2014 Fiscal Year Research-status Report
高静水圧処理による環境負荷の少ない微細構造の洗浄方法に関する研究
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26340079
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Research Institution | Soka University |
Principal Investigator |
清水 昭夫 創価大学, 工学部, 教授 (20235641)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 圧力処理 / 微細構造 / 洗浄 / 樹脂 / 静水圧 |
Outline of Annual Research Achievements |
アクリル樹脂およびUV硬化樹脂をそれぞれモールド表面全体に均一に付着させ除去実験用の樹脂付着モールドを作製した。モールドはライン、ホール、ドットの微細構造を持ったアスペクト比1(高さ10 μm、幅10 μm)のSi製のものを用いた。アクリル樹脂については溶解度パラメーターを参考に酢酸エチル、ベンゼン、トリクロロエチレン、クロロホルム、酢酸メチル、アセトンを洗浄液とし、25と45℃において常圧で各洗浄液に8時間浸漬した後の洗浄効率を確認した。その結果、最大で70%程度しか除去できなかった。そこで、加圧処理(装置の関係で最大400 MPaで加圧)を行い除去効果があるか洗浄(処理)前と後で電子顕微鏡観察し付着している樹脂の面積から除去率を調べた。その結果、常圧で最も除去率が高かった酢酸エチルではほぼ100%の除去ができた。また、常圧では除去率が低いが体に害が少ないエタノールでも加圧減圧を繰り返すことで効率的に除去できる結果が得られた。一方、UV硬化樹脂ではオゾンが有効との報告もありオゾン水で除去を試した。しかし、12ppmで行った結果では最大15%程度と低い除去率しか得られなかった。そこで、予備実験で比較的高率の良かったフェノール水溶液で除去を行った。フェノール飽和(8 w/v%)水溶液で常圧のもと50および60℃で10時間浸漬したところ全てのパターンでは高い除去率は得られなかった。そこでフェノール濃度を高めるためにエタノールに溶解させて41 w/v%フェノールエタノール溶液で洗浄を試みた。常圧・45℃において浸漬4時間した結果、ラインパターンにおいて除去率が45%程度に上がることが分かった。さらに400 MPaで加圧・減圧の繰り返し処理を行うと全てのパターンでほとんど除去することができた。まだ追試は必要であるが加圧処理が樹脂の除去に有効である事が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験の進行状況としては当初の予定通り、アクリル樹脂およびUV硬化樹脂樹脂において付着条件の検討を行い条件が決定された。洗浄温度に関しては予備実験の結果から除去効率を上げるためには樹脂を軟化させる、あるいは一部溶解させる事が重要であるということが示唆されたので使用した洗浄液(有機溶媒、有機溶媒水混合液)の沸点より少し低めを中心に行った。圧力条件に関しては最大400 MPaまで100 MPa間隔で行う予定であったが洗浄液の組成常圧と400 MPaを中心に行い、そのあいだの圧力は細かく行わなかった。この圧力を細かく振らなかったと言うこと事以外においては当初の予定通りほぼ実験の進行は達成することができた。洗浄液についてもSP値を参考に数々試すことができアクリル樹脂に関してはほぼ有効な洗浄液を選定することができた。UV硬化樹脂についてはSP値が近いと考えられる洗浄液に関しては人体にあまり良くないあるいは可燃やガスの発生の危険性がある事、さらに本研究では高圧下で実験を行うがそのような条件での物性が明確にに調べられていないことから、物性のある程度分かっており、予備的な実験で除去効果があることが確認できているフェノールに集中して行った。特に除去の難しかったUV硬化樹脂においてもフェノールの濃度を高くし、高圧処理することが有効である事を示すことができた。以上の実験結果より、加圧により当初期待していたように除去効果が高くなる、効率的に付着樹脂を除去するという課題をクリアすることができた。ただし、今後もより効率的な条件を模索する必要はある。 成果の公表に関して当初、学会発表を行うことも検討していたがより正確なデータを公表するため次年度に行うこととした。申し込み自体は26年度に行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
静水圧処理は疎水性相互作用を弱める効果が期待できることや隙間への洗浄液の浸透性が上がることが期待される。一方、これまでの研究で疎水性物質の除去において圧力が高ければ高いほど効率的になるわけでは無く、中間的な圧力が洗浄液への溶解速度の関係等から効率的な場合もある事を見いだしている。そこで、常圧と400 MPaの間の圧力においても調べ前年の結果を参考にさらに圧力条件を変化させ除去率が処理圧力に比例して高くなるのか、あるいは極大を持つような挙動を示すのか明らかにしていく。さらに、UV硬化樹脂においてはさらに効率的な洗浄液はないのかSP値および疎水パラメーターなどを参考にさらに調べる。 付着した樹脂を除去する一応の成果は得られている。しかし、より効率的に除去するために加圧処理時間のさらなる検討を行う。さらに、なぜ圧力で除去できるのかその理由を調べていく予定である。付着した樹脂が除去されるメカニズムとしては大きく2つが考えられる。一つは加圧および減圧時にかかる物理的力の作用、もう一つは洗浄液への溶解である。もし、はがれたならば洗浄後の洗浄後の洗浄液を光学顕微鏡で詳細に調べればはがれた樹脂が観測されることが期待できる。また、また、小さすぎて観測できない場合はフィルター等を通した後の洗浄液を分析し、成分が検出されなければ溶解しているのではなくはがれたと考えられる。一方、溶解した場合は逆に洗浄液中に成分が検出されると考えられる。成分が溶けているかどうかは単純に分光測定で確認する。成分の同定はNMRやHPLCでおこなう。加圧処理を行うことで樹脂の組成・成分が大きく変わることは考えにくいので原料との比較で比較的容易に同定可能と考えられる。また、溶解している量が少ない場合は濃縮を行う。以上の結果から除去のメカニズムの解析を進める予定である。
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Causes of Carryover |
本研究において高圧処理装置を用いるが何度も400 MPaといった超高圧での加圧減圧を繰り返すことにより高圧を伝える高圧容器用導入管の接続部分の溶接部分が金属疲労を起こしピンホールがあいてしまったり、接続部分でとれてしまうことが起こる。しかし、本年度はそれがほとんど起こらずその費用が浮くこととなった。また、当初スピンコーターを購入予定であったが工夫することで遠心機を利用して代用できる事により、その購入費用が少なくなったために使用金額が少なくなった。 また、国内での学会発表を1回は行う予定であったが行うことができなかった。そのためにその費用が少なくなった。来年度は数回の学会発表を行う予定にしている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
モールドの劣化よび一部破損の可能性がある事および条件を一度に変えて同時並行で実験を行うためにはモールドの数が多くあった方がより効率的に実験を進めることができる。また、より正確な除去率を調べるためには何度も再利用したモールドではなく新品を用いることが望ましいが、そのためにもモールドの数が必要となる。そこで、モールドを当初の予定より多めに購入し、実験の効率化を図るとともにより精度の高い結果を得る予定である。また、来年度、学会発表として日本国内1回(高圧力学会、広島)と海外1回(環太平洋国際学会、アメリカハワイ)を予定しており、それに使用して研究成果の公表に努めていくとともに学会で情報を収集してくる予定である
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Research Products
(1 results)