2014 Fiscal Year Research-status Report
細胞内亜鉛イオンによる化学物質の細胞毒性の増強・抑制メカニズム解析
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26340039
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
小山 保夫 徳島大学, 大学院ソシオ・アーツ・アンド・サイエンス研究部, 教授 (80214229)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 亜鉛 / カルシウム / 抗菌剤 / 防汚剤 / 細胞毒性 / 環境影響評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.化学物質の細胞毒性の亜鉛イオン(Zn2+)関連性について カルシウムイオノフォアA23187は細胞外カルシウムイオン(Ca2+)存在下で細胞生存率の低下を起こした。この際、3-30μMのZn2+が共存した条件では生存率の著明な低下を起こした。A23187はCa2+もZn2+も細胞膜透過性を亢進することから、細胞内Zn2+濃度の上昇はCa2+依存性細胞死を促進させるか、細胞内Zn2+濃度上昇それ自体が細胞死を促進することが考えられた。細胞内Zn2+濃度を上昇させる化学物質を実験的に検索したところ、抗菌剤や防汚剤にそのような作用を有する化合物が見出された。特に、2-n-octyl-4-isothiazolin-3-one(OIT、抗菌剤)は温度感受性膜Zn2+透過性亢進(双方向性)を起こした。これに近い化学構造の4,5-dichloro-2-ocytl-4-isothiazolin-3-one(DCOIT、防汚剤)では細胞内Zn2+濃度上昇を起こすが、メカニズムはOITよりもDCOITの方が複雑であった。この他にも脂溶性Zn2+キレート剤の細胞毒性もZn2+との関連性が示唆された。 2.化学物質による細胞内Zn2+濃度上昇に伴う細胞内チオール量変化 1,4-ナフトキノン(NP)は細胞毒性発現機序として酸化的ストレスの関与が示唆される。しかし、低濃度(0.3μM)では細胞内チオール量を増加させた。この増加は細胞内Zn2+をキレートすると抑制された。この濃度のNPは細胞内Zn2+濃度を上昇させた。高濃度(1-3μM)のNPは細胞内チオール量減少と細胞内Zn2+濃度上昇を起こした。酸化的ストレスはチオールをジスルフィドにして細胞内Zn2+遊離を起こす、細胞内Zn2+濃度上昇はチオール量上昇を起こす、これらの二つの現象のバランスが酸化ストレス下の細胞内チオール量を説明していると推定される。 これらの実績の大半は論文として国際学術誌に公開している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書には26-27年と年度が重なる実験項目があり、研究計画がやや前後している。この為に論文として発表しやすい項目が優先的になり、Ca2+とZn2+の組み合わせによる細胞死実験が遅れ気味となっている。しかし、実験方法を変更し、実験結果の精密さは落ちるが実験速度(データ取得速度)は今後は10倍以上になる予定である。条件設定は終了しており、一部の結果は研究実績の概要に記載している。今後の進展には何ら問題はなく、27年度は計画以上の進展が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)細胞死に於けるZn2+の優位性(Ca2+との比較) Ca2+とZn2+の濃度的な組み合わせは無限である。よって、申請書に記載した実験手法(蛍光強度の測定)では時間が要し、研究の大幅な進展が望めない。そこで、WST-8法(吸光度の測定)に変更し、精密さが落ちるが10-50倍の速度でデータ取得が可能になった。この変更により、申請計画より格段に幅広い濃度範囲で実験を行い、細胞死に於けるZn2+の優位性を証明する。 (2)化学物質による細胞内Zn2+濃度変化の多様性と細胞毒性への関連性 これは抗菌剤、防汚剤のように明らかに細胞毒性が想定される化学物質から、医薬品や生体内物質(現在は長鎖不飽和脂肪酸)に実験対象を広げていき、細胞毒性とZn2+の関連性を明らかにしていく。 (3)化学物質細胞毒性に関係するZn2+依存性ファクター(活性酸素種、Zn2+関連酵素、Zn2+トランスポーター、細胞内小器官等)の検索 まず、細胞膜Zn2+経路を特定し、それから細胞内のファクターの検索に進む予定である。
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Causes of Carryover |
(1)物品費について:前年度に購入した試薬を用いた為に実験経費の節約が可能となった。さらに、高額試薬である蛍光プローブを用いる実験をサンプル量を半分で行ったことも使用額を下げた。申請計画の研究の遂行状況は問題ない。(2)旅費について:教員一人の研究であり、実験・動物飼育の日程と関連する学会の日程が十分に調整できなかったので科研費からの支出を避けた為である。(3)人件費・謝金について:研究関連の仕事を依頼した大学院生が優秀だった為に予定した時間より短い時間で作業を完了したことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
(1)物品費について:27年度の実験計画にも前述したように、実験方法の変更(追加)をする為に新規の試薬・消耗品などが必要になり、それらの購入を予定している。(2)旅費について:27年度は研究関連の仕事を依頼する大学院生を二名に増やして日程調整を容易にし、前期に一回、後期に二回、学会報告を行う予定である。(3)人件費・謝金について:前述したように実験日程を調整できるように研究協力者を二名増やして、研究の進展を速める。(4)その他:英文校正のグレードを上げて、論文の受理が多くなるようにする。
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Research Products
(4 results)