2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26340086
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Research Institution | Toyama Prefectural University |
Principal Investigator |
楠井 隆史 富山県立大学, 工学部, 教授 (60153293)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 重金属 / 慢性毒性 / ミジンコ / 藻類 |
Outline of Annual Research Achievements |
ニセネコゼミジンコと藻類(ムレミカズキモ)において暴露実験(途中、修了)時におけるニッケルの存在形態別測定および体内蓄積量を評価するための試験法を検討した。藻類と溶液の分離においては遠心分離法ではなく、メンブレンフィルター(Φ0.2μm)によるろ過が有効であった。さらに、藻類試験の場合は、メンブレンフィルターをEDTA溶液で洗浄することにより、表面吸着(細胞外)金属と細胞内金属を分離でき、さらにメンブレンフィルターをマイクロウェーブオーブンにより湿式分解することでICP-MS用の試料がえられた。一方、ニセネコゼミジンコの場合は、回収した個体を湿式分解することが可能であったが、個体の重量がわずかであり、かつ、持込みの液の影響もあり、詳細な解析はできなかった。 ニセネコゼミジンコ繁殖毒性試験では、Ca・Mg濃度、pHを変化させて、ニッケルの毒性に対する影響を検討した。その結果、硬度の増加によって急性毒性同様ニッケルの慢性毒性は減少することが明らかとなったが、pHの影響は毒性値によって傾向が異なった。全農度及びフリーイオンで示した毒性の変化からpHが低いほど慢性毒性は低いと考えられるが、pHの影響はさらに検討が必要である。本研究の試験水の硬度は85~315mgCaCO3/Lである。日本の硬度は100mgCaCO3/L以下が多く、日本で適用させるには低硬度から実験が必要である。 一方、藻類生長阻害試験では、pHが増加するとニッケルの毒性が減少する(EC10,EC50が増加 )する傾向が認められた。しかし、NOEC、LOEC(設定値)はそれぞれ80μg/L、160μg/Lと変化は認められなかった。一方、Mg2+が増加すると毒性の減少が認められた。 暴露濃度がするにつれて、表面吸着および細胞内金属が増加する傾向が認められたが、若干バラツキが大きく、モデル化するには至らなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ミジンコの体内蓄積量を測定する以外は、基本的な試験方法は確立した。また、硬度による毒性緩和の影響は明確にとらえられたが、pHの影響に関してはばらつきが多く、明確な結論を得るには至らなかった。特にpH実験に関しては、pHの変動が大きくその影響があると推定される。設定pHに応じた適切な緩衝液の選択が重要であることが明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、実験の精度を上げながら、再現性のある結果を得る必要がある。同時に、溶存態ニッケルを測定するために用いたキレート樹脂の前処理条件(pH調整)に関しても見直す必要があることが明らかとなった。pHを5程度に調整するこの操作自体が存在形態を変化させるため、常に化学平衡予測モデル(MINTEQ)より実測値の方が過大評価される傾向が認められた。以上の点を再検討しながらニッケルの慢性毒性に関する硬度、pHの影響を再度確認しながら、次の金属種(Cu,Zn)について実験を進める予定である。
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Causes of Carryover |
実験補助のアルバイトが自己都合により年度末に出勤できずそのため余剰が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度の計画の中で実験補助の分として使用する予定である。
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