのmRNA発現量も増加していた。また、血中コルチコステロン濃度の上昇が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理由 当初の計画では種々のホルモン濃度を指標に、PNPの性腺及び副腎機能に対する影響を種々の生理的条件下で解析する予定であったが、施設や試薬の問題から計画を変更し、遺伝子の発現と形態学的観察で行える実験を行った。ウズラを用いる実験も加えて、成果が得られるようにし、現在論文にして投稿して査読を受けている。 ホルモンの測定については、施設の改修が終了し、新たな測定用アイソトープ標識試薬の検討もほぼ終了している。 胚発生や着床に対する影響に関する研究についても開始しており、速やかに成果が出せる状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策 ラットを用いたin vivoの実験について、主に妊娠期と次世代に対する影響について検討する。合わせて初代培養系を用いて、下垂体細胞、性腺細胞、副腎細胞へのPNPの直接作用について解析を行う予定である。
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Causes of Carryover |
ホルモンの測定に用いるアイソトープを使用する施設の耐震改修工事が行われたため、ホルモンの測定に支障があった。また、従来使用していたアイソトープ標識試薬の購入が出来なくなり、測定方法を再検討する必要が有った。これらの理由でホルモンの測定を次年度に持ち越さなくてはいけなくなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の計画どおりアイソトープなどのホルモンの測定用試薬と、測定に使用する器具などの消耗品の購入に使用する。
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