2015 Fiscal Year Research-status Report
水環境における院内感染原因菌の薬剤耐性獲得・伝達ポテンシャルの評価
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26340085
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
鈴木 祥広 宮崎大学, 工学部, 教授 (90264366)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 都市河川 / 薬剤耐性菌 / 腸球菌 / バンコマイシン / 流域拡散 |
Outline of Annual Research Achievements |
H27年度は,日本の地方都市の河川流域を対象として,VREと薬剤耐性腸球菌の拡散実態を調査した。都市河川におけるVREの存在割合を調査した結果,0.9%(2株/223株)であり,諸外国と比較して,低い割合で存在していた。スクリーニング培地を使用して検出されたVREは,全てがvanC1あるいは,vanC2/C3遺伝子を保有するVREであり,高度にバンコマイシンに耐性を示すvanAとvanBの遺伝子保有株は検出されなかった。スクリーニング培地から単離したvanC2/C3遺伝子を保有するVREについて,PGFE法によって遺伝子型を取得した。その結果,複数の遺伝子型が検出され,河川に分布するvanC2/C3型のVREの発生源は複数存在し,河川流域に点在していると示唆された。取得した遺伝子型の類似性を河川流域間で評価したところ,上流域で検出された遺伝子型が下流地点から検出された。一部のVREの汚染源は,上流域であることが推察された。河川流域から単離した333株の腸球菌のうち,主に耐性を示した抗菌薬は,エリスロマイシン,シプロフロキサシン,およびテトラサイクリンであった。河川水に分布する腸球菌の大部分は,感染症治療薬として汎用性の高い抗菌薬に耐性を獲得しいることがわかった。薬剤耐性腸球菌の存在割合は,上流域で高い傾向を示し,下流域に流下するに従い減少する傾向を示した。上流域では,生活排水流入の影響によって耐性菌の割合が増加し,流下するに伴い,その他起源の腸球菌が増加したため,耐性菌の割合は減少したと考えられた。薬剤耐性菌による感染リスクを低下させるためは,河川流域の社会基盤整備の徹底が重要であり,環境中における薬剤耐性菌に関する更なる情報の蓄積が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の計画は,水環境における薬剤耐性菌の実態調査において河川の上流から下流における継続的な細菌学的調査を実施し,河川からの腸球菌の単離・同定と菌株の薬剤耐性試験を行うこととなっている。計画通りに研究を遂行し,都市河川における薬剤耐性腸球菌の実態を明らかにした。都市河川には,特にバンコマイシン耐性菌の存在実態は,国内において新知見である。したがって,現在までの研究の進捗状況は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
実態調査にも基づいて,発現・集積エリアを模した人工的環境を設定し,in vitro実験による継体培養を継続しつつ,薬剤耐性菌の発現をチェックする。さらに,Filter Mating法を応用し,各環境条件におけるドナー株(バンコマイシン耐性株)からレシピエント株(非耐性株)への薬剤耐性遺伝子の伝搬率を比較し,伝搬ポテンシャルを評価する。
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