2014 Fiscal Year Research-status Report
参加協働による広域的生物分布モニタリング促進のためのフレームワーク構築
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26340090
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
鎌田 磨人 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 教授 (40304547)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 参加協働 / 市民科学 / 生物分布 / 生物多様性 / 生態系保全 |
Outline of Annual Research Achievements |
市民団体(生物多様性とくしま会議)、徳島県内専門家らとの協議により、セミおよびカメを対象にスマホを用いた参加協働型調査を行うこととし、システムを設計した。そして、7月7日~10月31日を調査期間として調査への参加を呼びかけ、分布情報を収集した。セミに関しては10人から136地点について、カメに関しては5人から15地点についての報告を得た。 スマホ調査への参加動機や期待を明らかにするため、生物多様性とくしま会議が先行して行った協働調査への参加者も含め、71名の調査参加者に対してwebアンケートを依頼し、24名から回答を得た。また、協働調査の事務局メンバーに対してヒアリング調査を行い、ボランタリーに事務局運営に関わろうとするインセンティブ、および、継続する上での課題を把握した。 徳島での生態系保全に係る協働調査や取り組みの特徴を明確にするため、協働活動を行ってきている他地域での比較調査を行った。名古屋市では、なごや生物多様性センター、および、なごや生物多様性保全協議会の活動目標、参加者の属性、マネジメントの仕組み、予算等について、事務局へのヒアリングをとおして把握した。また、京都市では、宝ヶ池公園周辺の里山の保全に関わる人のネットワークと機能、ネットワーク形成に係る事務局のマネジメントの仕組みを明らかにするためのヒアリング、および参与観察調査を行った。 2013年度に生物多様性とくしま会議によって実施されたスマホ調査(ツバメ、スクミリンゴガイ)のデータを用いて、種の同定精度、位置精度について検証した。そして、これらの種の分布情報と国土数値情報等による環境情報を用いて空間モデルを構築し、潜在的分布可能域を示す地図を作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度に予定していた内容は、1)協働体制による事務局での調査内容に係る合意形成、参加協働調査の設計と実施、2)データの精度検証と空間モデル作成への適用可能性の検討、3)アンケート調査等を用いた参加者分析、4)参加協働調査に係る先行事例についての調査であり、これらすべてについて実施することができ、成果を得た。 先行事例については、名古屋市のなごや生物多様性センターとなごや生物多様性協議会での調査にとどまった。それは、以下の調査に重きをおいたからである。すなわち、生態系保全のための社会体制づくりを行いつつある京都市宝ヶ池周辺、および沖縄県金武町の動向に焦点をあて、協働調査・活動を行っていくための人的ネットワーク構築の過程についてヒアリング調査および参与観察調査を行った。これにより、人的ネットワーク構築の過程をも含む比較をとおして、参加協働調査に基づくソーシャル・キャピタル向上のあり方を検討していくことが可能となる。 このように、調査対象については順応的に変更しつつも、本研究課題の最終目標である、参加協働調査を契機としたソーシャル・キャピタル向上のあり方についての検討、そのツールとしてのスマホ調査の有効性評価に向けて、研究は順調に遂行できている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、比較対象地としての沖縄県金武町および京都市宝ヶ池でのヒアリングおよび参与観察調査を継続しつつ、それら地域でスマホを用いた協働調査を行って比較検討のための材料を得る。そして、次のような方針で解析を進める。 1)実行組織での合意形成→設計→検証の過程における参与観察、議事録の分析、ヒアリングにより、実行組織を形成するステークホルダーのCBMについての考え方や社会的役割についての考え方の変化を把握し、比較する。 2)スマホを用いた参加協働調査の繰り返し、また、先行事例調査により、様々な生態的・形態的特性を有する種を対象にした、様々な空間スケールでの調査成果を集約できる。その結果をもとに、生態的・形態的特性が及ぼす種の同定精度への影響、また、空間スケールが及ぼすモデル構築やその後の施策反映への影響について検討・評価し、種や空間スケールの適切な選択のあり方を明確にする。 3)スマホを用いた参加協働調査の推進、それを契機としたソーシャル・キャピタルの向上に必要な要素(パターン)を抽出する。そして、パターン・ランゲージを用いて構造化を行い、ガイドラインとしてフレームワークを提示する。
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Causes of Carryover |
3月に納品となり、支払いが完了していないため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
4月に支払いが完了する予定である。
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Research Products
(3 results)