2016 Fiscal Year Research-status Report
細胞内亜鉛イオンによる化学物質の細胞毒性の増強・抑制メカニズム解析
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26340039
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
小山 保夫 徳島大学, 大学院生物資源産業学研究部, 教授 (80214229)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 亜鉛イオン / 細胞毒性 |
Outline of Annual Research Achievements |
亜鉛については生理学的・病理学的・栄養学的研究が主流で、化学物資の細胞毒性に於ける亜鉛イオンの役割を明らかにしている研究は殆ど無い。本研究では分類の異なる化学物質(例えば、不飽和脂肪酸など)でも細胞毒性に亜鉛イオンが関係していることを明らかにして、亜鉛イオン関与の普遍性を主張する。 実験では、ラット胸腺細胞(細胞浮遊液)にフローサイトメーターを適用し、各種の蛍光色素を用いて細胞膜・細胞内イオン/物質動態を測定し、それらに対する化学物質の影響と細胞死の関連性を調べ、亜鉛イオンの役割を推定した。 1.不飽和脂肪酸であるアラキドン酸の細胞毒性に対する亜鉛イオンの関与(発表済):(1)亜鉛イオンの添加はアラキドン酸の細胞毒性を増強した。(2)細胞内亜鉛イオンキレート剤はアラキドン酸の細胞毒性を減弱させた。(3)アラキドン酸自体が細胞内亜鉛イオン濃度を上昇させた。(4)アラキドン酸と亜鉛はサプリメントとして使用されており、アラキドン酸と亜鉛の併用には有害性が考えられた。2.カチオン型殺菌剤ベンザルコニウムの細胞毒性への亜鉛イオンの関与(発表済):(1)ベンザルコニウム自体が細胞内亜鉛イオン濃度を上昇させた。(2)その細胞毒性は亜鉛イオンキレート剤で減弱し、亜鉛イオン添加で増強した。(3)ベンザルコニウムと亜鉛の併用ではアポトーシスが進行した。3.カルバメート系農薬であるジラムの細胞細胞毒性の決定因子としての亜鉛イオン:改訂論文が受理されている(平成29年4月20日現在)。 これらの結果から、亜鉛イオンが分類が異なる化学物質の細胞毒性でも共通に関与していることが明らかになってきている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究開始から3年で13編の原著論文が国際誌に掲載されており、2016年度(平成28年度)も原著論文は4編である。化学物質の細胞毒性への亜鉛イオンの関与を裏付ける実験成績を積み重ねており、当初の予想の範囲の結果で研究は進んでいる。しかし、メカニズム解析では「細胞内亜鉛イオン濃度の過剰な上昇による酸化ストレスの亢進」しか明らかでなく、この面は不満が残る。
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Strategy for Future Research Activity |
亜鉛イオンの細胞毒性増強作用については多くの化学物質で共通と考えられる。これまで、細胞内カルシウムイオン濃度の上昇(それに続く酸化ストレスの亢進)が化学物質細胞毒性メカニズムの主流であった。しかし、亜鉛イオンも同等の毒性科学的意義を有している。今後は、(1)細胞内亜鉛イオン動態変化と細胞内小器官あるいは細胞内物質動態(非タンパクチオール、活性酸素種等)との関連性等を明らかにして、化学物質細胞毒性への亜鉛イオン関与のメカニズム全体像を明らかにしていく。また、(2)重要なポイントである他の細胞標本でも同様な亜鉛イオン依存性の細胞毒性が観察されるか、普遍性についての検討をさらに深めていく。
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Causes of Carryover |
以下の理由から、次年度使用額が発生した。 (1)高額な蛍光プローブを用いる実験について、経費節約の為にサンプル量を2mLから1mL以下にして実験を行った為に試薬経費(物品費)が当初の予定額の半分以下になったことが最大の理由である。また、(2)実験が予定通りに進み、余分な支出が避けられたことも大きい。さらに、(3)教員一人の研究であり、実験動物飼育管理等で学会参加が出来なく、旅費が支出が予定額よりも少なくなった。これらが積み重なり、次年度使用額が発生した。研究成果は論文4編を国際学術誌に報告しており、実験の遅れ等から発生したものでない。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
29年度は以下のように次年度使用額859,331円を以下のように支出する。 (1)28年度は動物飼育管理等で学会参加が出来なかったことから、研究実験補助の謝金として360,000円(月額36,000円 X 10ヶ月)を使用を見込んでいる。(2)予定している論文報告が7編以上有り、これらの原稿の英文校正経費(1回再改訂料金込み)として350,000円(1編50,000円 X 7編)の使用を予定している。(3)残りの149,331円は物品費として使用する。
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Research Products
(4 results)