2014 Fiscal Year Research-status Report
共生クロレラを持つ原生動物による土壌結合元素の取り込み機構
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26340072
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
洲崎 敏伸 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (00187692)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉村 知里 神戸大学, 学内共同利用施設等, 助教 (60362761)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | セシウム除染 / 原生生物 / 細胞内共生 / 油滴 / EDS |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、共生クロレラを持つ原生動物が、土壌結合性セシウムを土壌から解離させ、細胞内に高濃度に蓄積することを見出した。この方法は、福島県における放射性セシウムによる汚染土壌の処理に有効であると考えられるが、なぜこれらの原生動物がセシウムを蓄積するのかという生物学的な機構はわかっていない。さらに、ミドリゾウリムシは、セシウムなどの様々な重金属イオンを蓄積することも知られている。そこで本研究では、共生クロレラを持つ原生動物が蓄積する元素の種類、元素の蓄積に関わる共生クロレラの関与、蓄積の機構とその生物学的意義、について解析し、本技術の生物学的基盤を確立することを目的とした。平成26年度は、セシウムがミドリゾウリムシの細胞内のどの部位に蓄積するのかを、STEM透過型電子顕微鏡を用いたEDS元素分析法を用いて検討した。その結果、当初の予想に反し、セシウムは共生クロレラにはほとんど検出されず、細胞内に存在する油滴顆粒(lipid droplets)に蓄積されていることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
26年度の研究で見出された、油滴顆粒がセシウムを蓄積するという結果は、これまで不明だったミドリゾウリムシの細胞内の油滴顆粒の機能を示唆する結果として重要な成果であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画は、共生クロレラにセシウムが蓄積されていることを想定して策定された。しかし、26年度の研究により、油滴顆粒にセシウム蓄積が認められたことを受けて、今後の研究では油滴顆粒の機能についても検討を進めていく。そのため、今後の具体的な研究計画としては、以下の2点を重点的に行い、セシウム蓄積の機構解明を目指す。1)セシウム蓄積の経路の解明:高いセシウム蓄積は、共生クロレラを有するミドリゾウリムシにのみ認められる現象で、クロレラを欠く系統ではセシウムは蓄積されない。従って、セシウムの蓄積にクロレラがどのように関わっているのかが重要な問題である。そこで、セシウムを結合させたカオリン粒子(擬似的土壌顆粒)を捕食させた後に経時的に細胞を固定し、EDS法による元素マッピングを行い、セシウムの細胞内での移動経路を探る。過去の研究により食胞と共生クロレラを結ぶ膜系の存在が示されており、セシウムはいったんこの経路を通ってクロレラに運ばれた後に油滴顆粒に移行するという可能性があるので、この仮説を検証する。2)油滴顆粒におけるセシウムの蓄積機構を検討する。具体的には、油滴を単離し、そこに含まれるタンパク質についてプロテオーム解析を行うことで、セシウム蓄積の分子機構に迫りたい。プロテオーム解析に関しては、既に作成済みのmRNA-Seqによる発現タンパク質の配列データベースを利用する。
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