2015 Fiscal Year Research-status Report
活性炭上でのイオン性水質汚染物質の吸着除去サイトの創製
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26340058
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
町田 基 千葉大学, 総合安全衛生管理機構, 教授 (30344964)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 活性炭 / 表面 / 陽イオン / 陰イオン / 重金属 / 硝酸イオン / リン酸イオン / 吸着除去 |
Outline of Annual Research Achievements |
先ず背景として,水処理に使用される活性炭は,その表面が疎水性であり,その表面はできる限り酸素,窒素,硫黄などのヘテロ元素のない4級炭素が集合したグラファイト面からなることが望ましい。このような表面状態は水中のフェノールなどの有機汚染物質に除去には有効であるが,重金属イオンや硝酸イオン,リン酸イオンといった電荷をもった物質にはあまり効果を発揮しない。イオン性の水質汚染物質はイオン交換樹脂で除去することが一般的である。 本研究では,これまでイオン性物質には不向きとされてきた活性炭に酸素,窒素,硫黄などのヘテロ元素を導入し,重金属イオン(ニッケルやカドミウムの陽イオン)あるいは硝酸イオンやリン酸イオンといった陰イオンの吸着に適した炭素表面をデザインすることを目的としている。重金属などの陽イオンに対しては,昨年度にはカルボキシ基などの酸素官能基を多く導入してイオン交換樹脂以上の性能の活性炭の調製ができたので,今年度は硫黄含有の炭素原料を酸化することによってスルホ基を導入することを試みた。その結果,8%の硫黄を含有する炭素を水酸化カリウムにより賦活した後,酸化処理をすることによりカルボキシ基に加えてスルホ基の導入に成功した。スルホ基導入活性炭はカルボキシ基導入炭よりも多くの金属陽イオンを吸着し,水溶液のpHが3以上ではカルボキシ基やスルホ基を主要官能基にもつイオン交換樹脂よりも高い吸着容量を示した。 硝酸イオンやリン酸イオンなどの陰イオンに対しては,さまざまな方法で炭素表面に4級窒素を導入して炭素表面を正に帯電させることにより吸着容量の向上を試みた。その結果,硝酸イオンについてはいくつかの炭素原料を数通りの方法で酸化やアンモニア処理,あるいはメチル化処理をすることにより一部の窒素が4級化したと考えられ,吸着性能が確実に向上することが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
金属陽イオンの吸着に関しては比較的吸着が困難なニッケルイオンを用いて,硫黄含有酸化活性炭を調製した結果,これまで通常の活性炭では 2.0 mmol/g 程度の吸着容量であったものが,3.5 mmol/g に達し,溶液pHを変化させた場合にも pH 1.0 の強酸性溶液では殆ど吸着しなかったものが,硫黄含有酸化活性炭では吸着が観測された。XPSによる表面分析の結果からも硫黄(S 1s)の6価の存在を検出したことからもカルボキシ基よりも強い吸着をするスルホ基が一部生成していることが示唆された。また,酸化前の活性炭の比表面積と酸化活性炭のニッケルイオン吸着量の相関性を調べたところ,比表面積が通常の活性炭の比表面積である1000 m2/g 程度で吸着量が最大に達し,それ以上比表面積が増加しても吸着量は一定であることが確かめられた。 また,硝酸イオンやリン酸イオンなどの陰イオンの吸着では,メラミン樹脂やポリアクリロニトリル繊維など窒素を含んだ素材から炭素を調製した。さらに活性炭を酸化してからアンモニア処理することにより窒素を導入した。また,表面窒素原子を強制的に4級化するためにヨウ化メチルを用いて窒素のメチル化を試みた。これらの検討の結果,硝酸イオンの吸着量を 0.6 mmol/g 程度まで増やすことができ,リン酸イオンの吸着量は 0.3 mmol/g 程度まで達した。これらの吸着容量は炭素材料の吸着量としては報告されている文献値と比較しても最大値に近いところにある。これら吸着量の向上は各種の賦活および表面処理操作により炭素表面に一定割合以上の4級窒素(常に正電荷をもった窒素原子)の導入ができたためであると推定した。
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Strategy for Future Research Activity |
重金属などの陽イオンの吸着除去については,活性炭あるいは活性炭素繊維に酸性官能基を導入することによって十分な吸着性能が得られている。これまで得られた吸着容量は他の吸着剤と比較しても最高性能を示していると思われる。しかしながら,炭素に導入される酸素が30~40%にも達するため活性炭を構成するグラファイト骨格の破壊が進み,機械的強度が極端に低下し直ぐに粉化してしまったり,吸着剤が塩基性溶液中で加水分解して溶解してしまったりするという大きな弱点がある。このため現時点では中性~酸性領域でのみ使用可能であるので,全ての pH 範囲で使用できるように炭素表面にカルボキシ基を選択的に導入する方法を探っていく。具体的には低温での長時間酸化や酸化剤の絶対量は変えずに酸化剤を低濃度にして低温酸化をするなど,さまざまな処理方法を試みる。さらにこれまでは二価の陽イオンに限って検討してきたが,一価の陽イオンとしてセシウムイオンの吸着に対する酸化活性炭の吸着性能についても評価をする。 硝酸イオン,リン酸イオンなどの陰イオンの吸着除去に対しては,さまざまな手法で4級窒素の導入を試みている。現在進行中の処理方法については前処理条件や処理温度プロファイルなどを変えることによって最適化を図ると同時に,これまでの実験結果の解析および関連文献の検索などをさらに進め,実際に活性炭や活性炭素繊維に適用することによってより効果的な4級窒素の導入方法を検討していく予定である。また,これまでの研究結果から吸着を阻害するサイトの存在も示唆されるので,そのようなサイト(官能基)についてもその除去方法を検討する。 最終年度であるので上記の陽イオンおよび陰イオンの吸着結果をまとめ,市販のイオン交換樹脂との性能比較をしながら学術誌などに研究成果を投稿していく。
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Research Products
(8 results)