2015 Fiscal Year Research-status Report
炎症性及び遺伝毒性を指標とした越境輸送物質を含むPM2.5複合曝露の健康影響評価
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26340053
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
石原 陽子 久留米大学, 医学部, 教授 (50203021)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山内 圭子 久留米大学, 医学部, 助教 (50304514)
中尾 元幸 久留米大学, 医学部, 講師 (60610566)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 大気中粒子状物質 / 健康影響評価 / 炎症 / 遺伝毒性 / 越境輸送物質 / PM2.5 / 複合暴露 / 呼吸器疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
粒子成分発生源の検討:データの精査、再捕集と新規委託先で成分分析を行い、発生源推定(PMF法)を行った。ウランバートルのPM2.5は、その半分が二次生成粒子及び石炭燃焼由来で、冬期から春期で寄与率が高かった。大連は、二次生成粒子及び石炭燃焼由来成分が冬期に高いが、人口・経済規模が大きく、工業が複雑化していること、地形的要因も加わり冬期を除いて発生源は不明瞭であった。久留米は、測定下限値未満のデータが多く、捕集地に明確な発生源が存在しないことで、信頼性の高い発生源推定はできなかった。大気成分と死因別死亡率の関係:ウランバートルのゲルと市街地住民や病院患者対象調査では、気管支喘息患者で2月に呼吸器症状や健康度が増悪し、7月に改善した。モンゴルの死因別死亡率は心疾患>肝疾患>呼吸器疾患で、心肺疾患に二次生成物と石炭燃焼成分の関与が推測された。北京の病院呼吸器疾患患者では、PM2.5と健康度および呼吸器症状に有意な関連が見られた。中国の死因別死亡率は、心疾患>肺癌>COPDであり、大気粒子が心肺疾患の増悪因子であることが推定された。日本のCOPD、気管支喘息の県別死亡率(10万対、2014年)は、西高東低を示す。熊本、長崎、山口、新潟の呼吸器疾患患者と健診受診者の調査研究では、PM2.5日平均値基準超過率の上昇で健康度及び呼吸器症状が増悪したが、山口の呼吸器疾患患者では健康度や呼吸器症状が増悪したにもかかわらず、喘鳴やアレルギー症状は改善した。呼吸器専門医による症状コントロールや予防対策の意識が影響していることが考えられた。大気粒子成分の毒性リスク:ハムスター肺由来線維芽細胞とヒトリンパ球で小核試験を検討した。肺線維芽細胞の小核試験は実験系として確立したが、PM2.5抽出物では小核の増加は見られず、さらに本細胞での実験条件の最適化とヒトリンパ球での実験系を検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ウランバートル、大連、久留米の3地域の大気粒子状物質の成分分析は一部未分析試料はあるが、概ね終了している。国外および国内施設での健康調査も概ね終了し、現在データの集約と解析を継続中である。粒子複合暴露に関する毒性リスクについては、現時点では水溶性成分による小核試験での陽性結果は得られていない。さらに実験系や細胞系について検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
大気中粒子状物質の発生源推定については、より信頼性が高い推定をこなうために、再捕集した試料の分析や他の発生源推定ソフトの適用を検討する。成分と健康影響との関係については、さらに解析を行い、どのような成分が健康影響と関連性が高いのか明確にする。既に捕集済みの大気中粒子状物質の遺伝毒性を信頼性高く感度よく評価するための適切な実験系の確立を目指す。
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Causes of Carryover |
2014年度に支出した成分分析委託先の不正が2015年度に発覚して、2015年度に返金され、新規の分析委託業者に一部試料の分析を委託した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
未分析試料の分析に使用予定。
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Research Products
(8 results)