2014 Fiscal Year Research-status Report
未利用ゴム資源の活用をめざした植物培養細胞中での高機能ゴム分子生産
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26340074
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
大谷 典正 山形大学, 理学部, 准教授 (40302286)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | バイオマス / 未利用植物資源 / 天然ゴム / カルス |
Outline of Annual Research Achievements |
持続可能社会の構築に向け,原料から廃棄に至る製造プロセス全体の環境負荷を最小にするためにバイオマスとバイオプロセスを利用した雑草が生産する未利用ゴム資源の工業利用に向けた高機能化,及び効率的生産系の構築を最終目標としている。未利用の天然ゴム資源であるセイタカアワダチソウ培養細胞の培養条件として植物成長ホルモンを含むMS固体培地でセイタカアワダチソウのカルス化条件を直交実験により種々検討し、安定的に分子量20万以上の高分子量体生産能を有するカルス細胞を獲得できた。また、雑草由来の天然ゴムが実用に適しない理由としてゴム分子量が数万程度と、ゴムノキ由来のものと比較してはるかに小さいことがあげられる。パラゴムノキにおいて、成木のラテックスは分子量100万以上のゴムを含有するのに対し、幼木ラテックスおよび葉は10万程度の低分子ゴムを合成することが知られており、樹齢や組織において異なる分子鎖伸長機構が存在すると考えられている。本研究で獲得したセイタカアワダチソウカルスは、野生の植物体と比較して5倍以上の高分子量体ゴムを合成できることから、ゴム分子重合に関与する酵素群の機能解析を行った。現在までに、モノマー合成系及び重合酵素系酵素のクローニングをすすめ5種類の酵素の触媒活性機構を解析中である。一方、これらの酵素群のカルスへの遺伝子導入については、遺伝子高発現用のベクターに導入し、形質転換されたアグロバクテリウムで感染させたカルスの生存条件を検討し、カルスからDNAを抽出してPCRを行ったところ目的遺伝子の導入が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カルス中での高分子ゴムを生産する培養条件確立実験については、ほぼ計画通りに進行すると共に周辺技術の獲得にも成功している。植物は,必要量の窒素,リン酸,カリウムなどの無機栄養素があると,二酸化炭素を取り込んで光合成を行い増殖するが,培養条件や各種ストレスにより通常よりも多くのゴムを蓄積することを見出してきた。これらの発明技術を土台として,植物成長ホルモンを含むMS固体培地でセイタカアワダチソウのカルス化条件を直交実験により検討したところ,最適ホルモンバランス,無機塩濃度,および,エリシター添加条件を見出した。また、これら培養細胞中におけるゴムの簡易確認方法について検討し、ラジオアイソトープを利用した小スケールでのゴム生合成能を観測できることやゴム分子を特異的に染色することで蛍光顕微鏡での簡易観測法も確立した。 カルスへのモノマー合成関連遺伝子導入,及び開始基質合成酵素の抑制による生産量増加を目的とした実験研究では、ほぼ予定通りに計画が進んでいる。カルスホモジネートを用いたin vitro実験で、モノマー添加量を増加させることで、生成されるゴム分子分子量が増大することが確認できている。ゴム生合成のモノマーであるIPP合成関連酵素系の発現量を増やすために関連酵素遺伝子をバイナリーベクターに導入して,アグロバクテリウムへ形質転換を行った。セイタカアワダチソウ由来カルス細胞へ感染させ、培養細胞中への遺伝子導入を行ない、リアルタイムPCRにて確認し、ウェスタンブロットによりタンパクのレベルでの過剰発現も確認出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
ゴム生合成機構を解明するため、遺伝的なアプローチが活発となっており、イソペンテニル二リン酸(IPP; C5)をファルネシル二リン酸(FPP; C15)へcis型に縮合させるcis-prenyltransferase(CPT)が必須な酵素であることが示された。しかしながら、CPT単独でのゴム合成活性は報告されておらず、CPTのゴム分子鎖長制御機構はわかっていない。そこで、遺伝的操作が比較的容易であるカルスをモデル生物とし、CPTがゴム生合成に及ぼす影響を明らかにし、高分子ゴムを合成するカルスを作成することを目指し主として次の方策を推進していく。 天然ゴムのモノマー重合酵素に関する分子レベルでの知見はない。一方,CPTの一種であるUndecaprenyldiphosphate(UPP)合成酵素は天然ゴムの構造に類似しており,生合成機構からも天然ゴムの中間体である可能性が考えられる。UPP合成酵素の鎖長制御機構やUPPを利用したゴム分子モデルの合成は,不明な点の多い天然ゴム鎖伸長反応を解明する大きな手掛かりと期待される。本研究ではシミュレーションとモノマー (14C-IPP)の取り込み実験等のDry・Wet両方向からの解析を行い、結晶構造解析および変異体酵素モデリング)から,モノマー重合活性測定や,生成物鎖長の解析から重合機構に関する知見を得る。 前年度に作成した遺伝子導入変異型カルス細胞が生産するゴム生合成能を解析する。遺伝子導入・発現抑制したカルス細胞から,ソックスレー抽出によりゴムを抽出して,HPLC を用いてゴムの分子量 (分子鎖長) を測定,NMR 解析で詳細なゴムの分子構造を同定する。また,変異型カルス細胞を粗酵素として,in vitro における放射性ラベルされたモノマー (14C-IPP) の取り込み実験を行う。変異型カルス細胞のゴム合成能,また生産するゴムの開始末端構造,鎖長などの変化を解析する。
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Causes of Carryover |
当初設備品導入の予定をしていた、マルチポレーターを利用する実験まで進行しなかったために導入分の費用が、差額として生じたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の実験計画では、導入予定の装置を購入する予定である。
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Research Products
(2 results)